史上最凶「ジェットコースター相場」を生き抜く方法。今後の株価はどうなる? 賃金、物価への影響は?

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2024年08月22日 06:40  週プレNEWS

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日経平均と為替は連動しており、円安になれば株高に、円高になれば株安になるという傾向が見られる。これから先はどうなる!?

猛暑で相場もおかしくなっちまったのか!? 日経平均は8月5日に過去最大の下落を記録した翌日に過去最大の上昇を見せた。合わせてドル円相場も150円台から10円ほど上昇した後、再びすぐ147円に復活。

この値動きにみーんな大混乱! いったい何が起きてるの? この先株価や為替はどうなるの? 先の読めない相場の生き残り方、伝授します!

■大荒れ株価の震源地は日銀

2日連続の「史上最大」。7月末から8月までの株式相場を最も端的に表すキーワードはこれだ。

日経平均株価は4月から右肩上がりに推移しており、7月11日には史上最高値の4万2000円台をマーク。市場は株高に沸いていた。

ところが7月末から突然、株価は連日急落。8月5日は史上最大の下落幅となる4451円安を見せ、昨年10月以来となる3万1000円台に転じた。この日は東京エレクトロンや伊藤忠商事などを筆頭に、東証プライムの800超の銘柄がストップ安(1日の制限値幅の下限まで下落すること)に。

市場関係者に緊張が走ったのもつかの間、一転して翌6日は史上最大の上げ幅となる3217円高となり、激動の展開が続いている。

なぜ前代未聞の乱高下が起きたのか? 経済評論家の鈴木貴博氏が解説する。

「7月31日に日銀が利上げを発表したのが最大の原因です。一般的に利上げは経済の過熱やインフレを抑えるために行なわれ、株価にはマイナスに働きます。ただ、世の中の予想よりも早く利上げを決めたことと、今回限りではなく今後も引き続き利上げを行なうと発言したのがマズかった。これによって、ドル円が一気に円高に振れたのです」

円の金利が上がればほかの通貨と比べて魅力は高まるため、円が買われ円高となる。7月頭に1ドル=161円をつけていたが、8月5日には一時141円まで円価格が上昇した。

円高は日本の株高を支えていた、自動車や半導体といった輸出系の企業にとってはマイナスに働く。その結果、全面的な株安となったわけだ。このほか、アメリカでAI株への期待がしぼみ出したことや、同じくアメリカの7月の雇用統計が市場予想を大きく下回る結果になったことも、株安に拍車をかけたといわれる。

「とはいえ、今回の下落は狼狽売りの側面が大きいでしょう。現時点で企業の業績が大幅に悪化したわけでもないですし、3万1000円台まで下落するというのは売られすぎ。実際、8月14日時点では年初の水準である3万6000円台まで戻していますし、ここから再び大きく下落する展開は考えにくい」

ここで気になるのは、今回の乱高下が実体経済にどんな影響を与えるかである。鈴木氏が続ける。

「基本的には、株価の変動が実体経済に与える影響は乏しいです。なぜなら、株価は実体経済の未来を織り込んで動く先行指標だから。

しかし今回に限っていえば、この値動きが実体経済に大きく影響を与えそうです」

というのは?

「今回のポイントは、日銀の方針転換です。

もともと植田和男総裁は、7月31日の金融政策決定会合で継続的な利上げをほのめかしました。それを悲観したマーケット関係者によって、円高株安が進んだのは先ほど説明したとおりです。

ところが日銀はそれを受けて、8月7日に内田眞一副総裁が『市場が不安定な状況で利上げすることはない』と火消しに回ったのです。この修正によって騒ぎが収束したことは良かったのですが、見方を変えれば、円高株安を導いてしまう利上げは今後しづらくなったともいえます。

そのため、150円を中心に140〜160円のレンジでドル円は推移するでしょう。つまり、記録的な円安が今後定着するわけです」

なお、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は今後利下げを進めるとみられる。日米の金利差は縮まるため、教科書的には円安の解消に向かうはずだが、「市場は織り込み済みのため、そこまでの動きはないのではないか」というのが鈴木氏の見立てだ。

■円安が定着し物価は高止まりに

円安が定着する日本で何が起こるのか? まず知りたいのは物価だ。

「費目によっては昨年比で下落しているものもありますから、その意味ではインフレはある程度収まってきているともいえます。とはいえ円安が定着すれば原材料費は高騰しますから、物価は高止まりするでしょう。

身近なところでいえば、ラーメンは1000円の壁を越える店が大多数になるでしょうね。人件費が少なくて済む業態は比較的打撃が少ないと思いますが、コンビニなんかはここから1〜2割は商品の価格が上がると思います。また、物流もすでに人手不足が深刻化していることから、通販の送料無料は過去のものになるでしょう」

猛暑の今、気になる電気代やガス代はどうか。

「原油価格は去年より下がっていますし、電気代もこのままいけば落ち着くはず。ただ、これは中東情勢に大きく左右されます。イランのイスラエル攻撃がどこまでエスカレートするかによるので、エネルギー価格は先が見えません」

