藤ヶ谷太輔、運命の出会いと初めての衝動「自分で動かないといけないときがある」【インタビュー】

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2024年09月24日 07:00  ORICON NEWS

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『傲慢と善良』(9月27日公開)に主演する藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2) 撮影:山崎美津留 (C)ORICON NewS inc.
 Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔と俳優の奈緒がW主演する映画『傲慢と善良』(9月27日公開)。2019年刊行の辻村深月氏の人気小説を実写化するにあたり、自ら関係者にアプローチをかけたという藤ヶ谷が原作との“運命の出会い”について、そして辻村氏も太鼓判を押した役作りを合同インタビューで振り返った。

【写真】撮影の合間に真剣な眼差しをみせる藤ヶ谷太輔

 主人公の西澤架(藤ヶ谷)と坂庭真実(奈緒)はマッチングアプリで出会い婚約するもその直後、真実が突然失踪してしまう。彼女を捜すうち、架は真実の“知りたくなかった過去と嘘”に向き合うことになる。すべてをさらけ出した2人がたどり着く“一生に一度の選択”を描く感動の恋愛ミステリー。

 映画化が決まる前から原作に惚れ込んだ藤ヶ谷は「もし映画化するなら絶対に架を演じたい。叶わなければ一生後悔する」と、自ら原作の関係者にアプローチし、念願叶って出演が決定。スマートなのに、鈍感でそこがまた愛らしく、どこか憎めないところもある。そんな原作の“架”らしさがリアリティをもって体現されている。

■30歳を超えてから肩の力が抜けた「周りにどう思われているかは気にしない」

――主演発表の際、藤ヶ谷さんが今作を“自分自身の物語”とおっしゃっていましたが、それが意味することはなんなのでしょうか。

振り返ると24歳でデビューしてこの世界に飛び込み、『あなたはこうあったほうがいい』『こういう仕事をしたほうがいい』と言われることが増えました。架も何不自由なく生きていながら『あの子はもったいない』『もっといい子がいる』と言われ続けて、なんとなく“昔からの友人が言うならきっとそうだ”“みんな自分のために言ってくれるんだ”と思っている。自分自身も他人に“こうであったほうがい”と言われることで自然に自分を「作ってもらった」という言い方もできるし「作られていた」という言い方もできる。その感覚に共感しました。恋愛観とか、僕も人に値段をつけるタイプだから、とかではないです(笑)。僕は仕事柄、誰かと雑誌で表紙を飾る機会だったり共演者だったり“釣り合う”“釣り合わない”はよく耳にしてきたけれど、なにをもって釣り合わないのか。自分と釣り合うとはなんなのか、考えることがよくありました。

――人から見られる仕事だからこそ「人からどう見られるか」ということに敏感だったんでしょうか。

敏感というか、そういう世界にいたな、と感じました。30歳までカッコつけのキャラで覚えてもらうことが大事だと思っていたけど、30歳を過ぎてから肩の力を抜いてやるようになったし、周りにどう思われているかは気にしない。エゴサーチもしないです。ただこの小説は“釣り合う”とか“選ぶ”ってなんだろうというデビューした頃に感じていた気持ちをドンピシャで言語化してくれていた。点数や値段ってなにを基準にしているんだろう。でも洋服もそうですが白T1枚でも1000円のものもあれば10万円のものもある。そう考えると面白いな、とか考えました。

――自分の内面を見つめ直すことができる作品だったんですね。

でも決してネガティブなことはなく悩んでいたこともなく…それを言語化できる人がいるんだって思いました。

■架役のこだわりは「優しさと鈍感さのバランス」原作・辻村深月氏の言葉に安堵

――辻村先生は『架がいた』というほど、藤ヶ谷さんの架に太鼓判を押していましたが、撮影にあたってなにか準備はされましたか。

とにかく原作を何度も読み返し、脚本も何度も読んだし、奈緒ちゃんと監督と話し合いました。もちろん、作品の話から入るけど自然にお互いの恋愛観や結婚観、人間関係を結構しゃべってしまった。実はどこまで話したかも覚えていないんです。監督の奥さんとの出会いも聞きましたし、お子さんができたときの気持ちも『聞かせてくださいよ』じゃなくて『オレの場合はさ…』と。作品をきっかけに、誰かとしゃべりたくなるんですよね。

