iPhone 16シリーズが対応する「Wi-Fi 7」って何? 今までのWi-Fiとの違いをサクッとチェック!

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2024年09月20日 11:41  ITmedia Mobile

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iPhone 16シリーズはWi-Fi 7に初対応したのに、特に触れられていないんですよね……

 まもなく発売を迎えるiPhone 16シリーズ。Apple Intelligenceへの対応や「カメラコントロール」の新設などに注目が集まっていますが、その陰で見過ごされている新要素があります。「Wi-Fi 7」です。


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 iPhone 16シリーズは、Apple製品としては初めてWi-Fi 7をサポートするデバイス……なのですが、そもそもWi-Fi 7って何なのでしょうか……?


●そもそも「Wi-Fi 7」とは?


 Wi-Fi 7は、米IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が策定を進めている無線LAN規格「IEEE 802.11be」に対するプロモーション名です。


 IEEEでは、無線LAN規格を「IEEE 802.11シリーズ」の下に策定/管理しています。規格のうち、接続に関わるものを世代順に並べると以下の通りになります(括弧内は対応する無線周波数帯)。


・第1世代:IEEE 802.11/IEEE 802.11b(2.4GHz帯)


・第2世代:IEEE 802.11a(5GHz帯)


・第3世代:IEEE 802.11g(2.4GHz帯)


・第4世代:IEEE 802.11n(2.4GHz帯/5GHz帯)


・第5世代:IEEE 802.11ac(5GHz帯)


・第6世代:IEEE 802.11ax(2.4GHz帯/5GHz帯/6GHz帯)


・第7世代:IEEE 802.11be(2.4GHz帯/5GHz帯/6GHz帯:暫定規格)


 無線LANに詳しい人ならさておき、多くの人は名前だけではどちらの方が新しい(古い)規格なのか直感的に分からないという課題があります。


 そこで同シリーズの無線LANデバイスの普及/認証を行う団体「Wi-Fi Alliance」は、第4世代に相当するIEEE 802.11n以降の規格について名称の簡略化(プロモーション名の導入)を行うことにしました。具体的には以下のような感じです。


・第4世代:Wi-Fi 4(=IEEE 802.11n)


・第5世代:Wi-Fi 5(=IEEE 802.11ac)


・第6世代:Wi-Fi 6/Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax:※1)


・第7世代:Wi-Fi 7(=IEEE 802.11be)


(※1)6GHz帯に対応するものが「Wi-Fi 6E」、非対応のものが「Wi-Fi 6」となります(規格策定当初、6GHz帯は無線LANで利用できなかったため区別する必要があった)


 Wi-Fi 7ことIEEE 802.11beは、先代規格であるWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)と同様に2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯での通信に対応する一方、6GHz帯で利用できる周波数の幅が2倍に拡大されるなど、より高速かつ高品質に通信できるようにする仕組みが取り入れられています。


 日本では2023年12月22日に、6GHz帯で利用できる周波数の幅を広げるのに必要な総務省令(技術基準と無線設備規則)の改正が行われたことでWi-Fi 7の利用が“合法化”されました。


 これに伴い、2024年に入るとWi-Fi 7対応の無線LANルーター、ノートPCやAndroidスマートフォンなどが日本でも発売されるようになりました。直近ではGoogleの「Pixel 9シリーズ」がWi-Fi 7対応でリリースされています。


 ただし、現状のWi-Fi 7は「暫定規格(Draft)」で、近いうちに正式規格とする手続きが始まる見通しです。現状で発売されているWi-Fi 7対応機器は暫定規格に基づくものということになりますが、ほぼ全てが大幅な仕様変更を行えない段階(※2)を過ぎてから製品化されているので、正式規格と差分が生じてもソフトウェア更新で対応可能です。


(※2)Recirculation Ballot(投票の再実施)


●Wi-Fi 7はWi-Fi 6/6Eと何が違う?


 Wi-Fi 7は、Wi-Fi 6/6Eをさらに改良した規格で、理論上の最高通信速度向上だけでなく、電波の弱い場所や接続機器が多い環境での実効通信速度(スループット)の改善を図るための仕組みが取り入れられています。主な仕組みとしては、以下のものがあります。


・最大320MHz幅での通信


・Wi-Fi 6/6Eにおける「最大160MHz」から2倍に


・6GHz帯の通信で利用可能


「Multi-Link Operation(MLO)」のサポート


・「同時(MLMR/Multi Link Multi Radio)モード」では、複数の周波数帯の電波を束ねて通信することで実効通信速度を向上できる


・携帯電話の「キャリアアグリゲーション(CA)」と同等技術となる


「切り替え(MLSR/Multi Link Single Radio)モード」では、シームレスに複数の周波数帯の電波を切り替えることで遅延を抑制可能


QAM(直交位相振幅変調)を高度化


・IEEE 802.11axの「1024QAM」から、4倍の「4096QAM」に


・同一条件下における理論上の通信速度を最大20%向上できる


「512 Compressed Block ACK」を採用


・「Block ACK」は、無線通信を正常に行ったことを告知する「ACK(アクノレッジメント)」信号をひとまとめ(ブロック)にして送る仕組み


・ACK信号を圧縮して伝送することで無駄な通信(オーバーヘッド)が削減され、実効通信速度が改善される


「Multiple-RU」の導入


・「Resource Unit(RU)」は、クライアント1台1台に割り当てる電波帯域幅を調整する機能で、Wi-Fi 6/Wi-Fi 6Eで初導入された


・Multiple-RUは、1ユーザーに複数のRUを割り当てられる仕組みで、RUとRUの間にできる「すき間」も利用可能


・RUを無駄なく使うことで実効通信速度を改善可能


 ただし、上記の機能改善はアクセスポイント(Wi-Fiルーター)とクライアント機器(スマートフォンやPC)の双方が対応していると初めて効果が出ます。これは従来の無線LAN規格でも通ってきた道です。


 また、「Wi-Fi 7対応」だからといって上記の全てに対応するとは限らないことにも注意が必要です。規格上は「QAMの高度化」への対応は必須ですが、「MLO」や「320MHz幅の通信」への対応はオプション扱い(実装しなくても構わない)とされています。


 iPhone 16シリーズやPixel 9シリーズはWi-Fi 7に対応をうたっているものの、仕様書上はアンテナが2x2 MIMOに対応していること以外の詳細仕様は分かりません。先述の通り、少なくともQAMの高度化には対応しているので、(理論上)同じ条件であればWi-Fi 6/6Eの最大1.2倍の速度で通信可能ということだけは分かります。アクセスポイントはもちろんですが、スマホを始めとするクライアント機器も、もうちょっと無線LAN回りの仕様を詳しく書いてほしいですよね……。


 ともあれ、Wi-FiルーターをWi-Fi 7対応品に買い換えるとiPhone 16シリーズならより快適な通信を行えることは間違いありません。AndroidスマホではハイエンドモデルからWi-Fi 7対応が進んでいますし、PC本体でもノートPCを中心にWi-Fi 7対応モデルが増えてきています。


 お財布との相談にはなりますが、これから無線LAN対応機器を買うなら「Wi-Fi 7対応」を選ぶポイントに据えてもいいのかもしれません。



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