すでにカルテは存在しないが、フィブリノゲン製剤の投与で「C型肝炎」になったとして、患者やその家族が救済をもとめている裁判で、東京地裁で争っている原告のうち10人が7月5日、裁判所の所見に基づいて国と和解した。
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全国弁護団によると、全国の地裁に提訴した原告766人のうち、これまでに和解成立したのは78人、うち東京地裁は32人という。担当医師の高齢化・死亡などで立証が困難になる中、被害救済から取り残されている人は、まだまだ多い状況だ。
弁護団などによると、フィブリノゲン製剤は1964年(昭和39年)、当時の厚生大臣によって、医薬品として承認された。大量出血を伴う出産や妊産婦の手術時などで、止血剤として使われてきた。
1994年(平成6年)ごろまで、C型肝炎ウイルスの不活性化処理が十分におこなわれていなかった。投与によってC型肝炎になった患者が訴訟を起こしたことをきっかけに、被害救済をうたった「C型肝炎特措法」が2008年に公布・施行された。
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しかし、この特措法による救済をもとめて、患者が裁判を起こしても、実際は「フィブリノゲン製剤の投与の事実」を立証するハードルが高く、国側はカルテなどの書面か、当時の医療関係者の証人尋問をもとめているという。
弁護団によると、C型肝炎は、フィブリノゲン製剤の投与から20〜30年後に感染の事実が判明することが多く、被害に気づいたときには、医師法に定められたカルテ保存期間「5年」がとっくに過ぎており、ほとんどは破棄されている。
また、すでに病院が廃院されていたり、担当医師が高齢化などで証言できる状態でなかったり、亡くなっている事例が多い。例外的にカルテが残っていたり、医療関係者の証言を得られた人だけが救済されているという。
この日和解した10人もカルテはなかったが、医師の証人尋問のほか、その意見書の信用性が認められたかたちだ。ある原告は会見で「和解できたことはうれしい」としながらも「運がよかっただけ」として、立証ハードルの問題点を口にした。
厚労省によると、2017年6月30日時点で、フィブリノゲン製剤投与の事実が報告された医療機関は全国1052の施設、(元)患者数は1万8035人にのぼっている。しかし、全国弁護団によると、今年春までにC型肝炎特措法で救済された患者は、同法施行からカルテなどの立証が可能だった2350人あまりににとどまっている。
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そのため、弁護団は「カルテや医療関係者の証言の有無という本人の責任ではない要素のために救済されないのはあまりにも不合理な差別だ」として、フィブリノゲン製剤投与を推認できる患者が相応の救済を受けられるように、特措法の改正による医療費助成制度や新たな救済制度の創設、救済要件の見直しをもとめている。
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