三谷幸喜監督、フィンランドの観客の笑い声に安堵「本当に幸せな経験をしました」

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2024年09月26日 05:00  ORICON NEWS

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ドイツ人建築家のカール・ルードヴィヒ・エンゲルが設計したヘルシンキ大聖堂を訪れた映画『スオミの話をしよう』の三谷幸喜監督
 脚本家・演出家・映画監督の三谷幸喜が、脚本・監督を手がけた映画『スオミの話をしよう』(英語タイトル:『ALL ABOUT SUOMI』)を携え、フィンランドで開催中の「第37回ヘルシンキ国際映画祭」に参加。現地時間24日夜に海外初上映となるインターナショナルプレミアを迎える前に、ヘルシンキの名所を訪問し、「初めて僕は、ヘルシンキの街を回って、歌詞に出てくる場所を見て、自分の目で確かめることができて、本当に幸せな経験をしました!」と余韻を噛みしていた。

【動画】ミュージカルシーンを交えた、魅惑の予告映像

 主演の長澤まさみが演じる主人公の名前“スオミ”は、フィンランド語で“フィンランド”という意味。三谷監督がBlu-rayを観ようと字幕の言語を選択する際、たまたま日本語や英語に交じって「suomi(=スオミ)」というワードを発見。「その時、すごくその言葉が印象に残って。日本人っぽくもあるけど、あまり聞いたことがない名前だなと。そこで主人公はスオミに決めました。正直、その時は、深い意味はなく、たまたま目についたというだけなんです(笑)。でもそこから彼女の設定が生まれていきました」と今作の主人公の名前や設定のきっかけとなったことを明かしている。さらには、映画のエンディングで、長澤演じるスオミが華麗に歌い踊り、出演者全員が参加したミュージカルシーンのナンバーが、フィンランドの首都である「ヘルシンキ」。

 そんなつながりからヘルシンキ国際映画祭アーティスティックディレクター・ペッカ・ラネヴァ氏の目に留まり、特別招待されるに至った。ペッカ氏は、今作について「『ALL ABOUT SUOMI』は愛されるべき5つの異なる顔を持つ女性を題材にした“Sparkling Comedy(スパークリングコメディ)”で、そこにはLove&Anarchy(愛と自由・何者にも支配されない)という映画祭のテーマとフィンランドそのものにつながるスパイスも散りばめられています」と招待した理由をコメントしている。

 三谷監督が作詞したミュージカルナンバー「ヘルシンキ」に出てくるヘルシンキの名所を訪問。”カウッパトリ(港近くにあるマーケット)“近くの“カタヤノッカ(静かな港湾地区)“から出ている船の上から、”ウスペンスキー大聖堂“を眺め、建築家のカール・ルードヴィヒ・エンゲル(※)が設計した“ヘルシンキ大聖堂”にも足を運んだ。

 ※カール・ルードヴィヒ・エンゲルは、19世紀のドイツ出身の建築家で、ヘルシンキ大聖堂などを設計した。

■ミュージカルナンバー「ヘルシンキ」の歌詞に爆笑

 上映劇場であるヘルシンキで一番古い映画館「Finnkino Maxim」(収容:159人)は、タイトルの“スオミ”が気になった日本映画に興味を持つフィンランド人やフィンランド在住の日本人で満席になった。上映チケットは売り出しから数時間で完売し、映画祭側が追加上映を設けるほど。

 上映前に三谷監督が「モイ!(やあ!)」とファンランド語であいさつすると会場からは大きな歓迎の拍手が起きた。さらに、フィンランド語で「こんにちは。三谷幸喜です。みなさん、私のフィンランド語がわかりますか?ごめんなさい。私は私のフィンランド語がわかりません」と続けると、会場は笑いに包まれた。

 「僕の一番新しい作品をこうして皆さまに観ていただけるのは本当に幸せだと思っております。タイトルは、『ALL ABOUT SUOMI』です。ただ、あんまりフィンランドのことは出てきません。スオミという日本人の女性の物語です。一応それだけ把握して観て下さい(会場笑)」と語った。

 その後、三谷監督も客席で鑑賞。上映中は5人の夫たちのコミカルなシーンはもちろん、「コスケンコルヴァ」というフィランドの伝統的な蒸留酒の名前が出てくると、大きな笑い声が上がった。最後のミュージカルシーンでは、「ヘルシンキ」に合わせ手拍子が起こり、歌詞にヘルシンキの名所が飛び出すと、さらに会場は爆笑の渦に。

 上映後にはティーチインも行われ、ファンとの交流を楽しんだ三谷監督。「正直、脚本を書いて映画を作っている時はそんなつもりはなかったんですが、出来上がってみると、今作ほどヘルシンキ国際映画祭にピッタリな作品はないなと思いました」と語って笑いを誘った。観客から「フィンランドに実際来てみていかがですか?」と質問されると、「すごく日本と似ているなと感じました。住んでいらっしゃる皆さんの温かさとやさしさ、少し控えめな所もあって、日本人と通じるものを感じました」と答えた。

 また、「コスケンコルヴァはお好きですか?」の質問に、「僕はお酒がほとんど飲めないですが、今日はこんな素敵な日になったので、コスケンコルヴァを初めて飲みたいと思いました。主人公の名前をスオミにして良かった!」とコメントすると、客席からは大きな拍手が起こり、温かな空気のまま、ティーチインは締めくくられた。

 鑑賞者からは「演劇的なところがあって、とても楽しかったです。歌(ミュージカルナンバー『ヘルシンキ』)を聞きながら、こんなに笑ったのは初めてです」「フィンランドのことを世界に知らせてくれてうれしい」「いろんな要素がある中で、面白さが一番伝わって楽しかった」といった感想を聞くことができた。

 三谷監督に改めて今回の映画祭について尋ねると「こちらの方に受け入れていただけるか、いただけないか僕はけっこう心配で…“ふざけんな!”とか言われたらこの映画を作った意味がない…!とさえ思っていたんですが、皆さん喜んでいただけて、ほっとしています」と安堵の表情。また、ヘルシンキならではの観客の反応として、「ミュージカルシーンで、瀬戸康史さんが建築家のカール・ルードヴィヒ・エンゲル(※)になって登場するシーンは盛り上がっていましたね。エンゲルすごいな…!と思いました」と、ご当地ならではの笑いに驚いていた。

■ヘルシンキ国際映画祭とは

 1988年に28本の上映から始まり、今年37回目の開催。今年の開催期間は9月19日〜29日で、130本の長編映画、100本の短編を上映するまでに規模を拡大している。

 コンペ部門はフィンランド映画のみだが、世界中で話題となった作品を一覧上映するノンコンペのラインナップに定評があり、今年の「第77回カンヌ国際映画祭」でパルムドールを受賞したショーン・ベイカーの『Anora』や話題を席巻したフランシス・フォード・コッポラの『Megalopolis』、2週間前に「第81回ベネチア国際映画祭」で金獅子賞を受賞したばかりのペドロ・アルモドバル初の英語長編映画『The Room Next Door』なども上映される。

 『スオミの話をしよう』はアジア映画のショーケース部門Asian Cutsで上映され、今年の映画祭のサブテーマ“Live, Laugh, Love & Anarchy”にフィットする“Sparkling Comedy(スパークリングコメディ)”の象徴として選出された。日本からはほかに、『君たちはどう生きるか』『Ryuichi Sakamoto | Opus』『悪は存在しない』が上映。

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