元IZ*ONE矢吹奈子、日韓両方で活躍したからこそ得られた“新しい自分”「今思うと、新しく言葉を学んだ経験は大きかった」

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2024年09月08日 08:40  ORICON NEWS

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矢吹奈子
 『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で、見た目と喋り方はギャルっぽいものの、話す内容は正論でしっかり者の女子高生・吉良萌子役を演じている矢吹奈子。HKT48、日韓合同のグローバルグループ・IZ*ONEでの活動を経て、HKT48を卒業した昨年以降は、念願だった俳優業に本腰を入れ、『沼る。港区女子高生』(日本テレビ)や『癒しのお隣さんには秘密がある』(日本テレビ)、『恋愛のすゝめ』(TBS系)など、立て続けに連続ドラマへの出演を果たしている。日韓での人気アイドルとしての立ち位置から、なぜ俳優転身を目指したのか? さらに成長するために、彼女がとったセルフプロデュースの方法について話を聞いた。

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■「アイドルとして伸び悩んでいた」時期も…転機となったオーディション

 アイドルから俳優業へ、矢吹がその思いを強めたのは、コロナ禍の時だったと言う。

「IZ*ONEでの活動を終えて、韓国から帰国したときに、お芝居をやってみたいってすごく思ったんです。そこで、帰国者に義務付けられたコロナの2週間の隔離期間中に、“学園ドラマに出る”ことを目標に、日本の学園ドラマをいっぱい見ました。楽しいドラマよりは『3年A組―今から皆さんは、人質です―』とか『学校の怪談』とか、考えさせられるドラマを好んで観ていたのですが、どの作品も生徒役はキャラが濃いからすごく勉強になったし、いろいろな考え方や価値観に出会えて、演じてみたい気持ちがより強くなりました」

 そんな矢吹のもとにタイミングよく訪れたのが、神尾楓珠主演の学園ドラマ『顔だけ先生』(フジテレビ系)への生徒役での出演オファーだった。

「チャンスをいただけて本当にうれしかったです。同年代の子たちと一緒にお芝居をして面白いなって思うのと同時に難しさも感じて、もっと挑戦していきたい気持ちが芽生えたし、自分がやりたいのはコレだって、居場所が見つかった気がしました」

 そして、HKT48の卒業。小学6年から約10年におよぶアイドル人生に幕を下ろしたのは、2023年4月1日のことだった。

「アイドル活動に関しては、もうやりきったっていう感じで、何も悔いがない状態でした」

 矢吹がここまで言い切れるのは「日本と韓国の両方でのパフォーマンス経験を積めたから」。特に韓国での挑戦を決めた時のことを思い返し、自身のアイドルとしてのパフォーマンスや魅せ方のギャップに煮え切らない思いがあったという。

「韓国に行く前の私は、正直アイドルとして伸び悩んでいました。歌やダンスを頑張っている私をファンの人には好きになってもらいたいと思っていましたが、上位に行くためにはそれ以外の握手会での対応なども重視されます。もちろん全力でそれらをやるのですが、(アイドルの根幹である)歌とダンスを頑張っても意味ないのでは…と感じてしまっていた時期もありましたし、本当の自分を評価してもらえていない悔しさを感じていました」

 そんな時期に、たまたま観たのが韓国のオーディション番組だった。

「ダンスが上手い人がいっぱいいて、その中でも高い評価を受けた人たちしかデビューできない厳しい世界であることを知って、いいなって憧れました。その直後に「PRODUCE 48」(IZ*ONEが誕生した韓国サバイバルオーディション番組)の話が来たので、もう受ける以外考えられなくて、何の迷いもなく、オーディションに参加しました」

 オーディションは韓国にて100日間かけて実施された。日韓を行き来しながらのハードなスケジュールだったが、「成長したいという気持ちが強かったし、歌とダンスを頑張れば、評価してもらえることがうれしくて、めっちゃ楽しい時間でした」と当時を振り返る。

■「赤ちゃんのように吸収」、韓国での活動が“新たな自分”を手に入れるきっかけになった

 韓国で活動していた時は、例えるなら「赤ちゃんがいろいろなことを吸収していくような感覚だった」と矢吹。韓国語を学び、話すことで、“新たな自分”を手に入れるきっかけをつかむことができたという。

「私は韓国ドラマも好きでよく観ているのですが、韓国の俳優さんたちは喜怒哀楽の感情を出すのがとても上手いですよね。あれは芝居だからというわけではなく、普段からみんな感情を表に出すのがすごく上手なんです。私も韓国語を話すときは、日本語を話すよりも感情を出しやすくなっていることに帰国してから気づいて。普段はそこまで自分の感情を出すことはないのに、韓国語を話すと勢い余って口がとんがったり、表情からして違う(笑)。『韓国語を話す時だけは人が変わるね』と言われるくらい“新しい自分”になる。今思うと、新しく言葉を学んだ経験は大きかったですね」

 23年からは数々の作品に参加し俳優業に邁進しているが、演じることと向き合うなかで、アイドル時代とは異なる表現に難しさを感じることも。

「演じるまでに、徹底的に準備して作り込んでしまうことが課題でした。アイドルはしっかり準備して、完成させたものを当日見せる。お芝居も台本を読むなど、撮影までに準備が必要なことは同じですが、固めすぎると上手く対応できなくなってしまうこともあります。例えば、当日に相手役の方が自分の想像と違うお芝居をしたり、自分が用意していたものとは違う動きを監督に提示されたり。状況に応じて変えて魅せなければならないことも多いので、最初の頃はその塩梅がわからなくて。アイドル時代と同じように準備しすぎて行ってしまって、その場で求められたことや指示されたことに自分の気持ちがなかなか合わせられなくて、すごく難しかったです」

 一方で、アイドルグループという集団のなかにいたからこそ、活かされる経験も多いという。

「アイドル時代は本当に大人数の中にいたので、性格が違ういろいろな人をこれでもかと見てきました。それは、人間ドラマを作り上げるうえでとても役立っていると思います。演じるキャラクターを性格診断テスト(MBTI)に当てはめて、この子はE(外交的)っぽいなあと分析しながらやっています」

 「役柄になりきって、ドラマの世界に入り込んでいる時が本当に楽しい」と矢吹。今は、回を重ねれば重ねるほど、演技の面白さにハマっていると目を輝かす。

「昔から負けず嫌いで、自分は勉強することや挑戦することが好き。なので、『昔アイドルやってたの?』と思われるような、イメージとは真逆の役もやってみたいですし、アイドルだった経験を活かしながらも、イメージを変えていけたらと思っています。

 韓国から帰国したとき、今後の目標を書き出してみたら、やりたいことがいっぱい出てきました。アイドル時代は、しっかりしていなければいけないとかキレイな部分だけを見せなければいけないという意識が強くて、本当の自分が出せてなかった気がするのですが、今は、お芝居以外では一番素に近い自分でいたいと思っているので、今後は、いろいろな自分を見せていけたらと思っています」

取材・文/河上いつ子

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