西銘駿、デビューから10年「まだ全然満足していない」 目標は「その場にいたら安心できる俳優」【インタビュー】

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2024年05月22日 08:10  エンタメOVO

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西銘駿 (C)エンタメOVO

 2014年に第27回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞、「仮面ライダーゴースト」では主人公の天空寺タケルを演じた西銘駿。近年は、映像作品のみならず、舞台にも積極的に出演し、活躍の場を広げている。コンテストでのグランプリから10年を迎えた今、西銘は俳優業にどんな思いを抱いているのか。そして、6月22日から開幕する、舞台「野球」飛行機雲のホームラン〜Homerun of Contrailに懸ける思いとは。今の心境を語ってもらった。




−「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得してから今年で10年になります。改めてこの10年を振り返って、どんな思いがありますか。

 ずっとお芝居の楽しさと難しさの境界線上にいるような気がしていますし、自分の中で納得しない限り、ずっと役者を続けていくんだろうなと思います。そう考えると、10年という期間はすごく早かったです。悩むこともありますし、緊張してもうやりたくないと思うときもありますが、お客さんの目の前に立って、役に入って芝居をして、お客さんから拍手をいただいたり反応をもらえると、続けていてよかったなと思うんです。10年間、ずっとその繰り返しのような気がします。なので、まだ全然満足はできていないです。

−元々、俳優に憧れて芸能界をめざしていたのですか。

 最初は、僕、アイドルになりたかったんですよ。だから、俳優というよりは、とにかく芸能界に興味がありました。沖縄でテレビを見ていると、芸能界は夢のような世界でとても自分が入れるとは思っていませんでしたが、運試しのつもりで「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募して。芸能界で活躍している人って本当にいるのかなとか、自分はどの位置までいけるのかなとか、そんな軽い気持ちでした。それからですね。お芝居のお仕事をいただくようになって、芝居を見るようになり、ドラマなどを見て研究するようになって、どんどんハマっていったという感じです。

お芝居の面白さを感じるようになったのはいつ頃なのですか。

 始めた頃です。スポーツもそうですが、最初が一番楽しいじゃないですか。ゼロからスタートなので、自分が成長しているのが自分でも分かりますし、何もかも新鮮で楽しかったです。ただ、それが過ぎた頃、すごく芝居がうまい人を見て自分に自信をなくす停滞時期があって、お芝居のことをどんどん考えるようになっていったのだと思います。

「仮面ライダーゴースト」では、ドラマ初出演にして初主演を務めました。この作品は、大きなターニングポイントだったと思いますが、西銘さんにとって「仮面ライダー」というコンテンツはどんな存在ですか。

 難しい質問ですね(笑)。もちろん、とても感謝していますし、僕にとってなくてはならないものでした。ただ同時に、役者としてはもっと「西銘駿」を見ていただけるように頑張らなくてはいけないという気持ちもあります。

−では、その後、役者として大きな変化があったと感じた出会いは?

 「仮面ライダー」に出演してからは映像をメーンに活動していたのですが、2017年に初めて出演させていただいた舞台「里見八犬伝」との出会いは僕にとって大きなものでした。映像と舞台ではお芝居の仕方がまったく違うと感じましたし、初めて舞台での殺陣にも挑戦して、舞台でのお芝居の楽しさも知れました。映像だけでなく、舞台への思いも芽生えたという意味で、ターニングポイントは「里見八犬伝」だったのかなと思います。分からないことばかりでしたが、それが逆に楽しかった。

−今は舞台に出演することの魅力をどんなところに感じていますか。

 緊張感がある中で役になりきって、見に来てくれた人の心を動かすことができるのが舞台の魅力だと思います。汗や吐く息まで伝わるので、実際にその人がその場に生きていて、芝居をしているんだと感じられるのは舞台ならではだなと。

−今後、俳優としてはどんな目標がありますか。

 現場にいたら安心できる俳優になりたいですね。キャスティングが決まって、名前を見たときに「この人がいるんだ。それなら絶対にいい舞台になる」という安心感がある人になりたいです。そうなるためには、たくさんの場数を踏んで、いろいろな人に出会って、いろいろな人のお芝居を吸収しないとだめだと思うので頑張ります。

