折りたたみスマホの「メリット」「デメリット」を実体験から解説 “折りたためるiPhone”の登場は?

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2024年10月11日 06:11  ITmedia Mobile

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折りたたみスマートフォンの代表格「Pixel 9 Pro Fold」と「Galaxy Z Fold6」

 使わないときはコンパクトにでき、使うときにだけより大画面で利便性を実感できる。それが折りたたみ式スマートフォンだ。日本国内かつ折りたたみスマホの市場には、横開きでタブレットのように使えるタイプの「Galaxy Z Fold6」「Google Pixel 9 Pro Fold」や、縦方向に開閉するタイプの「Galaxy Z Flip6」「motorola razr 50」シリーズ「Libero Flip」「nubia Flip 5G」が存在する。


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 一方、その特徴や注意点が十分に浸透していないゆえに、折りたたみスマホに手を出すべきか否かの判断もできず、普及につながりづらいと感じる。そこで、折りたたみスマホの利便性と欠点を整理し、どんな人なら手を出せそうか考えたい。


●折りたたみスマホのメリットをタイプ別に考える


横折りタイプ:開けば小型タブレットに早変わり


 まずは横折りタイプから見たい。横折りタイプは閉じればスマホサイズのカバーディスプレイを使え、開けば小型タブレットに近いサイズのインナーディスプレイを利用できるのが大きな利点だ。カバーディスプレイとインナーディスプレイのサイズはGalaxy Z Fold6が6.3型/7.6型、Pixel 9 Pro Foldが6.3型/8型となっている。


 横折りタイプで受けられる恩恵は、カバーディスプレイよりもインナーディスプレイの方が多いと感じる。大画面でマルチタスクをしやすく、一般的なスマートフォンより大きな画面で動画を視聴できるからだ。


 マルチタスクについては、Galaxy Z Foldシリーズなら3分割、Pixel 9 Pro Foldなら2分割し、複数のアプリを同時に表示できる。Webサイトで調べた目的地の詳細を見ながら、地図でルート検索の結果を確認できるし、ニュースサイトの記事を読みながら、その記事の反響をSNSでチェックすることもできる。いわば、ながら作業や同時進行が可能だ。


縦折りタイプ:使わないときは折りたたんでコンパクトに


 縦折りタイプはどうか。縦折りタイプでも横折りタイプと同様、画面分割はできるが、2分割までとなっている。ただし、インナーディスプレイのサイズは横折りタイプより小さい。サイズはGalaxy Z Flip6が約6.7型、razr 50は約6.9型だ。


 一方、縦折りタイプの利点は横折りタイプでは実現できないサイズ感にある。インナーディスプレイを利用するときのサイズは一般的なスマートフォンに近く、利用しないときは折りたたんでコンパクトにできる。閉じた状態の厚さはスマートフォン2台分に近いため、薄いとは断言しづらいところだが、それでも服やカバンのポケットによっては収まる。


・Galaxy Z Flip6:折りたたみ時が約71.9(幅)×85.1(高さ)×14.9(厚さ)mm、展開時が約71.9(幅)×165.1(高さ)×6.9(厚さ)mm


・motorola razr 50:折りたたみ時が約73.99(幅)×88.08(高さ)×15.85(厚さ)mm、展開時が約73.99(幅)×171.3(高さ)×7.25(厚さ)mm


・Libero Flip/nubia Flip 5G:折りたたみ時が約76(幅)×88(高さ)×15.5(厚さ)mm、展開時が約76(幅)×170(高さ)×7.3(厚さ)mm


横折り/縦折り共通の利点:好きな角度にディスプレイを固定できる


 ……と、ここまで聞くと、折りたたみスマホの利点は、横折りタイプが大画面、縦折りタイプがコンパクトだけなのか? と思われるだろうが、実はそうでもない。実は両者に共通する利点がある。それはくの字型にした状態での使い方だ。くの字型というのは横から見たときにそう見えるという意味で、実際には好きな角度にディスプレイを開いて固定させた状態を指す。


 横折りタイプならくの字にしたときに、インナーディスプレイの半分をコンテンツ視聴に、もう半分(設置面)をコントローラー用途などに使える。スタンドを用意することなく、好きな角度でコンテンツを楽しめる。


 Galaxy Z Fold6の「フレックスモード」を利用すれば、ギャラリーで写真を表示した状態で本体をくの字にして置くと、上半分は写真の閲覧に、下半分はPCのようなタッチコントロールに使える。Webブラウザアプリでは上半分にサイトを表示し、下半分でスクロールできる。


