3カ月以上続く“原因不明のめまい”その4割が新疾患「PPPD」だった!新潟大学の医師が解説

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2024年06月19日 06:10  web女性自身

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6月になり急増するめまい。長続きする、よくならないと感じたら、それは新疾患“PPPD”かも。薬が効かないしつこいめまいの正体を、新潟大学の医師が解説する。



「つねにフラフラとしためまいに苦しんでいて、外出したときなど“地震が来た!?”と思うくらい症状が強くなります。もう数カ月、この症状のままですが、耳鼻科や脳神経外科で検査しても、何も異常が見つからないため、治療もできない状態です」(50代読者)



もともと、梅雨に入る6月は気圧の変化で、めまいの症状が強くなるといわれているが、冒頭のように、原因不明のめまいに苦しむ人は少なくない。新潟大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科の教授・堀井新さんが解説する。



「検査では異常がないのに、3カ月以上慢性的なめまいに苦しむ人の多くが、これまで日本では“めまい症”とくくられて診断されていました。抗めまい薬なども効かず、困っているのに『気にしすぎですよ』と何の治療もされずにいるケースが多かったんです」



しかし2018年に『持続性知覚性姿勢誘発めまい』(以下PPPD)という病名と診断基準がWHO(世界保健機関)で公式に確立。治療法も研究されたことで、原因不明のめまい症状の改善が見込まれるようになりました」



2010年の国民生活基礎調査によると、めまいに苦しむ人は約2000万人。PPPDはそのうちの15%を占めるといわれているので、単純計算すると、患者人口は300万人いてもおかしくないのだ。



「なかでもPPPDの好発年齢は、50代前半から半ばくらいで、男女比は1対2と女性が多いです」



では、PPPDとはどのような病気なのだろうか。



「めまいは3つに大別できます。一つは脳梗塞のように急に起こる急性めまい。一つはメニエール病や良性発作性頭位めまい症など、めまいの発作を繰り返すけれども、発作と発作のあいだは特に症状がない、反復性めまい。



そして最後が、3カ月以上、一日中、何らかの症状が起こり、めまいの増悪と軽減を繰り返すという慢性めまいです」



新潟大学の調査では、慢性的なめまいに苦しむ患者の、約4割がPPPDにあたるというのだ。



「周りの景色がぐるぐる回るような回転性のめまいではなく、しゃがみ込んだり、立てなくなるような強い症状でもありません。フラフラとしてしまうような軽いめまいがしつこく続きます。



しかし、スマホの動画を見ていたり、動いているものを見るなど、目への刺激があるときに強い症状に襲われたりします。同様に、体を動かしたときにふらつきが強くなることも多いです」



セルフチェックリストでは「スーパーやホームセンターなどの陳列棚を見る」「車、バス、電車などの乗り物に乗る」「本や新聞などの細かい文字を見る」など、めまいの症状の度合いを7段階で評価。72点中28点以上ならば、PPPDの疑いがあるという。



「揺れているものを見て、自分も揺れていると感じてしまったり、物音にビクッとなったり、知覚が過敏な人や、常に緊張している人がなりやすいと考えられています」





■3カ月以上続く場合は専門医への受診を



気になる症状が3カ月以上続く場合は、耳鼻科や専門医を受診することだ。



「まずは眼振の検査をしたり、目を閉じて立ち上がるなど平衡機能検査をしたりして、メニエール病や、良性発作性頭位めまい症などの病気の可能性を排除します。さらに問診を重ね、診断します」



PPPDと診断された場合の治療法は、3つに分けられる。



「病名が確立する以前は、抗めまい薬を処方されたりしていましたが、PPPDには効かないため、第一選択肢は抗うつ薬のSSRIという薬を使用します。



不安が強い患者さんばかりでなく、不安が強くない患者さんにも効き、有効率は70%ほどです。ただ、副作用として、胃がムカムカするなど、消化器の不調を訴え、薬が飲めない患者さんもいます」



前庭リハビリテーションという平衡訓練も有効だという。



「リハビリをすることでめまいが誘発されることもありますが、慣れを促進します」



さらに精神科医や心療内科医、臨床心理士などから認知行動療法を受ける治療もある。



「めまいの起こる仕組みや、めまいへの不安の強い患者さんの話を聞きます。1回60分ほどで、6〜7回カウンセリングを受けます。こうした3つの治療法を患者さんごとに組み合わせます」



しかし、まだPPPDという病名が誕生して7年ほどしか経過していないため、残念ながら、医師のなかでも病気の存在を知らないケースがある。



「逆に患者さんのほうがネット検索をして詳しいケースも。私のいる新潟にも、遠方から新幹線や飛行機を使って診察に来る人も多いです。以前ならめまい症で放置された患者さんも、PPPDと診断されることで、治療もできるようになりました。



初診には30分ほど時間をかけ、細かく問診するので、長い期間苦しんでいた患者さんのなかには『話を聞いてくれるだけでもありがたい』と感激する人もいます」



PPPDは放置すると、メンタルに影響して症状も悪化する可能性があるという。PPPDが疑われる場合は、希望を失わず、専門医に相談してみよう。

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