文部科学省=東京都千代田区 中央教育審議会は答申で、急速に少子化が進む中での大学の将来について「特に地方で、質の高い高等教育へのアクセスが確保されない事態も想定される」と警鐘を鳴らした。文部科学省は4月に「地域大学振興室」を新設し、対応を急ぐ。
答申は、進学者が都市部に集中し、地方の私立大は定員割れの傾向にある現状を懸念。その上で、「経済的な理由を含めさまざまな理由で地元を離れることができない進学希望者がいる。地理的観点からのアクセス確保策が必要だ」と、地方に大学が存在する意義を強調する。
審議会では、大学誘致を地域活性化につなげた和歌山市の例が紹介された。大学が3校しかなかった同市では、若年層が県外に流出し看護師など専門人材が不足。打開を図るため、2021年までに新たに5大学を誘致した。
5大学ではボランティアや市民講座など地域に密着した学びに力を入れ、県内進学率は全国最低を脱し、卒業後の県内就職率も2割強から4割まで上昇。同市の尾花正啓市長は審議会のヒアリングに「大学が地方創生に貢献している」と語る。
文科省が実施したアンケートでは、地方自治体の約9割が高等教育機関との連携強化が必要とし、高等教育機関の7割も同様に考えていることが浮かんだ。
答申は、大学や地方自治体、産業界が、地域の課題や必要な人材を議論する地域構想推進プラットフォーム(仮称)を構築することを提案。自治体には担当部署の整備を求め、大学などと連携して課題に対応する仕組みづくりを呼び掛けた。
文科省は新設する地域大学振興室を中心に、プラットフォーム構築を支援するほか、地域の人口予測や産業・雇用環境の変化について情報提供する。学ぶ機会の確保を地方創生にもつなげる考えだ。