――オリジナルの展開もありますが、その原作にない部分はどのように捉えましたか。

そこは僕も原作が好きだからこそ、原作どおりにやりたいと思ったりもしましたが、だったらあの小説を頭から最後までやったほうがいい。でもそうなると十何時間もかかってしまう。映画には映画の良さがあるし、映像美やセリフの良さもある。気になって辻村さんにお話をうかがったら『「ここは私の原作と違う」とはまったく思わなかったです。後から「あ、違ったな」と思うくらい』だと。僕も監督に『原作のこの空気感の部分は残したいですよね』と伝えて、ロケ場所や仕事が違うとかはあるけど、作品の香り、伝えたいことは『一緒でした』と辻村さんにおっしゃっていただけて安心しました。

――原作から違和感のない空気感を作る上で、ご自身が架を演じながら大切にしたところはなんでしょうか。

優しさと鈍感さのバランス。試写を観た女性に意見を聞くと『いや架、そこは違うよ』と思うことが多々あるらしいんです。でも男性からしたら『言ってくれなきゃわからないよ』ってなるじゃないですか。女性は“察してよ”。男性は“言ってよ”。その感覚を大事にしました。意識しないことを意識していました。あと、奈緒ちゃんに責められたのは『プレゼントのネックレスの箱が結婚指輪みたいな箱』。パカッと開けるタイプなんですけど、それを選ぶセンスはどうなっているの?って。ネックレスは長い箱にしてほしいよねって言われて…箱を用意したのは俺じゃないんだけど…(笑)。指輪みたいに出すなって言われました(笑)

――藤ヶ谷さん的にはこの作品の架の行動は正しい、というか、違和感はあまりなかったのでしょうか。

台本を読んでいたら、ふかんで『ここがダメなんでしょ』と思えるけれど、実際に架の立場となってリアルタイムで行動したら、どうなのだろう…。でも『キスブサ』(『キスマイBUSAIKU!?』)とかもやっていたしね(笑)。でもそれは芸能人だからで、もし年齢も若くて、この仕事をまったくやってなくて…結婚はしたいけど今よりも仕事が落ち着いたら、とかいろんなタイミングがある。架の行動が正解・不正解はわからないけど、最初の打ち合わせでも、架が真実につけた「70点」という点数は男性的には高いけど、女性的には低い。「70点なら0点のがいい」とか。逆の立場の場合、架が70点とつけられたら『結構高いな』と思うんです。その違いがあるんですよね。

――みんなが時計を見るくだりはリアルだなと思いました。値踏みしているというか。

あれって女性は本当にあるのかな?『あ、ロレックスつけてる』とか(笑)。でも、ロレックス買えるってことは収入が想像できたりアップルウォッチだからダメってことじゃなくて大きくプラスになる。よくあるのは『この前迎えに来たら軽(自動車)でさ』みたいな。そういう目線の中で育っているし、架みたいな人っていっぱいいると思います。

――架は東京を象徴するようなキャラクターで、逆に地方に住む宮崎美子さん演じる真実の母親からは東京ではもてはやされていたのに自営業というだけでものすごく嫌われている。

あれもすごいですよね(笑)。『自営業の人はやめなさい』とか…これがリアルですよね。恋愛だけでない、家族間の温度差、東京と地方の温度差もそうだし、人生に必要なものが散りばめられている小説だった。ただ恋愛でキュンキュンするだけでなく自己啓発というかすごいものを読んだなと思います。映画ももちろん観ていただきたいし、映画を観てちょっとでも興味がわいたら、僕はなんの参加もしていないけど小説を買ってほしいです!宣伝隊長になります(笑)

