メルセデス最小のEV「EQA」が改良! 変化は微妙? 試乗で確認

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2024年06月18日 11:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
「EQA」はメルセデス・ベンツで最も小柄な電気自動車(EV)だ。同モデルが改良を受け、車名を従来の「EQA250」から「EQA250+」へと改めて発売となった。「+」が付いたことは進化の証だが、具体的には何が変わったのか。改良モデルに試乗して確認してきた。


航続距離が大幅向上! 東京〜大阪間も余裕?



改良の目玉のひとつは車載バッテリーの容量が増えたこと。改良前の66.5kWhから70.5kWhに容量が増えたことで、一充電走行距離(WLTCモード)は591kmに達した(2021年の日本発売時は422km)。ちなみに、東京インターチェンジから東名高速道路、名神高速道路を使って大阪・梅田までが500km弱。新型EQAは東京から大阪まで充電なしで行き着けるほど長い距離を走れるEVだということになる。


外観にはそれほど大掛かりな変更はない。とはいえフロントグリルは、EV専用車両として開発された「EQS」「EQE」にも通じる「スリー・ポインテッド・スター」(メルセデス・ベンツのエンブレム)を全面に配したデザインとなった。また、前後フェンダーの縁取りは車体同色となり、より洗練された印象となっている。ボディカラーには3つの新色(ハイテックシルバー/スペクトラルブルー/パタゴニアレッド)が加わった。


「A」とは言ってもけっこう大きい! 乗りやすさは?



EQAはメルセデスで最も小さなEVであるとはいえ、基になっているのはSUVの「GLA」であり、ハッチバック車の「Aクラス」より大柄だ。


乗り込むと全幅が1.8m以上あるので、やはり十分に広いと感じる。EQEやEQSともなれば車幅が1.9mを超えるが、ゆとりある室内の満足度を含め、日常的な使い勝手での車体寸法からすると、国内ではEQAで十分と思えるのではないだろうか。適度な大きさでゆとりや質のよさを実感できれば、それが環境負荷を下げる一助にもなる。



EQAの操作はEVに特化しているテスラのクルマほど特殊ではない。これまでのエンジン車と同様の手順で発進させることになる。イグニッションを入れ、シフトレバーをDに移動させ、アクセルペダルを踏む。


メルセデス・ベンツが常に目指すのは、たとえ入門車種でも、また最上級の「マイバッハ」でさえ、戸惑うことなく安心して運転できるクルマであることだ。「究極の実用車」というのがメルセデスの基本である。



車両重量は2tを超えるが、最大トルク385Nmの力強いモーターにより、何事もなく滑らかに走り出す。モーターの性能はGLAの「AMG35」に近い。そのうえで、モーターはエンジンの1/100ほどの素早さで反応するので、わずかなアクセル操作で速度を自在に制御できる。乗る前はサイズ的にそれなりの存在感を感じたEQAだが、走り出して間もなく、手の内に入る感触を得た。



市街地を抜け都市高速に入る加速車線でも、モーター性能のおかげで素早く流れに乗り、不安なく高速走行に入ることができる。メルセデスの常として、タイヤの接地感を覚えさせる安定性は抜群で、この先の高速道路での移動が楽しみになる。

「A」とは言っても装備は最新! 先進安全機能を試す



高速道路に入り、一般に「ACC」(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と呼ばれる前車追従型の定速走行を試す。メルセデスは同機能を「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」という。操作はいたって簡単だ。

ハンドル右側のスポークに設置された「SET-」のスイッチを押すと、一定速走行と前車との車間距離の自動調整が始まる。設定速度を上げたければ「SET+」を押し、下げたければ「SET-」を押す。この操作では、時速10kmごとの調整となる。時速1kmごとに微調整したい場合は、スイッチを上下にスワイプする。設定速度調整のためスワイプを用いる手法は今回が初めての経験だったが、応答が的確で使い勝手がいい。


前車との車間距離の調節は、速度設定のスイッチの左上にある押しボタンで行う。4段階の区別があり、時速80〜100kmあたりで走るなら、3段階目の車間距離が適度だと思った。



車線変更は自分で操作を行うが、ウィンカーを追い越し車線側へ出すと、自動的にやや速度を上げながら車線移行をサポートしてくれる。走行車線より速く流れている追い越し車線への移行では、その加速感が後続車との車間距離を安全に維持するための安心材料になる。逆に、走行車線側へ戻る場合は、自動的な加速は行わず、現在の速度を維持しながらの車線変更となる。



満充電から500km以上走れるので途中で急速充電する心配はほぼないのだが、カーナビゲーション上には急速充電器のある場所が絵柄で表示される。地図を見ていると、周囲にこれほど充電器があるのかという心理的な安心材料になる。そこには何基の充電口があって、どれだけ空きがあるのかもナビ上で確認できる。


ナビに目的地を入れておくと、残り何%の充電量で到着できるかという数値も示される。これがあることで、目的地に着いてからの次の予定、例えば別の場所に立ち寄るとか、翌日はどれくらい移動するのかといったことを考慮して、充電時期を事前に想定しやすくなる。



単にフル充電での走行距離が何kmなのかであったり、あるいは急速充電器だとどのくらいの時間で充電できるのかといった車両性能の優劣だけでなく、実際にEVを使って移動する場面での個別の都合を考え、乗る人が運転の計画を立てやすくなるきめ細かい情報提供に感心した。



今回の試乗でひとつ気になったのは、渋滞の発生などでカーナビゲーションの経路が変わる際、車線変更を禁止する黄色線の場所で進路変更の指示が出たことだ。それに従えば、交通違反となってしまう。情報の反映の素早さには感心したのだが、車線や交通標識の指示も考慮した進路変更の案内がされるべきだろう。

バッテリー劣化が不安?



冒頭で述べたが、メルセデス・ベンツの哲学は、究極の実用車づくりにある。その使い勝手のよさは、高級車であるか小型車であるかを問わない。



2023年夏、メルセデス・ベンツ・グループのオラ・ケレニウス会長はあえて日本と韓国を訪れ、「乗用車の未来はEVにある」と語った。EQAは同氏の言葉通り、消費者に寄り添った商品として進化していくメルセデスのEVの姿を見せてくれた。メルセデスの価値はプレミアムであるより前に、誰にも身近な存在であるということだ。



EV未経験の消費者にとっては、日常的にスマートフォンを使っている経験から、「バッテリーの劣化」が不安材料のひとつとなっているかもしれない。メルセデス・ベンツ日本では「EQケア」という新車保証を提供しており、5年または10万kmのどちらか早い方までは、一般保証修理/定期メンテナンス/24時間ツーリングサポートの3つが無償となる。駆動用の車載バッテリーは8年または16万kmまで、容量の70%を保証する。



これなら、車検の期間でいえば3回以上の年月が保証されることになる。16万kmといえば年間2万km走れる計算になり、安心材料となるのではないか。ほかに、1年間は急速充電の月額基本料金と充電代が無料になる専用の充電カードも利用できる。


御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)
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