三重大学=三重県津市 染色体の本数異常が原因で起こるダウン症の人の細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、ゲノム編集技術で過剰な染色体を取り除くことに三重大などの研究チームが成功し、21日までに米科学誌PNASネクサスに発表した。将来的な治療応用に向けた基盤技術として期待される。
ダウン症は21番染色体が通常の2本ではなく、3本あることが原因で発症する。知的発達の遅れや心疾患などの症状が見られるが、過剰な染色体を取り除く方法はなかった。
三重大の橋詰令太郎講師らの研究チームは、ダウン症の人の皮膚からiPS細胞を作製し、21番染色体の構造を解析。ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を使い、3本ある染色体のうち特定の1本を狙って切断する手法を編み出した。
その結果、最大37.5%の細胞から過剰な染色体を除去することに成功。除去された細胞は、遺伝子の働きや細胞増殖速度などが正常な細胞と同じになっていた。
ただ、染色体を切断できず、変異が入った細胞が残る危険性があることなどから、橋詰講師は「そのまま臨床応用できる技術ではない」と強調。「ダウン症の原因はかなり前から分かっていたが、余分な染色体を取り除く方向の研究がなかった。この研究が呼び水となればいい」と話し、より安全な方法で過剰な染色体を取り除く手法の研究を進めるという。