「今も愛している」スーパーGTとWECの共通項「同世代が減ってきて寂しい(笑)」【ロッテラー&マコウィッキ特別対談(2)】

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2024年10月07日 12:00  AUTOSPORT web

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9月15日に富士スピードウェイで行われたWEC第7戦。マコウィッキ/マット・キャンベル/ミカエル・クリステンセンの5号車ポルシェは、7号車トヨタと順位を争う場面も
 2024年のWEC世界耐久選手権も、最終戦・バーレーンでの8時間レースを残すのみ。ハイパーカークラスのタイトル争いでは、ドライバー、マニュファクチャラーともにポルシェがリードし、フェラーリとトヨタが追う展開となっている。

 ポルシェが高い安定性を見せているシーズンとも言えるが、今回はポルシェ・ペンスキー・モータースポーツから参戦する、日本に馴染み深いふたりの対談取材を行った。ご登場願ったのは、ポイントリーダーの6号車ポルシェ963のアンドレ・ロッテラー、そして僚友5号車のフレデリック・マコウィッキである。

 WECの現状を語ってくれた前編に続き、今回の後編ではかつてキャリアを重ねた日本のレースと、お互いの存在について話を聞いた。

■「本当に心配した」山本尚貴の事故

──日本で多くのレースを戦ってきたふたりにとって第7戦の舞台、富士スピードウェイは慣れ親しんだサーキットですね。

フレデリック・マコウィッキ:今回、富士に戻ってきて思ったのは、やはりここは自分にとってル・マンに次ぐ『第2のホーム』だということ。すべてが自然に感じられるし、何も気にすることなく快適に過ごすことができる。ファンの皆さんも温かく迎えてくれるし、本当にいい気分だよ。今回も昔のレース仲間が僕に会いに来てくれているし、レース後は彼らとお好み焼きを食べに行くんだ(笑)。

アンドレ・ロッテラー:僕にとっても富士は『第2の故郷』日本のサーキットだから、戻って来ることができて本当に嬉しいよ。多分、富士は世界中のどのサーキットよりも走り込んだコースだと思うし、多くの勝利をここであげてきた。

 日本には2003年、21歳の時に来て、御殿場には3年間住んでいたから自分にとって富士は特別な場所だ。常にウェルカムな雰囲気を感じるし、素晴らしい思い出が山ほどある。でも、残念ながらWECでは一度も勝ったことがないから、今回は何としても優勝したいよ(※この取材後、ロッテラーは富士で初優勝)。

マコウィッキ:僕は今でも日本のレースをすべて追っかけてるよ。特に、スーパーGTはやっぱり最高だ! 今の自分にとっては遠い場所でやっているレースだけど、今でも最高のチャンピオンシップだと思っている。常に素晴らしいアクションがあるし、GT500クラスとGT300クラスの混走も素晴らしい。

 昔チームメイトだった(山本)尚貴さんとも今でもときどき連絡をとっている。彼が去年SUGOで大きなアクシデントに遭った時は本当に心配したけど、回復して本当に良かった。チームメイトの牧野(任祐)選手も若くてとてもいいドライバーだし、彼らはいいコンビだね。

ロッテラー:僕も日本のレースはできる限りフォローしている。映像を見たりしてね。でも、日本を離れて随分経つから、最近はあまりよく知らない若いドライバーが増えているなぁ。僕と同世代の選手は徐々に少なくなってきていて、少し寂しいよ(笑)。それでも石浦(宏明)さん、山本さん、野尻(智紀)さん、大嶋(和也)さん、ベルトラン(・バゲット)はまだ頑張ってるね!

 僕がスーパーGTで学んだことは、WECやル・マンでもかなり活きていると思う。なぜならスーパーGTは耐久レースのようなものだから。1台のクルマをシェアし、セッティングを突き詰め、戦略をきちんと理解して走り、トラフィックをうまく切り抜けていく。それはWECでも何ら変わらない。

 また、スーパーフォーミュラでの経験は、主にスピードの面で大きなアドバンテージになった。WECで初めてのサーキットを走る時でも速さに不安を感じたことはなく、コースさえ覚えれば比較的簡単に適応することができた。だから、日本でスーパーGTとスーパーフォーミュラの両方に出場することは、WECにチャレンジする際にとても大きなプラスになると思うよ。

マコウィッキ:僕は、ル・マンにLMGTEで出た後日本に行き、スーパーGTに出るようになったけれど、GT500の速さには驚いたね。さっきも言ったように、やっぱり僕にとってスーパーGTは最高のレースだ。今でも愛しているよ!

■13歳の時から続く信頼関係

──それでは最後に、ヨーロッパでも日本でも、長年一緒にレースを戦ってきた相手の「いいところ」をいくつか挙げてください。

マコウィッキ:そうだね。アンドレはとても精神力が強く、オープンな性格でチームに良い雰囲気をもたらす真のチームプレイヤーだ。気持ちの面でも浮き沈みがなくて、とても信頼できる男だと思っている。

ロッテラー:いっぱい褒めてくれてありがとう(笑)。フレッドとは本当に長い付き合いなんだ。僕らは13歳の時にパルマ・サーキット(イタリア)で初めて出会い、カート時代から一緒に走ってきた。そして、フレッドの才能や、レースへのアプローチ、情熱をすごくリスペクトしている。クルマの技術的な面にも精通していて、ドライビングと同じくらいエンジニアリング能力も高い。そして何よりも、彼は常に笑顔を絶やさないナイスな男だ。だから、一緒にいて楽しいし仕事もしやすい。ドライバーの中にはそうじゃないヤツも多いけど(笑)、フレッドと僕は常に理解し合えていると思う。

マコウィッキ:お互い、相手が何を考えているか、今どんな気分なのか、話さなくても顔さえ見れば分かる。昔から今に至るまで、僕らは本当にいい関係でい続けることができていると思うよ。

■Profile
アンドレ・ロッテラー:1981年11月19日生まれ、ドイツ・デュイスブルク出身。欧州でステップアップ、ジャガーF1のテストドライバーも経験した後、2003年に来日。全日本GT選手権/スーパーGT、フォーミュラ・ニッポン/スーパーフォーミュラに参戦し、スーパーGT・GT500では2006年と2009年にタイトルを獲得。2011年にはフォーミュラ・ニッポンを制した。アウディから出場したル・マン24時間レースでは、2011、2012、2014年と3度総合優勝に輝いている。

フレデリック・マコウィッキ:1980年11月22日生まれ、フランス・アラス出身。欧州のGT選手権を中心にキャリアを重ね、2013年に来日してホンダHSV-010GTでスーパーGT・GT500クラスへ参戦。翌年からポルシェと契約するも、シーズン途中から再びGT500にエントリーした。2019年には三度来日、ニッサンGT-Rでフル参戦。WECには初年度の2012年からGTカテゴリーに参戦し、2022年にはル・マンで悲願のクラス優勝を果たす。2023年より、ポルシェ963のドライバーを務める。

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