2台のPCを行き来できる便利マウスが8000円切り! 「Rapoo MT760」はどこまで使えるか試してみた

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2024年10月09日 16:31  ITmedia PC USER

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Rapooの無線マウス「MT760M」(左)と「MT760L」(右)

 PC関連製品を始め、モバイルアクセサリーなどを展開するユニークから、Rapoo(ラプー)のワイヤレスマウス「MT760」シリーズが発売中だ。7千円台というハイミドルレンジ価格の同シリーズは、見た目が他社の高級マウスにそっくりなだけでなく、デバイス間をシームレスに移動できる機能まで搭載している。果たしてその実力はいかほどのものか、気になるところだ。


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●パッと見で思わず連想してしまう形状


 Shenzhen Rapoo Technologiesは、中国深センに本社を構えるPC周辺機器メーカーだ。特にワイヤレス周辺機器に注力しており、マウス/キーボード/オーディオ機器などを製造している。中国以外にもポルトガル、オーストリアといったヨーロッパ市場で存在感を示す同社だが、日本でも2007年からユニークが正規代理店として販売を行っている。現在はRapooブランドのワイヤレスマウスのMT760シリーズを発売中だ。


 MT760シリーズはM/Lの2つのサイズバリエーション、ライトブラック/グレーホワイトの2色のカラーバリエーションで展開されるハイミドルレンジのワイヤレスマウスにあたる。ユニークオンラインストアでは7980円で販売中だ(MT760Mは10月下旬発売の予定)。


 大きなサムレストの付いたウミウシのような形状、左側面の砂紋のようなデザイン、そしてマウスカーソルを画面の端に移動させることで操作先PCの切り替えができる「Cross-screen switching function」を搭載しているとなれば、高級マウスのアレを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。


 だが、アレは1万円台も後半の価格帯になる。それが半額以下で購入できる……となれば、これは掘り出し物なのかもしれない。早速、確かめてみることにしよう。


●比較的軽量で操作も快適


 MT760シリーズは2つのサイズバリエーションが展開中で、大きいMT760Lのサイズは約125mm(幅)×81(奥行き)×47(高さ)mmあり、同じプロポーションのまま約92%のサイズダウンを図ったのがMT760Mだ。具体的には、約115(幅)×75(奥行き)×43(高さ)mmとなるが、その名称についてはややブレがあるようだ。


 WebサイトやパッケージによってはMT760LをMT760、MT760MをMT760 Miniと表現しているケースが見られるので、購入の際には気をつけてもらいたい。なお、本稿ではMT760はMT760L/MT760M共通の記述に対して使用している。


 電源は800mAhのリチウムバッテリーを内蔵した充電式で、フル充電で約30日間(2.4GHz無線で約160時間/Bluetoothで約150時間)の利用が可能だ。容量に対して利用時間がやや短いような気がするが、いざとなれば有線での利用も可能なのであまり困ることはないだろう。


 MT760のボタンは全て静音仕様になっており、左右ボタンだけでなく、進む/戻るボタンやDPI変更ボタンもクリック音は小さく抑えられていることも地味にうれしい。最も使用頻度の高い左右ボタンは比較的押し込み距離が長く、しっかりとしたクリック感を得られる。


 大きめのサムレストなど、全体のフィーリングとしてはある意味お墨付きの快適さなのだが、特筆すべきはその重量だ。MT760Lで公称値が約103g(実測値は105g)、MT760Mだと約89g(同89g)と、前述の高級マウスの約141gに比べて圧倒的に軽い。軽い力で自然に、滑らかに操作できる点は素晴らしいの一言だ。


●多彩な接続方法をサポート


 ただ1つ気になった点が、特定条件下でのトラッキング能力だ。最大4000DPIの光学式センサー、最大1000Hzのレポートレートと、ゲーミングマウスクラスのスペックを誇るMT760だが、白い机上に貼った透明なPETフィルム上ではほとんど移動を検知することができなかった。


 フィルムの貼っていない机面ではなにも問題なかったので、リフトオフディスタンスが小さいのかもしれない。デスクマットなどを利用している人は、マウスパッドの導入も合わせて検討した方がよいだろう。


 サムホイールはサイズも大きく、扱いやすそうに見えるのだが、実際の使い心地としてはやや気になる部分があった。まず、静止摩擦が大きいのか、回し始めにやや堅さを感じる。その反面、回り始めると急に軽くなるようだ。


 加えて、サムホイールの位置と軸の方向はもう少し検討の余地があったように思う。MT760のサムホイールはボディーの最頂点にあるので、操作するためにはかなり親指を上に持ち上げる必要がある。かぶせ持ちをする人だと、人差し指の第3関節に触れるくらいの位置だ。


