農薬散布・長距離貨物輸送もできる大型ドローン開発メーカーPyka、米軍にも機体を納入

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2024年10月07日 18:00  Techable

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高解像度カメラ搭載やAIによるデータ解析技術、5G通信技術の導入などによって、ここ数年でドローン点検作業における精度と効率が大幅に向上。送電線や風力発電設備から橋梁などの大規模インフラ、建築物の外壁の調査・点検といった分野でドローンの導入が急速に進んでいる。
200キロ近い貨物を積載・運搬できる大型ドローン、米軍も注目小型で高性能なドローンの開発も進む中、用途に合わせて大型ドローンも登場してきた。この記事で解説するカリフォルニア州アラメダのスタートアップPykaの製品は、200キログラム近くの貨物を積載できる大型機である。

[caption id="attachment_246997" align="aligncenter" width="1080"] Image Credits:Pyka[/caption]大規模農場に農薬を広域散布するため、あるいは数百キロメートル先の目的地に貨物を緊急輸送するための完全自律型電動飛行機だ。フライトにかかるコストを大幅削減できるうえ、大規模な滑走路も必要なくなるとのこと。Pykaのドローン離陸に必要な滑走路の条件は幅8メートル・長さ250メートルだ。離陸までの滑走距離は、Sprayが最大積載状態で180メートル、Cargoが150メートルである。

9月23日、PykaはシリーズBラウンドで4,000万ドルを獲得した旨を発表。Obvious Venturesが主導したラウンドにはPiva Capital、Prelude Ventures、Metaplanet Holdings、Y Combinatorといった新規・既存投資家も参加している。

民間向けのみならず、今年初頭には米国空軍に機体(Sierra Nevada Companyと共同開発したPelican Cargoの改良型「RUMRUNNER」)を3機納入しているPyka。今回のシリーズBラウンドでの資金調達により、Pelican SprayとPelican Cargoの生産を拡大すると同時に、米国国防総省とその同盟国の物流を支援するシステムの開発を行うとしている。
設立から数か月でYC採択、従業員は6年で10倍に2017年2月設立のPykaは、「典型的なスタートアップ」らしく共同設立者兼CEOであるMichael Norcia氏の実家のガレージで事業を開始したという。しかし、同社のコンセプト機「Big Bird」にはガレージでは狭すぎたため、間もなくバックヤードに移動。

当初から大型ドローンにフォーカスしていた同社は、同年7月にY Combinatorの夏バッチ参加が決定。翌8月、YCデモの2週間前に400 ポンドUAV「Big Bird」の初飛行に成功した。わずか5人のチームで、Big Birdの設計・建造・飛行まで3か月で達成したという同社は、無事にYCに採択され300万ドルの資金を調達している。

[caption id="attachment_247035" align="aligncenter" width="800"] Image Credits:Pyka[/caption]その後はニュージーランド民間航空局などと共同開発を行ったり、本国に先駆けコスタリカやブラジルでドローンが導入されるなど国際的に活躍中だ。昨年は、排出ガスゼロ自律航空機の製造拡大のため、カリフォルニア州知事から700 万ドルの州税額控除を獲得したほか、アメリカでのPelican Spray商業運用認可を取得している。また、5人だった従業員は昨年8月に50人到達と、10倍に成長した。
高度な自律飛行を支える技術力Pykaの企業当初からの目的は、「世界で最も優れた自律飛行ドローンをイチから開発すること」だという。Pykaが展開するドローンは現在「Pelican Spray」および「Pelican Cargo」の2モデルで、いずれも4基の100kW出力モーターを持ち交換式の50kWhリチウム電池を搭載している。

高度な自律飛行技術を活用、有人飛行機ではパイロットの高度な技量が問われる夜間飛行も可能だ。ドローンに搭載されるのはPykaの独自フライトエンジン。2台の独立したコンピューターが備えるプロセッサ6点によって1秒につき数百万ものインプットを処理するという。こうしたインプットは、機体各所に設置されたLIDARやレーザー、IMUによって捕捉される。

[caption id="attachment_247044" align="aligncenter" width="1721"] Image Credits:Pyka[/caption]同社ドローンは最先端の3D航空マッピングと動的経路計画を活用、障害物の位置や回避方法を把握する。このシステムは、最も複雑で困難な飛行環境を想定した3,000回以上のミッション飛行によって検証されている。
農薬噴射用無人機「Pelican Spray」農薬噴射用無人機であるPelican Sprayは無駄のない農薬散布を実現、農薬使用量を最大15%削減可能とされるモデル。可変速度電動ロータリー噴霧器と高速遠心電動ポンプが、散布中常に流量と液滴サイズを調整して搭載により、散布効率と精度を最適化するという。

農薬散布ドローンは、農薬散布飛行機の死亡事故発生を防止する効果ももたらす。National Transportation Safety Board (NTSB)の報告によると、アメリカでは2020年に農業分野での飛行機事故が54件発生、13人が命を落としている。

Pelican Sprayは翼幅11.5 メートル、機体全長6メートル。重量はバッテリー搭載時の空荷時で316キログラム、ペイロードが281キログラム、総重量が599キログラムだ。飛行速度は時速60〜70ノットで時速約110〜130キロメートルに相当する。
貨物用無人機「Pelican Cargo」貨物航空機「Pelican Cargo」も完全自律飛行エンジンを搭載、地上パイロットが1人いれば180メートル下の滑走路からプログラムできるという。衛星リンクによって動的な経路変更が可能で、最大積載時で320キロメートル先まで飛行させることができる。
[caption id="attachment_246995" align="aligncenter" width="1392"] Image Credits:Pyka[/caption]翼幅11.5メートル、機体全長6.8メートル、重量はバッテリー搭載時の空荷時で454キログラム、最大離陸・着陸重量は共に635キログラムとなっている。巡航飛行速度は時速60〜70ノット、最大積載量は181キログラム、貨物容積は1.98立方メートル。なお、Cargoのスペック表によると、砂利や土、芝生といった、舗装路以外の滑走路にも対応するとのことだ。


参照:Pyka

(文・澤田 真一)

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