生活保護を受けながらも大切なペットと共に暮らす方にとって、病気や怪我が発生した際の医療費は大きな不安材料です。ペット保険に加入して備えることは可能なのか、また支給された保険金が生活保護費にどう影響するのか。生活保護とペット保険に関する重要なポイントについて、弁護士法人SACI・四条烏丸法律事務所の石井一旭弁護士が解説します。
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▽1 生活保護期間中のペット飼育
憲法25条は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しており、この原理は当然、生活保護を受けている人にも当てはまります。そこで、生活保護受給下にどのような物品の保有が認められるかは、社会通念にしたがって判断されるものとされています。
ペット飼育が広く普及し、ペットが家族の一員としての地位を確立するようになった現代においては、社会通念に照らすならば保有(飼育)を認めてよいと判断される場合が多いと考えてよいでしょう。ただし、生活保護制度との兼ね合いから、ペットショップなどで高額な犬猫を購入したり、家計を圧迫するような数・種類のペットを飼育することは認められないと思われます。
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▽2 ペット医療保険への加入
生活保護費をやりくりして貯めておくことは、「その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については、活用すべき資産には当たらないものとして、保有を容認して差し支えない」ものとされています。
このルールから考えれば、支給された生活保護費をうまくやりくりしてペット医療保険に加入することも可能であると考えられます。
まずペットの飼育自体は、行き過ぎた態様でなければ、1で述べたように、生活保護制度の趣旨に反するものではないでしょう。
また、ペット医療の保険料は、犬の場合は年齢と体重もしくは犬種によって決まるのが一般的で、猫の場合は年齢のみで決まることが一般的ですが、幼年のうちに加入するのであれば月額二千円程度にとどまるなどそこまで高額なものではありません。それに、ペット医療保険未加入の場合はペットが病気になった場合の治療費を生活保護費から捻出しなければならないことを考えると、ペット医療保険加入はそのようなやむを得ない(そしていずれは避けられない)支出に備えて貯蓄していると捉えることもできそうです。
▽3 ペット医療保険支給時の問題
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ペット医療保険による治療費の支払いには、窓口精算と後日精算の2つのやり方があります。
窓口精算では、飼い主は自己負担分だけを動物病院に支払えばよく、保険対象分については動物病院が保険会社から支払いを受けることになります。
他方、後日精算は、一旦飼い主が治療費の全額を支払い、後日、保険会社に請求して保険金を支払ってもらう、という仕組みになります。この時、保険会社から生活保護受給者に対して支給されたペット医療保険金が収入認定される可能性があります。
しかし、窓口精算と後日精算というペット医療保険の支払い方法の違いによって生活保護費の取り扱いが変わるというのはおかしな話ですし、厚労省も、保有を認められた保険において支給された保険金については、使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない場合については、収入認定の除外対象として取り扱う、としています。
ペットの飼育自体が禁止されていないこと、もともと生活保護費から捻出して保険料を支払っていたことを踏まえれば、後日清算による保険料の支給も使用目的が生活保護の趣旨に反しないものとして収入認定から除外されると考えるべきでしょう。
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◆石井 一旭(いしい・かずあき)弁護士法人SACI・四条烏丸法律事務所パートナー弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。
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