 さらに軸が水平なので、そこから親指を垂直に上下させなければならない。手の大きさや持ち方にもよるが、窮屈だと感じる人が多いのではないだろうか。


 MT760の接続方式は、Bluetooth/2.4GHz無線/有線USBの3つから選べる。Bluetoothは3台までペアリングが可能で、底面のスイッチで切り替えられる。底面中央のスライドスイッチは3ポジションで、上が2.4GHz、真ん中が電源オフ(有線)、下がBluetoothとなっている。


 Bluetoothを選択したときは、左のボタンで接続先を切り替える。その下に接続先のLEDインジケーターが3つあるが、各LED間の間隔が狭く、パッと見でどれが点灯しているのか分かりづらい。このあたりのマーキングは全てデボス加工(文字の彫り込み)のみでインク充てんなどがされておらず、視認性もよくない。


 データ通信可能なケーブルを使ってPCに接続すると、2.4GHz無線/Bluetoothが選択されていても有線接続が優先される。あまり想定されるケースではないかもしれないが、操作対象とは異なるPCから充電だけ行いたい、というときには注意が必要だ。


 その場合は、電源供給用PC側にもとりあえずレシーバーを挿しておけばよい。2.4GHz接続の場合は後述のScreen-cross switch functionを利用しない限り、先に接続が確立したレシーバーが接続先となる。Bluetoothのようにボタンで切り替えることはできない。


●カスタマイズは専用ツール「RapooOficeDev」を利用


 MT760のカスタマイズは、専用ツール「RapooOfficeDev」から行う。一見、ボタンのカスタマイズメニューがないように見えるが、DPI setting、Parameter settingの両方からアクセスすることができる。


 DPI settingでは最大7つのDPIプリセット値を編集する。DPIは50〜4000DPIまで50刻みで設定可能だ。設定したDPIプリセットは、DPI切り替えに割り当てたボタンを使って切り替える。


 Parameter settingではマウスポインターの速度(Windows pointer speed setting)、マウスホイールでスクロールする量、一度にスクロールする量(Windows roller speed setting)、レポートレート(USB report rate)を設定する。


 レポートレート以外はWindowsの設定なので、ここで変更するとOS全体に反映される。レポートレートは125Hz/250Hz/500Hz/1000Hzから選択可能だ。


 ボタンのカスタムはDPI setting、Parameter settingの両方から行うことができる。カスタムできる操作はキー入力、左右、進む/戻る、DPIボタン、ホイール押下、カスタムボタンとホイール、サムホイールの回転だ。


 キー入力の設定はやや分かりづらい。Ctrl/Shift/Alt+テキストフィールド、Winという4つの項目があり、それぞれにラジオボタンが付いている。このラジオボタンがそれぞれCtrl/Shift/Alt/Winの修飾キーを押すかどうかを表し、Altの後ろのテキストフィールド部分が一般キーを表す。


 つまり、全てのラジオボタンをオフにした状態でテキストフィールドにF12を押すと(Alt+と書かれているにも関わらず)F12だけが押されることになる。Altとは別の項目として一般キーの枠を作った方が分かりやすいのではないだろうか。


 一方でカスタムボタンは底面にあるため、押すときはマウスを裏返さなければならず、有効に活用できる機能は限られそうだ。デフォルトではDPI Reduction Cycle(DPIの設定を逆順で切り替える)が割り当てられている。


 その他のDPI関連の機能は、DPI Cycle(DPIの設定を正順で切り替える。標準でDPI切り替えボタンに割り当て)の他、設定が循環しないDPI+/DPI−がある。順次切り替え以外に指定したDPIに直接設定できる機能があってもよいのではないかとも思ったが、DPI Settingは最少1、最多7パターンを設定可能なので、あえて2〜3パターン程度で運用していくのがよいのかもしれない。


 Switch FunctionではMT760の売りの1つである、Cross-screen switching functionの設定を行う。


●驚きの切り替え速度を実現!


