レッドブル&HRC密着:“マックス劇場”から一転「まるで氷の上を走るよう」な状況に。ストレートで速度を落とさず対処

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2024年05月20日 12:20  AUTOSPORT web

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2024年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
「今日のレースは前半と後半の2部で異なるドラマとなった」

 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はそう言って、今年のF1第7戦エミリア・ロマーニャGPのレースを振り返った。

 前半はスタートからピットストップまでの24周で、後半は25周目からチェッカーフラッグまでの38周だ。前半はポールポジションからスタートしたマックス・フェルスタッペンが1コーナーを制して、2番手のランド・ノリス(マクラーレン)とのギャップを徐々に広げていった、いわゆる『マックス劇場』だった。

 2番手のノリスがピットインする直前の21周目の時点でフェルスタッペンがノリスにつけた差は6.5秒。ピレリによれば、イモラでの最速ピットストップ戦略はミディアムで21周から27周走った後、ハードに履き替えてチェッカーフラッグを目指すという1ストップ作戦だった。6.5秒の差があれば、アンダーカットされる心配はない。22周目にノリスがピットインした2周後、レッドブルはフェルスタッペンを万全の体制でピットインさせた。

 ピットストップ後のタイヤはノリスと同じハード。しかも、フェルスタッペンのほうが2周新しい。ノリスの5秒以上前方でフェルスタッペンがコースに復帰したとき、勝負は決したように見えた。

 ところが、このときエミリア・ロマーニャGPの決勝レースは第二幕が開幕していた。

 フェルスタッペンはこう振り返った。

「ミディアムタイヤは好調だったけど、ハードタイヤに履き替えたら、ドライビングが少し難しくなったんだ。タイヤが作動温度領域から外れたみたいで、グリップが低下してしまった」

 じつは金曜日のフリー走行でセットアップに苦しんでいたレッドブルは、ハードタイヤでのロングランを2台ともまったく行っていなかった。セットアップを変更して土曜日の予選はポールポジションを獲得したものの、タイヤはソフト。ハードタイヤでのロングランに不安を抱えたまま、日曜日のレースをスタートさせていた。

 さらにレース後半ではタイヤを作動温度領域に入れることができない別の理由もあった。それは、トラックリミット違反だった。

 この日のレースでフェルスタッペンはたびたびコースをはみ出していた。最初は11周目のターン17(リバッツァの入口)。2回目は15周目のターン18(リバッツァの出口)。3回目は20周目のターン6(ビルヌーブ・シケインの出口)だ。

 これにより、レース開始から34分後に、レース審議委員会はフェルスタッペンにブラック&ホワイト・フラッグ(黒白旗)を掲示した。

 ブラック&ホワイト・フラッグは、スポーツマンシップに欠ける行為をした車両・ドライバーに対して振られる旗で、『警告』の意味合いで振られる。最近のF1では主にトラックリミット違反の際に振られることが多く、黒白旗が振られた後にトラックリミット違反を犯した場合、5秒タイムペナルティなどの罰則が科される。

 50周目、フェルスタッペンとノリスとの差は5秒を切り、もうフェルスタッペンはトラックリミット違反を犯すことはできない。残り13周、フェルスタッペンはノリスとだけでなく、トラックリミットとも戦っていた。

「まるで氷の上を走っているようだった。とても難しくて、奇妙なラインをとらなければならなかった。ラスト10周はそのタイヤで生き残ろうとしていたのに、突然、ランドが1周につき0.5秒速いペースで追い上げてきたから、少し焦った。でも、だからといって慌てることはなかった。だって、それ以上、何もできないからね。バランスが取れていないのに、いきなり0.5秒を無理に上げようとしたら、ミスするだけ。あのような状況で大切なことはとにかくミスをしないこと。コーナーは無理せず、ストレートで速く走ることを心がけていた」

 ホーナー代表は言った。

「今日のホンダのパワーユニットはまったく問題がなかった。ここはパワーサーキット。本当に力強かった」

 63周目のチェッカーフラッグをフェルスタッペンがトップで受けたとき、ノリスとの差はわずか0.7秒。

 レース後、エナジーステーションに帰ってきたホーナーの前に、ホンダ・レーシング(HRC)のスタッフがいた。ホーナーからHRCのスタッフに労いの言葉がかけられたことは言うまでもない。
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