倉科カナ「忘れず心に留めておきたい言葉に出合いました」安達祐実、渡邊圭祐と共に猫好き男女3人の共同生活を描く物語に主演『三日月とネコ』【インタビュー】

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2024年05月22日 16:10  エンタメOVO

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倉科カナ(C)エンタメOVO

 「第1回anan猫マンガ大賞」で大賞を受賞したウオズミアミ氏の同名漫画を映画化した『三日月とネコ』が、5月24日から公開となる。熊本地震をきっかけに出会った、恋人でも家族でもない、境遇もバラバラな猫好き男女3人の共同生活を描いた温かな物語だ。

 本作で、40代お一人様女性の書店員・戸馳灯(安達祐実)、アパレルショップに勤務する20代の波多浦仁(渡邊圭祐)と共同生活を送る30代の精神科医師・三角鹿乃子を演じているのが、倉科カナ。撮影の舞台裏や作品に込めた思いを語ってくれた。




−オファーを受けた時のお気持ちはいかがでしたか。

 最初に原作を読ませていただいたところ、心に響く言葉が多く、とても共感できました。息苦しい世の中で、ちょっと救われるような、癒やされるような、今の時代にフィットした作品だなと。しかも、私は出身が熊本で猫を飼っているんですけど、同じように舞台が熊本でかわいい猫も出てくるので、ご縁も感じてうれしかったです。

−おっしゃるように、すてきな言葉がちりばめられた作品ですが、特に心に残った言葉は?

 40代で結婚していないことで、社会から認められていないと感じている灯ちゃんが、「私なんか」とか「欠けたまんま、大人になりきれてないみたい」と落ち込んだとき、鹿乃子さんが語った「欠けてるんじゃない。満ちる途中。きっと人生なんて、ずっとその繰り返しだと思うよ」という言葉が印象的でした。鹿乃子さんが自分に言い聞かせている感じもあって。

−具体的にどんな点が?

 日々生きていると、「こうでなければいけない」とか「こうあるべき」という世の中の基準に縛られ、そこから外れている自分をネガティブに捉えがちですよね。私自身も、まだ大人になりきれていないところがあり、自分がどうありたいのか日々模索する中で、なかなか思うようにいかず、落ち込むときがあります。でも、鹿乃子さんの言葉には「嫌なことやつらいことも、すべてがすてきな未来につながるプロセス。そう思えば受け入れられる」という前向きな考え方があって、救われるなと。忘れず心に留めておきたい言葉に出会い、私自身の人生観にもいい影響を受けました。

−この物語全体で、そういう考え方が一貫していますね。

 だから、原作者のウオズミアミ先生も熊本出身とお聞きして、すごく納得しました。熊本の人たちは、悲しいことがあっても、下を向くことなく、そこに価値を見いだそうとする強さがあるんです。同じように、この物語の根底にある暗闇の中に光を見いだそうとするポジティブな姿勢にも、熊本人らしさを感じて。やっぱり、熊本人は熊本人を引き寄せるんだなと。







−鹿乃子と共同生活を送る灯役の安達祐実さん、仁役の渡邊圭祐さんとの撮影はいかがでしたか。

 現場は和気あいあいとして、すごくいい雰囲気でした。大先輩の安達さんが場の空気を作ってくださいましたし、初対面の渡邊くんも人見知りすることなく、人懐こい仁くんのままでいてくれて。むしろ、鹿乃子さんは物静かで落ち着いた人なのに、時々演じる私が盛り上がりすぎて、「あ、いけない」と自分で自分をたしなめていたくらいで(苦笑)。上村(奈帆)監督も、物腰の柔らかい穏やかな方で、そういう3人のいい空気感をそのまま切り取ってくださいました。

−倉科さんご自身は、灯や鹿乃子、仁のような共同生活は送れそうですか。

 きっとできると思います。私はきょうだいも多く、目の前に田んぼが広がり、いろんな動物が家に自由に出入りするような田舎で大らかに育ったので、細かいことは気にしない性格なんです。だから、相手が誠実な人でさえあれば、全然大丈夫です。

−血縁の家族ではない3人がシェアハウスとも異なる形の共同生活を送る姿は、家族に対する考え方が多様化する時代のさらに一歩先を行っているようにも感じます。

 とてもすてきな関係ですよね。あの距離感だからこそ、お互いを尊重しながら生活できることもあるのかなと思いますし。恋人や夫婦という関係でなくとも、大切な存在と出会えるのは貴重なので、形にこだわるのではなく、「そばにいたい」と心が動いた相手と一緒にいられるのは、とても健全なことですよね。今は多様化が進み、これまでになかった形の家族も生まれていますが、みんなが自分の居心地のいい生き方を模索できる自由があるのはいいことだなと、改めて思いました。

−猫たちとの共演はいかがでしたか。

 それぞれに個性的なかわいらしさがあって、みんなを魅了してくれました。でも実は、動物の中では猫とのお芝居が一番大変なんです。私は自分でも猫を飼っていますし、何度も猫と共演したことがありますが、猫は調教するのが難しく、それぞれ個性も違うので、一概に「こうすればいい」という攻略法がないんです。だから、それぞれの猫に合わせてアドリブで動くしかなくて。ただ、今回の猫たちはみんなプロフェッショナルだったので、すごく助かりました。おかげで、とても自然でかわいらしい猫たちの姿が撮れたと思います。

−完成した作品をご覧になった感想は?

 原作の優しい雰囲気がそのまま映画になっているなと感じました。息苦しく、生きづらい世の中に疲れた大人の心を癒やしてくれるような空気感があり、この作品に参加できてよかったと、心から思えて…。撮影は真夏の暑い時期で大変でしたが、頑張ったかいがありました。そっと前を向かせてくれるような温かい映画になったので、迷える大人たちとかわいい猫たちの共同生活を、皆さんにもぜひ劇場でご覧いただけたらうれしいです。

(取材・文・写真/井上健一)


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