マツダ「CX-80」に試乗! 700万円超の最上級モデルは“買い”か?

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2024年10月10日 12:30  マイナビニュース

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マツダの新型車「CX-80」に試乗した。日本向けラージ商品群の第2弾となる3列シートSUVのフラッグシップモデルは、エンジン(パワートレイン)の種類によって価格が大きく異なる。今回は最上級モデルとなるプラグインハイブリッド車(PHEV)に試乗し、実力を確かめた。


最も気になるのは乗り心地の完成度



試乗のスタート地点となったのは徳島県のリゾートホテル「モアナコースト」(鳴門市鳴門町)。試乗前のプレゼンで挨拶に立ったマツダ執行役員の佐賀尚人さん(R&D戦略企画、カーボンニュートラル、コスト革新などさまざまな分野を担当)は、「ようやくCX-80に試乗していただける準備が整いました。『大切な人と過ごすCX-80での旅』と題して実施する今回の試乗会、テーブルの横を向けば、今日は大切な人と来ていただいていると思います(大方のメンバーはライター、編集者、カメラマンの組み合わせだった……)」と笑わせた後、次のように語った。



「マツダのラージ商品群は、2050年に向けたカーボンニュートラルへの挑戦を具体化した商品です。電気だけでも走れるPHEVと、ブレーキ回生をうまく使ったMHEVという電動化技術、それに高効率の内燃機関を組み合わせて搭載しています。環境負荷低減に貢献できるとともに、より上級志向のユーザーのニーズを満たす商品力向上を実現しました。乗れば乗るほど元気になっていく、『クルマっていいよね』『出かけるっていいよね』という体験を楽しんでいただきたいと思います」


2022年9月に日本で発売となったラージ商品群の第1弾「CX-60」は登場時、その乗り味にマツダらしからぬラフさがあって、試乗記を読むとけっこう厳しい意見が目立っていた。今回のCX-80は、言ってみればCX-60を前後に長くしたストレッチバージョン。もし同じような乗り味だったらどうしようと、乗る前は少し不安だった。

最上級のPHEVはどんなモデル?



今回乗ったのは、「e-SKYACTIVE PHEV」を搭載した「プレミアムスポーツ」グレード。ボディカラーは「ソウルレッドクリスタルメタリック」だ。スペックシートに書かれた価格は719.59万円。マツダのフラッグシップを名乗るCX-80の中でも最上級で、やはりこれには乗っておかないと、というモデルである。


搭載するPHEVシステムは最高出力138kW(188PS)/6,000rpn、最大トルク250Nm/4,000rpmを発生する縦置きの2.5L直列4気筒直噴ガソリンエンジンに、129kW(175PS)/270Nmのモーター、容量17.8kWhのリチウムイオンバッテリー(床下に搭載)を組み合わせたもの。FRベースのi-ACTIV AWDをトルコンレスの8速ATで駆動する。WLTCモードでのハイブリッド燃料消費率は12.9km/L、EV走行可能距離(バッテリーを充電しておけば電気だけで走れる距離)は67kmとなっている。


まさかのフロントミッドシップ!



エンジンカバーを持ち上げて(左右のクリップを外すだけで簡単)姿を現した4気筒エンジンの取り付け位置には驚いた。フロントアクスル(前の車軸)の後方に搭載されているので、ボンネット前端のラジエーターとの間に30〜40cmはあろうかという空間がぽっかりと空いているのだ。いわゆる「フロントミッドシップ」というエンジンの置き方で、基本的には走行性能にこだわるスポーツカーなどがよく用いる手法である。こんなところからも、走りにこだわるマツダのエンジニアの心意気が伝わってくる。



エクステリアはCX-60に準じたデザイン。垂直に切り立った大きなフロントグリル、FRベースでボディ後方寄りにしつらえたキャビン、深くえぐられたボディサイドの造形などが特徴的だ。ロングボディ化による間延び感はなく、堂々たる気品があり、さすがはマツダデザインと言いたくなる。


インテリアの作り込みもすばらしい。タンカラーのナッパレザー/レガーヌのシートは1〜2列目の居心地が最高。3列目の広さもライバルを凌いでいる。黒をミックスした全体のコーディネーションは、価格が上の輸入車やレクサスあたりと比べても負けていない。国産モデルにあっては、一頭地を抜くプレミアムなデザインだと断言できる。


ここまで変わるとは…



ドライバーズシートに乗り込むと、ステアリングやペダルの位置がすぐにぴたりと決まる。ドライビングポジションにこだわるマツダらしい部分だ。さっそくPHEVモデルをスタートさせてみると、「EV」モード時は当然として、「ノーマル」モードでもなるべくモーターだけを使って静かに走ろうとするところが印象的。そして、気になる乗り心地はと言うと……フラッグシップモデルにふさわしい、滑らかな足に大変身しているではないか! すばらしい。乗る前は不安だっただけに、思わず「よかった」と安堵の声が出た。


大鳴門橋を渡って淡路島に入る高速区間でACC(マツダの呼び方だとマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール。前車追従のいわゆる半自動運転)を作動させると、CX-80は静かで安楽なツアラーに早変わり。東浦ICで降りて県道71号や157号のワインディングに乗り入れ、走行モードを「スポーツ」にして走り出せば、「クオオオーン」という4気筒エンジンの快音が遠くでくぐもったように聞こえてきて、FRのスポーツカー的な走りが楽しめる。この時、5m近い全長のことはすっかり忘れている。わずかなロールを許しながらクリッピングポイントを狙っていけるのは、「ロードスター」にも採用されている「KPC」(キネマティック・ポスチャー・コントロール)構造のリアサスペンションが効果を発揮しているからだろう。


淡路島の海沿いにある「アクアイグニス淡路島」(淡路市夢舞台)では、CX-80が搭載する「トーイングモード」の性能を体験できた。「Mi-Drive」(いわゆるドライブモード選択)でこのモードを選ぶと、パワートレインの出力特性を重量増加状態に合わせて調整し、AWDの直進性能を最適化してくれる。


車両後部に装着したヒッチメンバーに小型モーターボートを載せたトレーラーをつなげるのは難しそうだが、モニターに映るバックカメラの画面にトレーラー連結ガイド線が表示されたり、映像を拡大できたりする「トレーラーヒッチビュー」を使えば1人でも容易に行えるとのこと。バックで縦列駐車するには、いったんハンドルを逆に切ってトレーラーの向きを変え、今度は反対側に切ってクルマの向きを変えるのだが、このタイミングはけっこう難しかった。


さて、ここまで読んでおわかりの通り、褒めてばっかりの死角なし。700万円オーバーのCX-80最上級モデルは間違いなく「買い」である。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)

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