――今作は“マッチングアプリ”を題材にされていて、藤ヶ谷さん自身その点でなにか感じたことはありますか。

当時は今みたいにスタンダードというよりは、いかがわしいというか出会い系というと危険なんじゃないかという雰囲気があった。実際に出会って結婚して幸せになっていらっしゃる方もいるし、そこが大きく変わってきましたよね。きっと架からしたら学生から知っている女友達にはダサいことも見せられる。でもマッチングアプリって、キャリアや年齢を重ねて結婚を前提に会うとなったときにどうしても、背伸びした状態、ちゃんとしていないといけない、マイナスポイントを見せる必要性がないと感じていたと思うんです。そこが真実には伝わらないし、真実も真実で背伸びをしている。自然体ではない。

――2人ともつくろってますよね。

でも、デートってなったら『なに着よう?』『なにつけよう?』とか普段、身につけていないものを身につけたり…そんなもんじゃないですかね。

■「自分で動かないといけないときがある」後悔しないために能動的に手を挙げた

――原作の魅力に惹(ひ)かれ、ずっと前から周囲に薦められていた

はい、ずっと前から。いやらしい気持ちは1ミリもなくてあのとき、ただ衝撃を受けたから。傲慢ですよね。とにかく周りの人に『読んで、読んで』と…自分で買ってわたしているわけじゃないんですけど(笑)。2023年1番売れた小説でしょ。すごいですよね。本屋に行くと売上げランキングにも、映画に決まる前からずっと入ってる!と思ってました。

――時代が追いついてきた感じもあるのでしょうか。

さっき奈緒さんとも話していたのが『傲慢と善良』って画数が多いから、難しい恋愛モノだと思う方もいらっしゃるのではないか。でもまったくそんなこともないし、試写で観ていただくと20代前半の人がボロ泣きしていると聞きました。この本に出会ったのは20代で、刺さるものがあった。特にSNS世代だと、本当の自分と『いいね』をもらいにいく自分の違いってどうなんだろう、本当に行きたいところはどこなんだろうって。そういう時代に育っているから悪いとかでなくて、そこで生き抜くことも大切だけどどこか疲れるところもあるのかな。恋愛だけでなく“選択”しなくてはいけないことも映画の中に詰まっているので多くの人に刺さるんじゃないかな。

――自分で本質を見極め、選択をすることの大切さが描かれています。藤ヶ谷さんが大きな決断、選択をした経験はありますか。

『傲慢と善良』でいえば、発売当初からこの本が好きで、とにかくこの小説が面白いと、周囲に薦めていました。辻村さんの小説は割とすぐに実写化されるものが多いし、スピードがどんどん早くなる。『A-Studio+』でいろいろ取材をさせてもらったら、どうやら俳優さんはもう自分で動いているんだなと。待ちの姿勢で『来たらいいな』ではなく自分で企画書を持っていったり、自分でチームを組んだりしていると知りました。ひと昔前は自分から動く人はいなかった。むしろそうすれば格が下がるというか。でも(他の俳優さんは)自分から動いているっぽいぞ、と。それもあっていろいろとスピーディーになっているんだなと思ったときに、もし他の人が演じてしまったら後悔するくらい自分がやりたいものはなんだろう。そういえば「『傲慢と善良』って、なにも映像化・舞台化もされてないな」と思いつき、『僕がこれをやりたいです!』と伝えました。事務所内だけでなく外に向けて意志を見せたことは初めてでした。

――この経験を踏まえ、今後もやりたいことがあったら動かなきゃいけないという気持ちになりましたか。

動かなきゃいけないし、今まではありがたいことに待ちの姿勢でもお仕事をいただけたことが多かった。それが良い・悪いではなくて自分で動かないといけないときがあるんだな、と思います。いろいろなタイミングやご縁があってではありますが、その一発目の作品になりました。

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