大谷翔平選手の「40-40」であらためて脚光を浴びる往年の名選手【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第129回

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2024年08月30日 15:00  週プレNEWS

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大谷翔平の「40-40」、往年の名選手について語った山本キャスター

昨年に右肘手術を受けた影響で、今シーズンは打者に専念するドジャース・大谷翔平選手の活躍はとどまるところを知りません。

現地時間8月28日現在、メジャー史上ふたり目の「42−42」を達成。残り29試合で史上初の「50−50」への期待も高まります。「42−42」とは42本のホームランを打ち、42個の盗塁を決めたということ。打って走れる、マルチな才能を持つ選手ということなのですが......。

野球の歴史を紐解くと、この記録はあまり注目されていませんでした。というよりも、このような記録の概念がなかったと言ってもいいでしょう。そもそも大昔の打者は、ホームランを打つことに重きが置かれていたため、盗塁もできることは"おまけ"くらいにしか思われていなかったのかもしれません。

しかし今の打者は、打つだけではなく多くの役割を求められるようになり、打てる上に走れることは稀有な才能であることが広く理解されるようになりました。かつて、打者にとっては「三冠王(首位打者・打点王・本塁打王)」が最高の名誉でしたが(その価値は今も変わりません)、高い走力も必要な「トリプルスリー(打率3割・30本塁打・30盗塁)も同じくらい評価されるようになったのです。

打つだけでは、勝てない。それが野球です。例に出すのは気が引けるのですが、バレンティン選手がプロ野球のシーズン最多記録である60本塁打を記録した2013年、我がヤクルトは最下位に沈みました。ヤンキースのジャッジ選手が62本塁打をマークした2022年のヤンキースも、レギュラーシーズンはア・リーグ東地区1位で終えましたが、プレーオフでリーグ優勝を逃しています。

現代では、あらゆる形でチームに貢献する選手が評価されます。「ホームラン40本・打率2割」の選手と「ホームラン20本・打率3割」の選手だったら、昔であれば前者のほうが人気を得ていたでしょうが、現代ではどちらも甲乙つけがたい評価を得ています。時代とともに選手の評価軸は増えていくのですね。

日本でもそうかもしれませんが、メジャーでは30本塁を達成した時点で、特別な選手だとファンから認知されます。そんななか、大谷選手は40−40を達成し、ナ・リーグでホームラン数トップを独走する上に、走れる。本当にスペシャルな才能ですね。

ちなみに、プロ野球で最も40−40に近づいた日本人選手は、西武やダイエー(現ソフトバンク)で活躍した秋山幸二さんだと言われています。西武時代の1987年には、43本塁打、38盗塁の記録を残しています。

秋山さんは偉大な打者で、身体能力が高いことでも知られていました。日本シリーズでホームランを打ち、バック宙をしながらホームインしたシーンは、みなさんもご覧になったことがあるでしょう。

当時も40−40達成への期待感はあったでしょうが、そこまで偉大な記録だとは思われていなかった可能性もあります。現在、大谷選手が記録を作っていくことで、秋山選手が偉大な選手だったことを再確認できるのは面白いですね。プロ野球とメジャーでは試合数が大きく違いますし(当時のプロ野球は年間130試合。現在のメジャーは162試合)、当時の秋山選手が残した成績は、40−40に匹敵すると言えるかもしれません。

かつて、日本人選手にとってメジャーは憧れの地でした。しかし今では、日本人選手が夢を見させてくれる場所になりました。大谷選手が記録を作ることで、次にスポットライトを浴びる選手は誰でしょう。

それではまた来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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