バリチェロの愛息“ドゥドゥ”がスプリント制覇。ポール発進ダニエル・セラは悲運に沈む/SCB第4戦

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2024年05月23日 17:50  AUTOSPORT web

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土曜スプリントは“ドゥドゥ”ことエドゥアルド・バリチェロが3番手発進からスパートを決め、シリーズ通算2勝目をマークする結果に
 ブラジル南部パラナ州に位置するカスカバルこと、アウトドローモ・インテルナシオナル・ジルマー・ビューで5月17〜19日の週末に争われたSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第4戦は、土曜午後の30分スプリントで元王者ルーベンス・バリチェロ(モービル・エール・フルタイム/トヨタ・カローラ)の愛息“ドゥドゥ”ことエドゥアルドが3番手発進からスパートを決め、シリーズ通算2勝目をマークする結果に。

 続く日曜本戦ではポールポジションから出たSCB“3連覇”経験者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が終始レースを支配したものの、最終盤でまさかの悲運に見舞われブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が今季7人目のウイナーに輝いている。

 南半球を中心に各国で大規模洪水が多発している5月だが、ここブラジルでも例外ではなく、リオグランデ・ド・スル州では4月末から実に3週間以上も降り続いた豪雨により200万人以上が被災し、現在も60万人が避難生活を送るなど、その収束にはまったく見通しが立たない状況が続いている。

 そのためイベント前にはストックカーのグリッド上のドライバー全員がリオグランデ・ド・スルの州旗の掲揚に加え国歌と州歌の演奏を清聴し、スタート前には『Movimento pelo RS(リオグランデ・ド・スルのために)』と記した横断幕を掲げて洪水被害者に向けた義援金と消費財を集めるキャンペーンを始動するなど、シーズン終了までこの運動を継続すると発表した。

 こうした状況も受け、寒さと雨の予報により金曜から土曜に掛けても降水確率92%、予想雨量は40mm、午後からは暴風雨となる見込みとされたレースウイークは、金曜2回のフリー走行を通じて“3冠”セラが先行。バプティスタを封じて最速タイムを記録してみせる。

「まだ金曜日とはいえ、最後尾からスタートするよりも先頭からスタートする方が良いからね。変更を加えてもクルマは順調に反応しているが、明日は少し寒くなり雨も降るという予報だ。今日は今日、明日は明日だね」とセラ。

 明けた土曜。まだ曇り空を保った午前に実施された日曜決勝向けの予選では、条件変動が少なかった環境も功を奏し、前述のふたりが主導権を握る展開に。その最後の局面でバプティスタを0秒077差で上回ったセラが今季2回目、キャリア通算15度目のポールポジションを獲得した。

「今季2度目の最速には満足しているし、クルマはトラックに出した瞬間から素晴らしい走りを続けている。ここカスカバルは挑戦的なトラックだが、すべてをうまく組み合わせることができれば、とても楽しいんだ。でも今は次のふたつのステージレースのことを考える時間だ」

■日曜決勝スタートではいきなりのSCで波乱の幕開け
 迎えた新フォーマットの30分スプリントでは、予選タイム上位12名を対象とした“インバーテッド”グリッドルールにより、リカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)と、こちらも“3冠”ドライバーのリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が並ぶ強力なフロントロウに。

 しかしスタート直後から輝きを放ったのは3番手発進だった“ドゥドゥ”で、91号車のカローラは最初の周回で前方のビッグネームふたりを出し抜くと、ピットストップでもチームの迅速な作業速度に支えられ快走。ちょうど10年ほど前の2013年に父ルーベンスがSCB初勝利を飾った地で、ファミリーの長男である22歳がふたたび表彰台の頂点に上り詰めた。

「昨日のフリー走行では厳しいスタートになったが、今日はとても良いクルマに恵まれた。最近までゲームのなかで見ていたふたりの英雄を相手に、勝負ができたことは素晴らしい経験だったよ」とセーフティカー(SC)明けのリスタートでも堂々の逃げを打ったドゥドゥ。

「個人的にも、一旦落ち着いて『なぜこれが起こったのか』を理解する必要があるくらい、今はまるで勝った実感が湧かない。多くの人々、とくに非常に良いピットストップをしてくれたメカニックに感謝しなければならないし、これはメンバー全員の勝利だよ」

 日曜50分間の決勝も、ポールシッターのセラが危なげなくホールショットを奪ったが、その背後では4台中3台が大破してそのまま戦列を去るアクシデントが発生し、いきなり連日のセーフティカーが発動する。

 ここから義務ピットを引っ張った首位のセラと2番手バプティスタに対し、別の戦略として早めの動きを見せたエンツォ・エリアス(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラ)と開幕スプリント覇者のラファエル鈴木(TMGレーシング/シボレー・クルーズ)が続く展開となる。

 しかしここで、正確無比かつ堅実なドライブで勝利を決定づけたかに見えたセラに悲劇が訪れ、シボレー・クルーズの29号車は「驚いたことにトランスミッションのシャフトが折れた」ことでフィニッシュ目前にストップ。

 43周のファイナルラップで先頭に立ったバプティスタがSCB通算5勝目を飾り、2位に自身2回目の表彰台となるエリアスと、続く3位にラファエル鈴木が入り、この表彰台によりTCRでも活躍を演じる鈴木は、今季3度目のポディウムを確定しただけでなくチャンピオンシップでも首位に立った。

「残念ながらモータースポーツではよくあることだが、ダニエル(・セラ)の故障は本当に気の毒だった。でも僕自身のドライブにはとても満足している」と勝利の重要性を強調したサンパウロ出身の27歳。

「週末を通してペースはとても強かったし、クルマも非常に良かった。だからこそダニエルに対して101%で挑めたんだ。その価値はあったし、こうして勝利を確実にし、チャンピオンシップに挑む自信も得られたよ」

 続くSCB第5戦は、サンパウロの内陸部モジ・グァスーに位置するアウトドローモ・ヴェロチッタで6月28〜30日の週末に争われる。
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