 縦折りタイプでも上記と同じようなことができるが、コンパクトゆえに撮影しやすい。カメラを立ち上げて半開きにして、適当な角度に調整して手のひらや机上に置くと、上半分でプレビューを確認でき、下半分をコントロールパネルとして使える。Galaxy Z Flip6、motorola razr 50なら手のひらをインカメラに向ける、Libero Flip/nubia Flip 5Gならインカメラに向かって手をふる(ピースする)だけでシャッターを切れる。


●折りたたみスマホのデメリットは価格と耐久性にある


 では、折りたたみスマホの欠点は何だろうか。大きく分けると価格と耐久性の2つある。


 横折りタイプは縦折りタイプと違い、縦折りタイプにはない望遠カメラがあるし、ディスプレイサイズも大型のものを備える。しかもミッドレンジモデルがない。それゆえに一括価格は20万円以上がほとんど。容量によっては30万円を超える。キャリアの端末購入プログラムを利用しても実質10万円台と手を出しづらい。


 縦折りタイプも決して安いとはいえないが、ミッドレンジモデルのLibero Flip/nubia Flip 5Gが選べる。価格は販路によって異なるが、Libero FlipはY!mobileオンラインストアで他社から乗り換える際にシンプル2 M/Lを選べば9800円で購入できる。nubia Flip 5Gはそこまで安くはならないが、それでも10万円は超えない。


 耐久性については開閉による劣化、インナーディスプレイのフィルムの強度が気になるところだ。例えば、Galaxy Z Flip5は、サムスンの説明では20万回以上の開閉動作試験をクリアしているので、1日あたり100回開閉しても5年間は利用できることになる。


 インナーディスプレイのフィルムは使っているうちに傷が付いたり、フィルムに気泡が入ったりする。Galaxyの場合はドコモが販売したGalaxyの折りたたみスマホ(修理対象機種)、国内販売のSIMフリーモデル「Galaxy Z Flip5」「Galaxy Z Fold5」ならドコモショップ内のGalaxyリペアコーナーでもフィルムを交換できるが、そうではない端末は同コーナーでは交換できない。


 Google Pixel FoldシリーズはGoogle正規サービスプロバイダー/シャープスマートフォン修理パートナーである「iCracked Store」での即日修理(最短60分)が可能だが、フィルムのみを新しいものに貼り替えるには郵送での対応となってしまう。


 ヒンジについても筆者の経験上、強度の高いとうたっているスマホであっても、ヒンジとボディーの隙間から異物が混入することで、ディスプレイを開けなくなる可能性がある。


 いずれにしても、折りたたみスマホを購入し、長期利用を考えている人には、メーカーやキャリアの保証サービスへの加入をおすすめしたい。加入せずに故障してしまった場合、本体代金が高額な機種ほど修理代金も高額になるケースが多い。


●iPhoneに折りたたみタイプは現れるのか


 最後に、iOS搭載の折りたたみスマホは登場するのかどうかを考えてみたい。現状、日本国内で販売されている折りたたみスマホのOS(ベースとなる)はAndroidとなっており、折りたたみスマホのOSでiOSの選択肢はない。


 結論からいえば2024年10月の時点でハッキリとした情報は何もない。そもそも折りたたみ式のiPhoneとしてなのか、それとも「Apple Vision Pro」のように完全に別カテゴリーの新製品として登場するのかも不明だ。


 とはいえ、Appleが取り組んでいるらしい折りたたみ技術に関する情報は、特許出願という形でいくつか発見されている。


 例えば、Appleが2023年3月、米国特許商標庁(USPTO)に出願した「Self-Retracting Display Device And Techniques For Protecting Screen Using Drop Detection(自動開閉式ディスプレイ装置および落下検知を利用した画面保護技術)」は、画面割れを防ぐために落下検知時に自動でディスプレイを閉じる構造だ。


 Appleはボディーをスライドできるデバイスの特許も取得している。その特許を見ると、大画面を必要としないときは横幅を抑え、大画面を必要とするときにだけ、ボディーをスライドさせてディスプレイのサイズを大きくできるような構造となっている。


 ディスプレイは巻き取れる構造とし、折りたたみスマホでよく気にされる折り目の問題を解消できそうだ。ディスプレイはデバイス内部のローラーで巻き取れるようだ。ただし、ローラーを含む構造を本当に実現できるのかは不明で、実現できたとしても耐久性を損なってはいけないため、振動や衝撃に耐えられるように設計しなければならない。


 ただ、特許申請や特許取得があったからといって、必ずそれが製品化されるとはいえない。ここ数年のAppleの動きを見るに、Appleが他社に先んじてイノベーティブな製品を出すというより、ある程度成熟したものをブラッシュアップする傾向にあると考えられる。



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