『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.37【コミックス派はネタバレ要注意!】

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2024年08月26日 00:11  週プレNEWS

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『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが7月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが7月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第457話 超人強度1億パワー!!の巻(7月1日更新分)
第458話 "惨め"な男たちの抵抗!!の巻(7月8日更新分)

第459話 発動! マグネット・パワー!!の巻(7月22日更新分)
第460話 美しき悲鳴の行く末!!の巻(7月29日更新分)

あらすじ サグラダファミリアで繰り広げられる時間超人"五大刻(ごたいこく)"・ファナティックと完璧超人・ネメシスの一戦! 五大刻の超人強度は1億パワーであると宣言するファナティックの一方的な試合になると思いきや...。

爪切男(以下、爪) 7月7日にアニメの放送が始まって、それを観てからできるパターンの対談、今日が初めてなんですよね。

燃え殻(以下、燃) ああ、そうか。現時点で僕らは第5話まで観たけど、まず何よりも、嶋田先生が楽しそうだよね。

 ははは、そうですね、Xを見ると。

 原作者があそこまでのめりこんでリアタイで視聴してるっていうのが、すばらしい。爪さんのドラマ(『クラスメイトの女子、全員好きでした』)と同じくらい。

 僕はリアタイで観ながらインスタでライブ配信までしてますから(笑)。

 ほんと、原作者が喜んでいるアニメ化やドラマ化が、いちばん幸福なんじゃないかな。

 でもこのアニメ、前から僕らが期待していた、新しいファン層を開拓できているのかというと......そこだけが心配です。おじさんの時間帯じゃないですか、日曜深夜23:30って。だからこそのこの時間なんでしょうね。

 そうなんだよね。だから、おじさんたちの視聴率はすごくいいと思うけど......。

 若い人も観てほしいですよね。Netflixにもあるし。

 一回目のアニメ化の時って、日曜の朝だったよね?

 はい、朝10時からでした。だから、当時観ていた子供たちが、今いちばん観やすいのが、日曜の23時半なんでしょうね。

 ずっと『キン肉マン』に合わせてもらってるんだ、僕ら(笑)。

 で、SNS、めちゃめちゃ盛り上がってるじゃないですか。放送時間にリアタイしてる人がすごく多い。

 23時半からアニメを観て、終わると0:00に『週プレNEWS』に最新回がアップされるから、それを読むというのが、日曜深夜のルーティンになってるよね。

 この楽しさがもっと外側まで広がればいいのになあ、と。自分たちだけのものにしておくのがもったいない。

●ファナティックが完璧超人に下した"下等"の意味

 連載のほうだけど......。

 7月は第457話〜第460話の4回。

 第457話は、ファナティックがアヴァランチ・デスロードや終焉のスピア・クロスで、ネメシスを攻めまくる。

 マリポーサVSパピヨンマンほどじゃないけど、ネメシスが何をやっても、ファナティックに上を行かれる展開ですね。

第458話でファナティックがネメシスに言うじゃないですか。「どうです 惨めでしょう。力が足りないというのは? あなたたち完璧超人が下等超人の皆さんにやってきたのはこういうことなんですよ? 少しは弱者たる下々の気持ちがおわかりになりましたか〜〜〜っ!」。で、ネメシスはそう言われて、ロビンマスクのことを思い出すという、ここがいいんだよなあ......。

 でも、反撃のネメシスドライバーも、ファナティックのマグネット・パワーに阻まれる。

 で、マグネット・パワーに対する見解の違いで、ファナティックがサイコマンと同じヤツではないことがわかる。サイコマンはシルバーマンに注意されるまで、マグネット・パワーに頼ってた。

でもファナティックは、ネメシスドライバーを封じるのには使ったけど、「こんな力はね、私の闘いに本来必要ありません」。

 前回のこの対談の時は、時間超人ってどのくらい強いのか、完璧超人とはどのくらい差があるのか、何ができて何ができないのか、というのが、まだわからなかったじゃない? 今回は、それが少しずつわかってきた感じがするね。力の差はあるけど、現段階で連載6回分、闘い抜いてるわけじゃない? 秒殺ではない、試合として成立している。

 そうですね。ネメシスも劣勢だけど、何もできてないわけじゃない。技を出しているし、食らっても立ち上がってくる。

 あまりにも力の差がありすぎると、壊れるじゃない? でも6週にわたって壊れてはいない、というのは、いい試合なんだな、と。で、ファナティックは時間超人の中で、たぶんエース格だよね?

 そうでしょうね。

 エース格のファナティックとネメシスが闘うとわかった時、すぐ終わりそうだと思ったんだよね。力の差がありすぎて。でもそんなことなかった。ならば他の完璧超人たちの試合も、おもしろくなりそうだなと思える。

 459話の大詰めでファナティックが出した全身関節技、ファナティック・ビリーバーロックを観て思ったんですけど。もしかしたら今のプロレス界の流れ、ザック(・セイバー・Jr.)とかの影響を受けたかも。最近プロレス界では、こういう複雑怪奇なサブミッションを使う人が人気というか。『キン肉マン』は、ちゃんとその流れにも乗るんだな、先生は今のプロレスも追ってるんだなと思いました。この技、ザック、使えそうだもんな。

 え、使える(笑)?

