あの『ドミノ・ピザ』が80店舗閉店! "宅配ピザ"という文化は終わったのか!?

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2024年09月24日 07:10  週プレNEWS

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最大80店舗の閉店を決定したというドミノ・ピザ

宅配ピザ業界が苦境に立たされているような数字が相次いでニュースになっている。実際のところはどうなのか? 飲食業界に詳しい専門家に分析を加えてもらった。

【表】ピザ宅配主要チェーン店舗数推移(2023〜2024年)

■閉店ラッシュの数字もよく見ると

ドミノ・ピザが最大80店舗の閉店を決定したという「閉店ドミノ」なるニュースが流れた。やはり宅配ピザ業界は今、苦境に立たされているのか。外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏はこう語る。

「いや、ドミノ・ピザの閉店はコロナ禍バブルの過剰投資の整理というだけでしょう。ドミノ・ピザは、コロナ禍前はおよそ600店舗くらいでしたが、1.67倍まで伸ばし、昨年1000を超える店舗数になりました。

この店舗数はアメリカに次ぐ数で世界的にもかなり多い。そのうちの80店舗の見直しで、撤退しても900店舗は残っているので、店舗数自体はコロナ禍前の実質1.5倍になっています」

経営コンサルタントの岩崎剛幸氏も続ける。

「宅配ピザ店の倒産が2023年に過去最多になったとのニュースもありましたが、過去最多とはいいつつも、年間で13件。前年は年間6件で、確かに2倍以上にはなっていますが、宅配ピザ店って小さなお店も入れると全国に3000店舗くらいあるんです。その数を考えれば、割合的にはかなり少ない。

そもそも、ピザ自体がデリバリーサービスにおける人気のトップです。店舗数もかなり多いので、倒産件数が多く見えるのは仕方ないことかなと思います」

あれ。いきなり前提だった「苦境」とは反対の答えが返ってきた。ウーバーイーツや出前館などのデリバリーサービスの進出で選択肢が増え、宅配ピザは下火なのでは?

堀部氏はこう答える。

「むしろ出前館が苦境で、直近第1四半期での売り上げは93%。オーダー数も1年前に比べて90%。そして、ユーザーも27%減っているんです。これは経営側からしたら震えるような落ち込みです。コロナ禍で、赤字でも広告宣伝を費やして、ユーザーを増やしたのが裏目に出て厳しくなっているというところです。

一方、宅配ピザがそこまで落ち込んでいないのは、顧客名簿を持っていることが大きいんです。例えば、デジタル中心のユーザーには個別にメールでクーポンを送ったりもできますし、地方エリアには誕生日やお盆などにはがきを送ったりと販促を打てるんです。

ウーバーイーツや出前館は、参入する飲食店にとっては作るだけになるので、顧客情報を何も得られない。客側も『○○店』で頼んだという意識よりは、『ウーバーで中華を頼んだ』みたいな認識なので、店舗のブランド認知性が低い。

だけど、宅配ピザ専門店はドミノ・ピザやピザハットで頼んだという意識がある。ブランド認知性がある上で、顧客名簿も持っているので、利用頻度を活性化することができるんです」

■宅配ピザは地方に強い

岩崎氏からはこんな話も。

「宅配ピザは地方ではかなり重要なポジションを占めています。

全国のピザ宅配チェーンのベスト10をまとめてみたのですが、10社中7社は地方の企業。店舗数2位のピザハットは本社こそ神奈川にありますが、九州のヤマエグループホールディングスという食関係の商社に買収されました。

この会社は物流なども手がけ、これから1兆円規模の企業にしていこうというときに買収しました。つまり、ピザハットがダメになったからではなく、プラスに使おうという考えでのことです。ピザハットはこの買収をきっかけに九州の出店が増えそうです。

また、4位のナポリの窯は宮城の会社。普通の宅配ピザよりも質が高く高級なピザの提供をコンセプトにしており、グループに10位のストロベリーコーンズがあります。

その、ナポリの窯とストロベリーコーンズを運営している会社が関西を拠点にしていて、自己破産したシカゴピザを一部買収したんですね。ナポリの窯とかぶっていない西のほうの店舗を自分のグループに入れています。

5位はピザテンフォーで、ここは北海道を拠点とするチェーンです。北海道で絶大な人気を誇っているので、めちゃくちゃ店舗数が増えているわけじゃないけれど、減ってもいないという安定しているお店です。

6位のピザポケットは福岡、7位のピザ・ロイヤルハットは徳島、9位のアオキーズ・ピザは愛知、そして10位がストロベリーコーンズといった順位になっています。このように各地方で地元に強い宅配ピザチェーンが根づいているんです」

堀部氏が続ける。

「都心型の宅配ピザの場合は『今日はひとりでピザとって食べたいな』とか『友達が来るけど外食がめんどくさいから』とか日常に溶け込んでいる場合が多いですが、地方都市は日常よりハレの需要で使われることが多いです。

誕生日や法事、クリスマスや正月など、イベントごとに合わせた商品企画や販促を企画しています。地方においてはハレの日の需要における食のインフラになっていることは間違いなく、誕生日クーポンを送っても都心は1%も返ってこないのに対して、地方は10%も返ってきたりするそうです」

■大手が狙っている戦略とは!?

