冬物「第3の柱」となるか ユニクロの「パフテック」、ウルトラライトダウンとどう違う?

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2024年10月10日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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ユニクロの「パフテック」、新たな代表商品となるか

 ユニクロは10月3日、「PUFFTECH(パフテック)」の記者発表会を実施した。パフテックとは「PUFF(膨らみ)」と「TECHNOLOGY(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、天然羽毛を化学繊維で模した素材を使った商品に付く名称。通常のダウンは湿気に弱く、縫い目から羽が出てしまうこともあるが、パフテックでは東レと共同開発した化学繊維を使用してそうした弱点を克服している。軽量性や湿気に強い点などをアピールポイントとしている。


【画像】ユニクロの「パフテック」とは? 商品を見る(全5枚)


 パフテック商品の販売自体は2023年から行っていたが、今期はさらに性能を向上したという。「ウルトラライトダウン」に並ぶ防寒商品へと育てたい狙いがあると見られ、本記事では商品発表会の内容をレポートしていく。


●ダウンの弱みを克服し、5つの強みを実現


 発表会ではファーストリテイリングの勝田幸宏執行役員が登壇し、パフテックが持つ5つの強みを説明した。具体的には「軽くて暖かい」「水や湿気に強い」「手洗い可能」「綿抜けしづらい」「デザイン豊富」の5つだ。


 ユニクロの冬物アウターとして代表的なウルトラライトダウンは、一般的なダウンと比較して軽量性などが売りとなり、人気を博してきた。一方、保温材として羽毛を使用していることから、水や湿気に弱くデザイン性に制限があるなどの弱みがあった。パフテックでは保温材に化学繊維を使用することで、そうした課題を克服している。


 東レの大川倫央氏(グローバルオペレーション事業部部長)によると、パフテックに使用する中綿の繊維は羽毛を忠実に再現した繊維であり、羽根のような形状や、中が空洞となった「中空構造」が特徴であるという。バネのような構造により繊維同士がくっつかず、十分な厚さの空気層ができることで断熱性と軽量性を実現する仕組みだ。中空構造も断熱性に効果を発揮していると大川氏は説明する。


 パフテックの特徴である軽量性を実現するには「同じ重量の綿で、どれだけ膨らむか」が重要になる。一般に、繊維の膨らみと素材の柔らかさは相反するが、パフテックではその点に工夫を凝らした。商品を手に取ったところ、ジャケットにしては非常に軽量で、かつカバンに詰め込めるくらいに折りたためる柔らかさがあった。


 写真のように、新たなパフテック商品は従来のダウンや前期のパフテックよりもかさ高い、つまり膨らむ繊維である。羽毛のダウンは高湿度環境で膨らみ感が減り、保温性が低下する一方、最新の商品では湿度が高い条件下でも保温性をキープできる点を訴求する。水に強く、洗濯も可能だ。


●冬物「第3の柱」になるか


 今後の販売戦略について、ファーストリテイリングの吉田実恵子氏(グローバルマーケティング部)は「これまでのウルトラライトダウンに並ぶ商品としてパフテックを打ち出していきたい」と話す。メンズにウィメンズ、キッズ・ベイビーとターゲット別に商品ラインアップをそろえ、国内外で展開する方針だ。


 従来のダウンは羽毛が生地から出てしまう「綿抜け」を防ぐために横キルト柄に限られていたが、パフテックは綿抜けしづらい分、デザイン性を向上できる点も強みとしている。ただ、筆者としてはデザイン性が大きく向上した印象を受けなかった。中綿の位置を維持するために、形状がどうしても制限されるのだろう。


 2023年の発表会では羽毛を用いない点を訴求し、今期は機能性をアピールしたパフテック。メンズのパーカーやジャケットタイプの商品は主に5990円と6990円で、ユニクロらしくアウターにしては非常に安価である。


 汎用的なアパレルとしては国内トップの規模とブランド力を誇るユニクロは、競合を意識した施策を行うというよりも、自社で新たな商品分野を切り開いてきた。冬物としてはウルトラライトダウン以外に「ヒートテック」が代表的な商品である。パフ“テック”という名称には、ヒートテックに続く肝いり商品という印象も受ける。冬物を代表する第3の商品となるか、今季の売れ行きに注目したい。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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