注目すべきは、観光に関する物価だ。

「インバウンドが好調なことを受けて、ホテルや航空チケット、観光地の飲食店、百貨店を筆頭とした小売店はまだまだ価格が上がるはずです。先日新宿のドン・キホーテに行きましたが、自宅付近のドンキとの価格の違いに驚きました。今後、日本人は観光地ではなかなか買い物できなくなるのではないでしょうか」

物価高が定着すれば、苦しい生活は今後も続くことになる。そこで問題となるのは賃金だ。

6月の実質賃金は前年比1.1%増と、27ヵ月ぶりにプラスに転換した。このペースが今後も続けば暮らしは徐々に楽になっていくはずだが、鈴木氏は悲観的だ。

「まず、6月はボーナスが含まれることに注意が必要です。政府から賃上げの要請が出ているわけですが、ベースアップできない会社はボーナスだけ上げるわけです。その結果、去年よりボーナス額だけが増えている会社が多く、実質賃金を押し上げたとみるべきでしょう」

でも、これから徐々に賃上げが波及するとも考えられない?

「2024年4〜6月期の上場企業の純利益は前年同期比で10%増、同年1〜3月期比でも1ポイント拡大しており、業績は好調です。賃上げ余力も十分ありますし、優秀な人材の奪い合いは激化していますから、賃上げは今後も続くと思います。

問題は中小企業と、業績不振の大企業です。ここは賃上げは難しいでしょう。特に製造業では、大企業が下請けを買い叩いて利益を稼ぐ構図が常態化しています。それで自社社員の給料は上げられるでしょうが、賃上げが業界全体に波及することはないと思います」

3月に日産自動車が下請け36社に対し、支払う代金を不当に減額したとして公正取引委員会から勧告を受けていたのは記憶に新しい。これは極端な例ではあるが、大企業が下請けを買い叩くのは日産に限った話ではない。埼玉県で従業員20人程度の金属加工会社を経営する男性はこう漏らす。

「大手自動車会社に部品を納入することはあるが、『どうせ買い叩かれる』と不信感をあらわにする同業者も少なくない。薄利だし、価格交渉の余地もないのでうまみが少なく、大企業から来た案件を断ったこともありますね。

なお、原材料である銅の価格が高騰したにもかかわらず十分に価格に転嫁できていないため、私の会社は現状ベアできていません」

こうした状況が続けば、格差はより広がってしまう。

■日経平均は年内に4万2000円に

では、このジェットコースター相場を生き抜くためには何をすればよいか。再び鈴木氏にアドバイスを求めた。

「節約や買いだめといったことも意味はあるのですが、一番大きな効果があるのは、逆説的に聞こえるかもしれませんが株を買うことでしょう。というのも、今回の一連の動きは為替、物価、賃金にとってはネガティブに働くのですが、株価にとってはプラスとなり、徐々に元の水準まで戻ると考えられるからです。

新NISAでの積み立てをやめないこと。ましてや、今『損失が出た』と売ってしまうのは一番バカげています。株価の上下に振り回されずに、淡々と積み立て続けることが、最も手っ取り早い生活防衛です」

昨年末の段階で「日経平均は2024年に4万2000円になる」と予想し、見事的中させていたマネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏も同意見だ。

「今回の下落は一時的な値動きに過ぎず、基本的に上昇基調は変わらないでしょう。年末までに再び最高値の4万2000円まで戻すとみています」

その根拠は?

「昨年頃から日本株を再評価しようという動きが外国人投資家を中心に旺盛でした。今年の株高もそれに支えられていたわけですが、この流れはそう簡単に逆行しないはず。円安は製造業をはじめ多くの企業にとってプラスに働きますし、インフレも見方を変えれば企業の利益が増えるわけですから、日経平均は着実に上昇を続けると思います。

4万2000円の根拠はシンプルです。現在、日経平均の1株当たり利益は2300円。これが年末にかけて約1割上昇し、2500円になると予想しています。また、これまで日経平均は1株当たり利益の15倍の価格、つまりPER(株価収益率)15倍で評価されていました。ところが最近は16〜17倍で買われるようになっています。

私は今後PER17倍という水準が定着するだろうと考えています。2500円の17倍は4万2500円。これが予想の根拠です」

その観点からすると、今は買い?

「おっしゃるとおりで、今はリーマン・ショック以来の絶好の買い場が来ていると思います。日本企業の利益が落ちているわけではないのに、ピーク時から1割以上下落していますからね。

8月14日時点でPERは14.85倍。年初から今年の6月までで15倍割れになったことはなかったので、まだまだかなり安い水準にある。まとまった元手があるなら、これを機に購入してじっくり保有するのがいいでしょう」

大暴落を見ると、つい投資が怖くなってしまう。ところが皮肉なことに、ジェットコースター相場をサバイバルする最良の方法は、恐れることなくコースターにしがみつき続けることのようだ。

取材協力/日野秀規

このニュースに関するつぶやき

  • 円高進んでも、為替差損を打ち消すくらい米株と日本株が上がってくれりゃ問題ないんだけどな。
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