今年は梅雨入りが非常に遅かったが、明けたらたちまちクソ暑い日々が続きそうだ! では、暑くなったら儲かる会社はないだろうか? すぐに思い浮かぶような大企業はすでに物色されてしまっているようだが、まだまだ有望な銘柄はいっぱいある。動くなら、本格的に暑くなる今がチャンスだ!!
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■猛暑は株価に織り込まれてる?
毎年のように暑い夏が続いているが、今年はことさら気候がヘンらしい。梅雨入り前の真夏日到来で今年は空梅雨になるかと思いきや、6月下旬からは遅れを取り戻すかのように、全国各地で大雨が予想されている。
例年どおりの梅雨明けを迎えた後は、太平洋赤道域付近の海水温が低くなる「ラニーニャ現象」の影響で、今年の夏は統計開始以降最高に暑かった昨夏をも超える酷暑が来るという。
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そこでご提案。猛暑になると株価が上がる銘柄に投資して、ひと儲けするのはどうだろう? 株式アナリストの宇野沢茂樹氏に、猛暑と株の関係を聞いた。
「いい着眼点ですね。ただ、株式市場は常にテーマを先回りして動きますから、すでに猛暑はある程度株価に織り込まれているでしょうね」
ということは、これから投資しても間に合わない?
「いえいえ、まだまだ夏はこれからです。例えばビールや清涼飲料水の大手メーカーなどはすでに上がり始めているので、むしろ猛暑が来れば利益確定の売りが出る可能性もあります。その一方で、投資家があまり見ていない中小型株の中には、まだ気づかれていない銘柄がゴロゴロあるんです」
具体的には、どんなところに目をつけて探せばよい?
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「まずはわかりやすい消費関連、レジャー関連ですね。アイスクリームや旅行などがわかりやすい例ですが、実は注意が必要。あまりに暑すぎると、人々の行動が変わる可能性があるからです」
例えばアイスクリームの場合、牛乳や生クリームを使った商品がよく売れるのは気温30℃まで。それ以上になると、シャーベットや「ガリガリ君」などの氷菓系が伸びるというのだ。
また、サーティワンなどすでに上昇し始めている銘柄もあるので注意が必要である。レジャーにしても、あまりに暑すぎれば屋内施設に人気が集まるだろうし、そうなれば巣ごもり需要なども考慮すべきだという。
「また、消費者に直接モノやサービスを提供する会社も悪くないのですが、直接そこに投資するより、こうした会社との取引がある銘柄のほうが一般に知られていない分、投資妙味が残っていることもあります。
あとは、猛暑と直接的に関係があるわけではないのですが、夏は集中豪雨などの天候不順による災害が増加している点にも注目です。
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昨年には6月下旬から7月中旬にかけて、全国各地で延べ118河川が氾濫し、7000棟にも及ぶ住宅被害が出ました。これを踏まえると、建設や土木といった国土強靱化銘柄にも目を向けておいたほうがいいかもしれません」
■識者イチ押しの銘柄はこれだ!
宇野沢氏の推奨10銘柄は表にまとめたので、ここからは特にイチ押しの銘柄について語っていただこう。
「猛暑になれば朝から晩まで気温や降水確率が気になるということで、まずは大本命としてウェザーニューズですね。世界50ヵ国でサービスを展開しており、民間の気象会社としては世界一の規模を誇ります」
ただ、株価を見ると、2021年の年末以来一直線に下がっているけど......。
「ご心配には及びません。この間も着実に増収増益が続いていますから。要は一時、ブーム的に上がりすぎた株価が実力相応の水準に戻ってきたと考えてください。遠からず、成長を反映した株価上昇が始まるとみています。
気象情報は私たち消費者が見るだけでなく、陸海空の運輸会社や気候によって売れ行きが左右される企業にとって、ビジネス戦略の決め手となる必須データです。急速にAIが普及していることもあり、同社の質の高い気象データはますます価値を高めていくと思います」
企業の収益力を示すROE(株主資本利益率。会社が資本をどれだけ効率よく活用し、利益を生み出すことができているかを示す)は約13%と、東証プライムに上場する企業の平均である約8.6%を大きく上回っている。
さらに有利子負債はゼロ、この10年で1株当たりの配当を83%増加させており、ピカピカの優良企業である。
続いては、猛暑がダイレクトに業績に影響しそうな冷凍冷蔵庫メーカーだ。
「フクシマガリレイは店舗用冷蔵庫で高シェアを誇ります。スーパーや大手コンビニチェーンの冷凍冷蔵庫は皆、同社の製品を使っていますね」
でも、冷凍冷蔵庫はすでに店舗で使われているわけで、猛暑になろうと業績には関係ないのでは?
「猛暑と同社の業績をつなぐキーワードが『節電』なんです。冷凍冷蔵庫は一定の使用年数で壊れますから、定期的な更新が必要ですよね。
そのときに考慮されるのが、電気料金の大幅上昇です。今までは停電の可能性があるという、あくまでも協力ベースの節電だったものが、今年の夏は節電しないと自分の首を絞めるわけで、切実さが違います」
実際のところ、スーパーやコンビニの電気代は冷凍冷蔵庫がほとんどを占めている。そこに過去最高の猛暑が直撃するとなれば、更新時期を早めて最新・節電型機器の導入に動く企業や店舗が現れるだろう。
今夏には間に合わないものの、同社はすでに新工場建設に着手しており、長期的な成長を見据えて準備万全だ。
「冷凍冷蔵庫は寿命が長いので、売ってからもメンテナンス需要が続くことも同社の大きな強みです。点検・補修は利益率が高いので、収益が積み上がっていく点も理想的。それがこの25年で、コロナ禍の2020年を除いて毎年増配を行ない、1株当たり配当を約9.5倍に成長させたという実績にも表れています」
アイスをキンキンに冷やす同社が、われわれの懐をホカホカに温めてくれそうだ。
「最後に、国土強靱化関連でライト工業を挙げておきます。両側を崖に挟まれた道路を切り通しといい、崖の部分を法面といいます。同社はこの法面の成形や、地盤改良などの特殊な土木を専門とする企業。豪雨や台風などで傷んだ道路や土地の補修には欠かせない存在といえるでしょう」
事業領域がインフラに特化しているため、同社の顧客は地方自治体がほとんど。そのため業績は非常に安定しており、着実に増収増益を積み重ねている点は魅力だ。
さらに特筆すべきは、同社が現金をたんまり持っていることだ。
「企業が保有する現金(預金や、即換金できる有価証券を含む)から、有利子負債を差し引いた実質的な手元資金をネットキャッシュといいます。同社は総資産のうちネットキャッシュが約27%を占めていて、これは非常に高い水準です。
このおカネは増配や自社株買いなどの株価向上策に使うことができますから、今のうちに株を買って、株主還元に期待するのがいいでしょう」
株式投資の盛夏は、すでに訪れている。
取材・文/日野秀規