「化石の宝庫」、学び与え続け=フタバスズキリュウも発掘―展示施設開業40年―福島・いわき

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2024年05月11日 14:01  時事通信社

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時事通信社

展示されているフタバスズキリュウの化石のレプリカ(中央下)と復元された骨格標本(中央上)=4月25日、福島県いわき市
 福島県いわき市で見つかった化石の展示施設が10月で開業40年を迎える。古代生物の化石が多く発掘される「化石の宝庫」として知られる同市。訪れる子供たちに、全国的にも貴重な学びや娯楽の場を提供し続けている。

 いわき市によると、同市がある土地は古代の長い期間、海だったという。このため、幅広い年代の地層が風化せずに水中に堆積し、貴重な古代生物の化石発見につながったとされる。1968年に市内の川岸で見つかったフタバスズキリュウの化石もその一つ。高校生の時に発見した同市の鈴木直さん(72)は「日本で恐竜や首長竜の化石は見つからないという定説を覆す発見で、感慨深かった」と振り返る。

 フタバスズキリュウはその後、ほぼ全身の化石が発掘されたが、そこに至る過程は困難を極めた。胸や前足などは川岸近くの県道に埋まっており、採掘許可や多額の費用が必要だった。鈴木さんは師事していた古代生物の研究者や企業の協力などを得て、約7年かけて発掘をやり遂げた。

 この発見を契機に、いわき市は84年10月、市内で発掘された化石などを展示する「いわき市石炭・化石館 ほるる」を開館。同館によると、フタバスズキリュウの化石のレプリカや全身の復元骨格などを見に、これまで延べ約600万人が来館した。今年4月、子ども2人と訪れた同市の主婦(31)は「実際に触ることのできる化石や大きな骨格標本など、家族で楽しむことができた」と話した。

 92年には、実際に化石の発掘ができる施設「いわき市アンモナイトセンター」も完成。毎週末に開かれる体験会は、県内外から訪れる家族連れでにぎわい、参加者は金づちなどを手に斜面を削ったり、岩を砕いたりし、アンモナイトなどの化石を探している。家族で参加した千葉県印西市の男児(6)は「自分で岩を砕いて化石を探すのは楽しい。たくさん発掘できたので家に飾りたい」と喜んでいた。

 化石発掘に興味津々の子供たち。鈴木さんはエールを送る。「自らの足で探索し、新しいものを見つけ出す化石発掘は非常に魅力的だ。いろいろなことに興味を持って、やりたいことをやり切ってほしい」。 

フタバスズキリュウの化石が見つかった福島県いわき市の川岸=4月28日
フタバスズキリュウの化石が見つかった福島県いわき市の川岸=4月28日


化石の発掘体験を楽しむ参加者たち=4月28日、福島県いわき市
化石の発掘体験を楽しむ参加者たち=4月28日、福島県いわき市
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