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絵本ナビ(東京都港区)が運営する絵本・児童書の口コミ通販サイト「絵本ナビ」が好調だ。2002年のサービス開始以降順調に利用者を伸ばし、年間利用者数は2000万人、公式アプリのダウンロード数は100万件を突破した。
絵本ナビは100社以上の出版社と連携し、絵本の画像や紹介文、利用者の口コミなどを掲載している。気になった作品はそのまま購入できるほか、1冊に付き1回だけ全ページ試し読みできる作品が2300冊以上、一部試し読みできる作品が1万冊以上そろう。
「全ページを見せてしまったら、誰も買わなくなるのでは」――。そう考える人も多いかもしれない。実際、サービス開始前は出版関係者からこうした懸念の声もあったという。しかし、結果は逆だった。試験導入として31作品で全ページ試し読みを実施したところ、実施前後で平均4倍の売り上げ増につながった。
絵本ナビの金柿秀幸社長は、「絵本を買うとき、中身を見ずに表紙だけで見て買う方はあまりいない。うちの子が気に入るか、怖いシーンが無いか、我が家の教育方針に合うかなど、中身を確認して買う」と説明する。子どもは気に入った絵本を何度も読みたがるため、一度全ページ試し読みしたとしても購入につながるという。
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●YouTubeより安心、デジタル読み放題サービスも
利用者の何度でも全ページを読みたいという声に対応し、月額1480円または年額1万4800円のデジタル読み放題サービス「絵本ナビプレミアム」を開始した。無料ユーザーは月3冊のみ試し読みできるが、絵本ナビプレミアムに加入すると、月刊冊数制限なしで試し読みが可能だ。また、約1000作品の絵本読み放題のほか、絵本ムービー、学習漫画、オーディオブックなどの見放題・読み放題、通販時の送料無料といった特典も付けた。
小さな子どもがいる家庭で家事の最中などに「YouTubeより安心して見せられる」といった声も多いという。また、学習漫画や「角川つばさ文庫」といった児童書も読み放題サービスとして展開しているため、小学生の利用も多いそうだ。
●絵本グッズは大人にも人気
絵本ナビは現在、メディアを中心にさまざまな事業を展開する。出版社やファミリー向け商品を販売する企業への広告事業、幼稚園・保育園向けの法人販売といったB2B事業に加え、オンライン英語学習サービスや定期購読サービス、オリジナルグッズ販売など、B2C事業も拡充している。
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絵本のキャラクターなどを活用したぬいぐるみやマグカップなどのグッズ展開では、子どもはもちろん、大人が自分のために買うケースも増えているそうだ。絵本ナビのサイトだけでなく、書店での販売も実施している。金柿社長は「IP(知的財産)の活用では、絵本もコミックに負けないポテンシャルがあるのではないか」と語った。
ネット書店として展開すると大手の競合ネット書店に勝てないと考え、絵本好きのユーザー2000万人が集まるメディアとしての価値を軸に事業を広げた。絵本ナビの利用者が増えるほど、関連事業の収益が増えていくようにしたという。
「絵本の最上の体験は、紙の絵本を親の膝の上で読んでもらうこと。紙の絵本をデジタルにしていきたいというわけではない」と金柿社長は強調する。全ページ試し読みや絵本ナビプレミアムなどデジタルを通じて絵本に触れる機会を増やす――。絵本ナビは今後も、絵本との接点を広げる新たなサービスを展開していく方針だ。
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