では、そんな中で大手3社が打ち出している戦略や特徴があれば教えてください。

「ドミノ・ピザは戦略が強み。ランチとディナーと深夜、時間帯別のマーチャンダイジングに力を入れているんです。ランチはドリンクを一緒に売る。ディナーはピザ以外のメニューを一緒に頼めるようにするなど、それぞれの時間帯でピザを浸透させていく戦略を考えています。

また、デリバリーに加え、テイクアウトにも力を入れていて、店舗に来てもらうことに重きを置いています。人材が減ってきているので、すべてデリバリーでやろうとすると回らなくなってしまう。注文が少ないときでも売り上げを増やす策ですね。

ピザハットは先ほども述べたように福岡の食のグループ企業になったので、今後は九州の食材を使うとか、九州で店舗を増やすとか、そういう九州のグループとしての動き方を強化してくるのではないかと予想しています。

ピザーラは期間限定メニュー開発にすごく力を入れています。1年を3シーズンで割っているのですが、11〜2月が冬、3〜5月が春、6〜10月が夏というふうにシーズンごとに期間限定で3〜6種類ピザを出していて、その期間限定ピザがいつも売り上げ上位にいるそうです。

期間限定商品をどれだけ売るか。ということにこだわっていて、新しい商品を出す戦略をとっています。シーズンに合わせたメニューだから、消費者も頼みたくなりますよね。CMとメニューと客の購買動機がつながってくる。ピザーラはそれを上手にやっています」(岩崎氏)

B級グルメ評論家の中川哲司氏が続ける。

「ドミノ・ピザやピザハットはひとり客の需要に合わせた『ピザBENTO』や『MYBOX』なる商品を展開しています。価格が1000円を切るものもあり、以前のように『宅配ピザは高く、大人数で食べるもの』というイメージを覆そうという姿勢が見られます。

また、ドミノ・ピザでは『ピザライスボウル』、ピザーラでは『パエリア』など、米を使った商品があるのも面白い。宅配ピザのメニューの多様性が感じられます」

■コンビニやスーパーのピザとのすみ分け

さて、少し話が変わり、最近ニュースになったのは、セブン−イレブンが即時配送サービスの7NOWでピザの宅配を始めたということ。どういう狙いがあるのか? 岩崎氏が答えてくれた。

「店舗だけの売り上げでいえばセブン−イレブンはコンビニ業界で1位ですが、店内売り上げを高めるのはこれ以上難しくなってきている。なので、お客さんが自宅にいながら買い物ができるようなサポートをして、店外売り上げを高めようとしています。

その導入としてピザを用意したということです。ピザはあらゆる世代に受け入れられ、デリバリーでも人気トップ。また、デリバリーやレストランなど含めたピザ自体の市場規模も確実に伸びているからだと考えられます。

ただ、あまりメニュー数を増やすと大変だから2アイテムに限定し、まずは一部店舗で実施。そこでやはり、しっかり人気があったので今は200店舗くらいに拡大して、このまま調子が良ければ全店舗に展開していきそうな勢いがあります。僕も食べましたが、すごくおいしいです」

最近はスーパーのピザも人気ですが、宅配ピザがその影響で押されたりしないでしょうか?

「結局、ピザという大きい市場の中でデリバリーが何%を占めているかという話で、その市場規模が大きくなったほうが宅配ピザにとってもメリットになります。デリバリーと今日の夕飯を考える思考はまったく違うので、食い合わないと思います。

実際、コンビニでおいしい冷凍のマルゲリータが出てきても、その影響で宅配ピザの売り上げが下がったとは聞かないので、すみ分けができているのではないかと考えます」(堀部氏)

最後に、宅配ピザ業界の展望を堀部氏が答えてくれた。

「数年間は不採算店の撤退が続くので『何%減! 何%減!』というようなニュースが続くでしょう。それが終わった後、コロナ前より少し市場規模は伸びたよねというところに着地するんじゃないかなと思います。決して悲観的な業界ではないと思いますよ」

取材/渡辺ありさ 写真/時事通信社

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