スーパーフォーミュラ・ライツに挑む中村仁はなぜ白ヘルメット!? 本人に聞く理由と白に込めた思い

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2024年06月27日 13:20  AUTOSPORT web

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2024スーパーフォーミュラ・ライツ第3大会SUGO 中村仁(モビリティ中京 TOM'S 320 TGR-DC)
 すでに2大会6戦が終了した2024年の全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権。今季はこれまで野中誠太(PONOS Racing TOM'S 320 TGR-DC)が3勝、小出峻(HFDP WITH B-MAX RACING)が2勝を挙げているが、第8戦で今季のルーキードライバーとして初めて優勝を飾ったのが中村仁(モビリティ中京 TOM'S 320 TGR-DC)だ。そんな中村だが、今季スーパーフォーミュラ・ライツではひときわ目立つ真っ白なヘルメットを被っている。いったいなぜなのか、その理由を聞いた。

 中村は2006年千葉県出身。全日本カートのFP-3やFS-125で戦い、2022年からFIA-F4に参戦すると初年度はランキング4位、そして2023年は今季ともにステップアップした小林利徠斗とタイトルを争い、ランキング2位を獲得。2024年はスーパーフォーミュラ・ライツに参戦を決めた。まだ自動車免許も取得したばかりで、サーキットには初心者マークをつけたクルマで訪れている。

 スーパーフォーミュラ・ライツでの初年度を戦っている中村は、第2大会のオートポリスこそ第4戦でクラッシュもあったが、第5戦では初表彰台を獲得。第3大会のSUGOでは専有走行から速さをみせ、第7戦で2位を獲得すると、第8戦でウエットのなかスタート直後の混乱を抜けトップに。見事初優勝を飾った。第9戦でも3位に入り、ランキングでも3位に躍り出た。

 そんな中村のヘルメットだが、Youtubeでのレース中継や写真、現地でご覧になった方は一瞬驚いたかもしれない。スーパーフォーミュラ・ライツ公式アナウンサーのサネカタイッセイさんの実況でもしばしば紹介されてきたとおり、そのカラーリングは真っ白。バイザーにスポンサーロゴがあるのと、アライヘルメットのロゴがついているくらいだ。もちろん他の出場ドライバーは全員ちゃんとカラーリングされているので、余計に目立つ。

 近年ではカーボンヘルメットも普及しているのでその限りではないが、通常、白いヘルメットは“買ったまま”の状態。そこからほぼすべてのプロドライバーはペイントをする。近年はカートでもほとんどのドライバーがペイントしており、ジュニアでも色を塗っているドライバーは多い。白いままだとちょっと“素人”感も出てしまう印象もある。

 ちなみに中村は昨年までのFIA-F4、今年のスーパーGT、スーパー耐久ではブラックとレッドが主体のカラーリングされたヘルメットを被っている。ではなぜ今季、スーパーフォーミュラ・ライツだけ白いヘルメットでシリーズに臨んでいるのだろうか? ズバリ本人に聞いてみた。

■白ヘルメットにした経緯と思い
「今年はライツ、スーパーGT、スーパー耐久と3カテゴリーに参戦させていただいているのですが、ヘルメットを共用するのは難しいですよね。そこで今年はアライヘルメットさんからふたつヘルメットをご提供いただいていて、ひとつはまずスーパーGT用にしました。もうひとつをライツ用にしています」と中村。

「スーパーGTではハコ車なので(編注:飛び石や汚れることが少ない)、憧れのマットカラーにしたんです。でももうひとつのヘルメットをどうしよう? と考えたときに、やりたいことが特にないな、と思っていたんです」

 そんなことを中村が考えていた2024年2月の大阪オートメッセの際、スーパー耐久で所属することになったKTMSのブースでのトークショーに出演した夜にチームメイトの一條拳吾、奥本隼士、小林、それにKTMSからGR86/BRZ Cupに参戦する平良響というメンバーで食事をしたという。

 先輩たちもいる中で、中村は「今年のヘルメット悩んでるんですよね」と話をした。そこで冗談半分で「白ってどうですかね?」と切り出したという。「たぶん無責任だと思うのですが(笑)、響くんと一條くんが『いいじゃん!』と過剰に反応して、奥本くんも『ええなあ』、利徠斗も『ネタ取られた』みたいなことを言いだして(笑)。みんなに乗り気になっちゃったんです」

 とはいえ、被るのは中村自身。最終的に自身で白ヘルメットで納得した理由があるという。

「僕はカートからステップアップしてきましたが、普通の家庭の出身なので、大金が払えるような環境ではなかったんです。僕が全日本カートに出ていた頃もアライさんからいただいた白ヘルメットで走ってチャンピオンを獲ったこともあるので、チャンピオン獲れるかも……? という験担ぎもちょっとあります」

「それと『白でもカッコいい』ということ、初心を忘れないことという意味があります。それと、最近はカートの子でもみんなヘルメットは塗っていますが、それも経済的な負担になってしまうと思うんです。もし僕がこのヘルメットで速く走ることができて、この白ヘルメットに少しでも憧れる子が出てくれたらいいな、というのは少し思っています。まだライツなので影響力はそれほどでもないかもしれませんが(苦笑)」

 こうして今季、開幕大会となったオートポリスから白ヘルメットで参戦している中村。今季ドライブするモビリティ中京 TOM'S 320 TGR-DCは黒がベースのカラーリングだが「白だと目立ちますよね(笑)。場内のモニターの画質が悪かったらしいのですが、実況のサネカタさんも僕だけはすぐ分かったと言ってくれて。白にして良かったと思いますね」という。

“ヘルメットはドライバーの顔”とはよく言われることだが、速い白ヘルメットがいたらそれはそれでカッコいい。今シーズンのスーパーフォーミュラ・ライツでひときわ目立つ白ヘルメットの中村仁の活躍にぜひご注目を。

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