 Cross-screen switching functionは、マウスカーソルを画面端に移動することで複数のPCを切り替えたり、PC間でコピー&ペーストをしたりする機能だ。はっきり言えば、ロジクールが提供しているFlow機能に相当するものだが、細部では異なる部分がある。


 1つ目は接続方式が2.4GHz、つまり付属のUSBレシーバーに限られるということだ。MT760自体は3台までのBluetooth接続、6台までの2.4GHz無線接続に対応しているが、Cross-screen switching functionはBluetoothには対応していない。


 MT760にはUSBレシーバーが2台セットになっているので、それを利用して2台のPC間で利用することになる。なお、原稿執筆時点でUSBレシーバーの別売は予定されていないようだが、MT760を複数台購入して3つ目以降のUSBレシーバーを手に入れる、という方法もないわけではない(する人は少ないとは思うが)。


 Flow機能との相違点2つ目は、オフラインモードとLANモードがあることだ。切り替え対象となるPCが同じネットワークに接続されているのであればフル機能が使えるLANモードを使用すればよいが、リモートワークなどで社用PCはVPN接続していて、すぐ隣にある私用PCとはネットワークが分離されているケースはままある。


 そのような場合でも、オフラインモードを使えば複数PCの切り替え利用が可能だ。Flow機能では同じネットワークに接続されているPC間でしか利用できないので、これは大きなアドバンテージだと言えるだろう。


 ただし、オフラインモードではPC間でのコピー&ペーストはできない。設定画面などからの推測になるが、オフラインモードはレシーバーの切り替えのみをサポートし、LANモードはそれに加えてネットワークを経由したクリップボードの転送をサポートするということのようだ。


 3つ目は、原稿執筆時点ではWindowsにしか対応していないことだ。その他、切り替えエリアは右端と左端にしか設定できず、上下には設定できないという制約もあるが、その分、切り替えは超高速だ。マルチディスプレイ間の移動と同じくらいのタイムラグで切り替わると言えば、イメージしやすいだろうか。


 内部的には接続を切り替えているのではなく、2台同時に接続した上で、操作対象ではない方はデバイスドライバ側で入力信号を無視する、というような処理をしているのかもしれない。


 MT760に付属するUSBレシーバーはあらかじめペアリングされているため、通常であればユーザーがペアリングを行う必要はない。だが、何らかの理由でペアリングが外れてしまったり、前述のように別のMT760に付属のレシーバーをペアリングさせたりしたい場合は、ユーザー自身でペアリングを行える。


 RapooOfficeDevのSupportを開くと、「the code pairing tool」へのリンクがあるので、これをクリックする。電源をオフにしたMT760とレシーバーをUSB接続し、「Pair」をクリックすると、Step one、Step twoと進むので、そこでDevice IDを1〜8から選択する。


 その後、MT760のUSBケーブルを取り外し、接続方式を2.4GHzに切り替えて右/左/ミドルボタンを同時押しすればペアリング終了だ。


 このペアリングを試行錯誤しながら気づいたのだが、レシーバー1台に対して複数のMT760をペアリングし、同時に接続することもできる。ただし、同時に操作するとマウスカーソルが止まるなど、トラッキングが安定しないことがあった。あまり想定されるケースではないが、複数のMT760を購入する際には、意図せずレシーバーを共有していないか気をつけた方がよさそうだ。


●価格相応の満足感は得られる それをどう捉えるか次第


 MT760Lのパッケージに付属するマニュアルは中国語(繁体・簡体)/英語/韓国語、MT760Mでは英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語/スペイン語/オランダ語/ポルトガル語/ロシア語/ウクライナ語となっており、日本語は含まれていない。その代わり、ユニークが日本語版マニュアルを提供しているのだが、気になる箇所がいくつかあった。


 まず、付属品の中に単三形乾電池とあるが、MT760はバッテリー内蔵のため乾電池は付属しない。また、DPI確認用ランプの点灯回数で現在のDPI設定を確認できる、とあるが、実際には色で判断するようになっている。日本語マニュアルに掲載されているURLからダウンロードできるドライバが最新バージョンでないのも引っかかる。


 これらは評価機ゆえの可能性もあるが、海外製品の場合は日本代理店のサポートは重要な選択材料の1つなので、なるべく正確で新しい情報にアップデートしてもらいたいところだ。


 製品自体は複数レシーバー、複数PCで利用する際の2.4GHz接続にやや癖があるものの、一度理解/設定してしまえば大きな問題はない。高級マウスに近いフィーリングでより軽やかに操作ができ、そしてより高速にPC間を移動できるとあれば、多少の粗を加味しても価格差に対しての満足度は相応、あるいはそれ以上だと言える。


 タイムセールなどで30%オフ(4980円)で売られていることもあるMT760だが、このあたりになるとロジクールの「M750 Signature」の価格帯に入ってくる。M750 Signatureは3台までの接続が可能で、Flow機能にも対応したミドルレンジの高コスパモデルだ。むしろこちらが競合の本命かもしれない。どちらを選ぶかは自身のこだわり次第だが、サムレストがしっかりある軽いマウスがほしい、サムホイールは必須、という人にはMT760は有力な選択肢となるだろう。



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