 立ってはできないかもしれないけど、グラウンドだったら。こういう前部の関節を極める技、SANADAを相手に......。

 あ、そうか!  観たことある。

 両手両足を全部極められて、ギブアップを口で言うしかない状態にする。

 バスター系じゃないのがいいんだよね、関節技なのが。そういう技で決まる試合が、僕は好きかもしれない。プロレスでも、『キン肉マン』でも。

■ゆでたまご先生流「伏線回収」を考察

 第460話の最後でネメシスが、いちばん触れられたくないタツノリのことを、ファナティックに侮辱されて、怒りパワー全開になって、全身からものすごいオーラを発しながら、額の文字が「KINマーク」になるじゃないですか。

 それを見て委員長が泣いて喜ぶ、「あのサダハル様が...とうとう我らの前に帰ってきてくださったーっ!!」。長い伏線の回収がここで。

 そう。でも、こういうのを全部理解しようとすると......ネメシスのことも、少年ジャンプの頃の連載しか読んでいない人は、わからないですからね。委員長が泣いてる意味をわかるところまでさかのぼらないといけない。

 TVドラマなら、ここで昔の回想シーンが流れるのと同じで......。

 泣く委員長のコマ、バックが回想シーンですもんね。

 未読の人は、この伏線に当たる過去のエピソードを読んだほうがいいよね。そのほうが絶対におもしろいから。

 前に嶋田先生がこの対談に出てくださった時の話だと、作家が伏線と回収ばかりに熱心になる傾向に、懐疑的だったじゃないですか。

 うん。だから自分は、先まで考えては書かない、みたいなことをおっしゃっていたけど、でもこの伏線回収、すごいよね。ほんとに先まで考えてなかったのかなあ?

 なかったと思います。考えてなくて、描く直前に思いつけるというのが、才能なんだろうなあ。「思いつける」というか、「思い出す」のか。「あ、あのエピソード!」と。

 思い出すというよりも、先生自身がずーっと『キン肉マン』の世界にいるんだろうね。だから脳内に、ずっといろんな超人たちの引き出しが並列にある、みたいな。

 僕らだと引き出しを縦に積んじゃうから、下のほうに何が入ってるかわからなくなるけど。

 横に並べてるから、中身がすぐ見える。全部フラットに存在してるんだろうね、過去の超人や過去のエピソードが。

 なるほど。それはいい推察かも。

 そういえばこの間、『7人の悪魔超人編』を読み返したんだけどさ。最後にテリーマンがザ・魔雲天(マウンテン)に勝って帰ってくるけど、あの時、正義超人、けっこう死んでるじゃない?

 ロビンマスク、ウォーズマン、ウルフマンが死んだ。絶望でしたね、あれは。

 みんな負けて全然帰ってこなかったじゃん。ブロッケンJr.が「な...なんてことだーっ!! かえってきたのがオレだけなんて〜〜〜っ!!」って言って、そのあとテリーマンがボロボロになって帰ってきたけど。でもほかの重要人物、みんな負けて死んでる。

 ロビンが負けたのも大きかったですよね。

 ショックだった。ああいう展開を先生、読者ともに経験済みなので......。

 だから今、我々は、敢えて耐えないといけない。過去の『キン肉マン』で、絶望を味わってきたのと同じように......ネメシスが、善戦するけど負けるのを受け止めないといけないのかな、という気になってきますね。

 でも僕は、昔はこういう展開でも、「負けないで」と思って読んでたから。今も、「負けないで」で読もうと思う。

 (笑)。しかし先生、ほんとかつてのジャンプ黄金期の熱量を保ったままで、描いてくれますよね。

 ほんとにそうだよね。

 昔、『週刊少年ジャンプ』を読んでいた、子供の頃の気持ちが蘇りますよ!

 『ジャンプ』の週刊連載でみんながワクワクして、毎回「次どうなるんだろう」と思いながら来週を待つ、その感じが先生の血肉になっているんだろうね。『週プレNEWS』の連載、月曜0時に更新されるのを、あの頃と同じ気持ちで待ってるもん。

 嬉しいですよね。あの『ジャンプ』感を今も『キン肉マン』が持っている、というのが。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社)『これはただの夏』(新潮社、8月28日に文庫版発売)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『夢に迷ってタクシーを呼んだ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00〜27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が来春書籍化予定。ドライバーWebで『横顔を眺めながら 〜爪 切男の助手席ドライブ漂流〜』を連載中。5月21日には『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化、さらに読売テレビ・日本テレビ系プラチナイト木曜ドラマとして、23時59分より同作ドラマが放送中(主演:木村昴)

取材・文/兵庫慎司  撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社

『キン肉マン』連載7月分を燃え殻氏、爪切男氏がレビュー

このニュースに関するつぶやき

  • ネメシス今のままなら、ファナティックに負けるパターンですね。
    • イイネ!3
    • コメント 2件

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