−ところで、6月22日から開幕する、舞台「野球」飛行機雲のホームラン〜Homerun of Contrailには、会沢商業学校の浜岡役で出演します。第二次世界大戦中、“野球”に憧れを抱き、白球を追いかけた少年たちの物語で、2018年に上演されて大きな話題を呼んだ舞台の再演ですが、脚本を読んでどんな感想を持ちましたか。

 まだ今の時点では稽古は始まっていないのですが、現場に入ってみんなとお芝居をして、(作・演出の)西田大輔さんの演出が入ってすばらしい舞台になっていくと思います。毎回、脚本を読んで自分が想像していた何倍も素晴らしい作品になるんですよ。なので今はどこが魅力だと言い切れないですが、本当にワクワクしています。すごく難しいテーマの作品だと思いますが、僕たちは純粋に野球を楽しんで、その中で彼らの複雑な心境を深掘りしていければと思っています。

西銘さんが演じる浜岡という役柄について、今はどう感じていますか。

 稽古場に入ってから変わってくるとは思いますが、(結城伽寿也が演じる)早崎との距離感が大事になるだろうと考えています。この作品は、劇中に野球をプレーするシーンがたくさん出てくるのですが、野球をプレーする上ではセカンドとショートは相棒のようなところがあるんですよ。なので、お互いに信頼し合っている関係性を作っていきたいですし、芝居の距離感や雰囲気でお互いのキャラを立たせていければと思います。

−浜岡に共感できるところはありましたか。

 めちゃくちゃあります。僕は俳優という皆さんに見てもらうお仕事をしてるので、どうしても強がってしまうところもありますし、「明るい」という自分のイメージに合ったキャラクターを演じなければいけない場面もあります。もちろん、それも本来の自分ではあるんですが、内に秘めたところでは「本当はこうしたい」「本当はこうなりたい」という思いもあるので、そういう意味では浜岡の心情はすごく分かりやすいです。僕はビビりですし、人見知りですし、お芝居することへの恐怖心もあります。自分の芝居はだめだなと客観的に思って自信をなくすこともあります。意外と弱いところがあるんですよ。浜岡も同じように、戦時中だからこそ感じる不満や恐怖、我慢を抱えながらも、それを見せないで生きています。きっと現代の若者にはない思いもたくさんしていると思うので、それをリアルに深掘りできればいいなと思います。浜岡は人間魚雷としての出陣を控えているという人物ですが、みんなの前で強がって「お前らは飛行機の故障とかで不時着すればいいけど、俺は乗った瞬間に絶対に死ぬんだ」と言うんですよ。本当は怖いのに、覚悟を持っているからこそ、それを言う。彼の心の深みをどれだけ出せるのか、今から考えているシーンです。

−戦時中の若者たちの心境も理解できるところがありますか。

 今、もし「特攻しろ」と言われたらなかなか難しいとは思います。現代にはSNSがあって、批判の声も上がるだろうし、炎上だってある。なので、戦時中とは前提が大きく違うとは思います。スタートが違うので現代でも同じだとは思いませんが、演じる上では当時の状況をよく理解して、それを前提としたお芝居をしないと、ただのかわいそうな人たちになってしまうと思うんですよ。彼らは彼らの信念をしっかりと持っていた。でも、「本当は怖い」「本当に死ぬのか」というリアルな心も持っている。それを表現できたらと思います。実は、僕は戦時中を描いた作品に出演するのは初めてなんですよ。なので、この作品はより演じる難しさを感じていますし、役者というお仕事は本当に特殊なものだなと思わされています。戦争が目の前にある中で「野球をしたい」と思う。それを演じるのはどんな感覚だったんだろうと、今はそれを強く感じています。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「野球」飛行機雲のホームラン〜Homerun of Contrailは、6月22日〜30日に都内・天王洲 銀河劇場、7月6日〜7日に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。


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