サニブラウン異色の合宿&大会開催 自費で招待1泊2日「決勝マスト」東京世界陸上にも意欲

0

2024年10月08日 05:01  日刊スポーツ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊スポーツ

5日、「みんなでつなごうリレーフェスティバル2024」に参加した陸上男子短距離のサニブラウン

陸上男子100メートルの世界選手権2大会連続ファイナリスト、今夏パリ五輪日本代表のサニブラウン・ハキーム(25=東レ)が7日までに単独インタビューに応じた。


今週末の12、13日に主催する異色の「合宿」と「大会」で、次世代のアスリート育成や競技普及に着手。自己最速9秒96をマークしながら無念の準決勝敗退に終わったパリ大会を初めて振り返り、来年9月に東京で34年ぶりに開催される世界選手権へ、リベンジの覚悟を示した。【取材・構成=木下淳、藤塚大輔】


  ◇  ◇  ◇


8月のパリ五輪、日本勢初出場の快挙を遂げた9月のダイヤモンドリーグ(DL)ファイナルを終えたサニブラウンが、つかの間のオフも育成・普及に走る。


◆トレーニングキャンプ(12、13日) 期待の中高生、男女10人と1泊2日で交流する。若手を刺激し、陸上界を活性化し、底上げを図る企画を実現させた。


「昔、自分も発掘してくれた『測定合宿』を提供したくて。計測、栄養学、引退された朝原宣治さんたちの指導など受けたんですけど、それを現役の自分がやりたいなと。技術、メンタルを伝えるだけでなく、選手同士、横のつながりができて刺激し合える。子供たちにチャンスをあげたい」


本場米国で学ぶ最先端の練習法を伝授し、全員と「1オン1」で個別ミーティング。3食までともにする異色の試みで、宿泊費など全て自己負担で還元する。


「もし自分の時にあれば聞きたいことがあったし、最前線でやっているからこそ答えられることもある。アメリカでやっていることも隠すことなく教えたい」


◆DAWN GAMES(ドーンゲームス)決勝大会(13日) 「夜明け」の願いを込めた短距離特化レースを、所属する東レの協賛で主催。予選を勝ち抜いた小中高生が100メートル中心の最速決定戦で高め合う。


「陸上が部活の延長という概念を壊したくて。ゆくゆくは全国規模にして誰でも出られる大会にしたい。自分も、東京都の小さな大会から始まって今がある」


日本を東西に分けた予選(6月)はパリ五輪の直前で参加できなかったが、東京・調布市のAGFフィールドで行う決勝大会には参加する。男子走り幅跳びの橋岡優輝(25=富士通)らと特別クリニックも行う。


「予選は全て映像で見ました。堅苦しいのは嫌なので決勝も同様に楽しんでほしい。橋岡も日本を引っ張る存在。いろいろ吸収してほしいし、いずれは優勝者たちを自分の米国拠点に招いたり発展させられれば」


前日の合宿参加者も招待出場することが決定。予選を突破したスプリンターとの勝負でレベルを上げる。


◇  ◇  ◇  ◇ 


◆DAWN GAMES FINAL Powered by TORAY サニブラウンが日本の陸上界を世界水準に引き上げたい思いで、マネジメント事務所UDN SPORTSと新設した大会。グローバルパートナー東レの協賛を受けた。東西日本の予選を勝ち抜いた小中高の男女と特別参加者が最速を競う。


橋岡やスポーツトレーナー名和大輔氏による基礎トレーニングなど、小学生対象のスペシャルクリニック(1〜3年と4〜6年の50人ずつ/2部制)も午前11時から実施する。


会場AGFフィールドの住所は調布市西町290。


◇  ◇  ◇  ◇ 


これら将来を見据えた取り組みは、自身がトップの今だからこそ着手したかった。今夏のパリでは、日本勢の五輪初となる9秒台を準決勝で記録。自己ベストの9秒96で走破した。結果は、まさかの敗退だった。


「もう、めちゃくちゃ悔しかったです。もっといけたはず。五輪と世界選手権では勝手が違いました。大舞台で100%以上のパフォーマンスを出せる自負はあったのに、まだ平均的には出せなくて。もっともっと研ぎ澄ませて、シャープな状態で臨むべきでした」


五輪の準決勝で10秒を切って、決勝に進めなかった選手は皆無。世界選手権2大会連続の決勝進出者でも届かなかった。史上最高レベルの領域を体感した自身を小中高生が見れば、最初から基準が変わってくる。


「自分も同じですね。行けなかった決勝は、サブトラックから見て目に焼きつけました。4年後、絶対にこの舞台に立つんだって」


18歳でプロになり渡った米国。28年。世界一の陸上大国で五輪が待っている。


「いやもう、リベンジしかないですよね。五輪の借りは五輪でしか返せないけど、ロサンゼルスの前に来年の世界選手権。東京で(3大会連続)決勝はマストです。しかもメダルまで食い込まないと、今までやってきたことが意味を成さなくなる。母国に恩返しするためにも結果を出したい」


パリでは、女子やり投げの北口榛花(26=JAL)が金メダル。日本女子のフィールド種目で初だった。日本陸連が五輪、世界大会で活躍する競技者を強化育成する「ダイヤモンドアスリート」制度の1期生。サニブラウンは同期だった。


「(男子400メートル)リレーの準備で直接は見られなかったんですけど、刺激になりましたね。祝福したいですし、自分も次こそは」


悔しさを胸に花の都を離れた後は、男子100メートルで日本勢初となるDLファイナル進出を遂げた。年間成績上位者だけが集う、まぐれのない世界。10秒10で6位だったが、シーズンを通してトップ層に滞在した。


「月末には、もうアメリカに戻りますよ。休み過ぎると、戻らなくなるので」


パリ五輪の優勝タイムは9秒79。目指す「9秒8台」もマストに、日本の子供たちを喜ばせる姿を今週末も、来夏も見せつけたい。


「メダルも金色じゃないと悔しいはず。国立競技場で最高の走りができるように、子供たちやお世話になった方々を喜ばせるために突き詰めたい。まずは交流を楽しんで、その後はすぐ練習を再開したいですね」


◆世界選手権東京大会(25年9月13〜21日)参加資格有資格者 サニブラウンは既に資格を有している。男子100メートルの参加標準記録(10秒00)を有効期間内であるパリ五輪で記録したため。他にも北口榛花、田中希実、三浦龍司、泉谷駿介、村竹ラシッドら有力選手陣が資格を有している。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定