電動トライアル『RTL ELECTRIC』で21年ぶりに全日本選手権に挑む藤波「ゼロ発進のスピードの速さはエンジン車より勝っている」

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2024年10月12日 17:50  AUTOSPORT web

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電動トライアルバイクで全日本選手権に挑む藤波貴久と開発の斎藤晶夫氏
 10月11日、ホンダは新開発の電動トライアルバイク『RTL ELECTRIC』を発表。13日から和歌山県湯浅トライアルパークで開催される『2024 MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第6戦』に『RTL ELECTRIC』で参戦する藤波貴久が、その開発状況と21年ぶりの全日本選手権参戦への意気込みを語った。

 株式会社ホンダ・レーシング(HRC)は、HRCは、2040年代にはすべての二輪製品でカーボンニュートラルの実現を目指しており、今後の環境戦略の主軸として二輪車の電動化に取り組んでいる。

 すでに2023年から始まった電動オフロードバイクの世界戦『FIM E-Xplorer World Cup』にもCR ELECTRIC PROTOを使用して、Team HRCとして参戦。

 トライアル競技では、ホンダよりひと足さきにヤマハが2018年から電動トライアルバイク『TY-E』を投入し、2023年から『TY-E』でフル参戦を開始。表彰台を獲得するなど活躍を見せているが、ホンダも後を追う形で新電動トライアルバイク『RTL ELECTRIC』を第6戦から投入する。

 ライダーを務めるのは、世界で活躍した”フジガス”こと藤波貴久だ。

 2004年にFIMトライアル選手権でチャンピオンに輝いた藤波は、2021年に引退を発表。翌年からレプソル・ホンダ・チームの監督としてFIMトライアル世界選手権を戦っている。

 3年ぶりに実戦に挑む藤波。初めてこの『RTL ELECTRIC』に乗ったのは5月だったと打ち明ける。

「本当に制限がいっぱいあったので普通の性能として走れるなと言う程度でした。トライアルができるかどうかの確認まではさせてもらえなかったので……。6月後半にもテストして、その後も数回乗っています。パワー自体はすごくあったので、そのパワーをライダー自身、僕自身が走れるようにトライアル走行ができるようにアジャストしていくという方向性で進めていきましたね」

「(5月の初走行の時から)エンジン車と比べてパワーがありました。(世界トライアル選手権に参戦している)トニー・ボウやガブリエル・マルセリが走っているHRCのマシンを超すというのが目標としてあったので、まだまだですけど、それに近いくらいのポテンシャルはあるなという印象でしたね」

「一番の違いじゃ、制御の仕方。パソコンでの制御でマッピングになってくるんですけど、当然エンジン車でもマッピングはあります。それ以外のところで、排気量やエキゾーストパイプの曲げ方、大きさ、縮め方でエンジンのフィーリングが変わったりだとか、今だったらカムシャフトだったりだとか、そういうところでキャラクタを変えれるんですが、電動はパソコンでのマッピングでキャラクタもすべて変えれるっていうところが、エンジン車とは違うところだと思います」

「重心位置も(開発の)斎藤さんに考えていただいています。エンジン車とは当然変わるんですけど、似たような感じのところを設定していただいています。最初は今よりも重量もあったので、その部分では重い重いとずっと言っていたのですが、その辺もすごく改善されています」

「出力の出方が違いますね。エンジン車だと、下のトルクがなくどんどんスピードが出ていくという感じで、ドンッとスタートできないんですよね。モーターだと低回転のトルクがどんどん出ます。当然良いところもあれば、それがネガティブになってくるところもあるので、そういうところをマッピングで整理をしていく。そこが難しいところでもありますが、エンジン車よりもいいところもありましたね。あとはその力強さ。トルクの出方、力強さといのはエンジン車とは違った出方があります」とインプレッションを語る藤波。

 会見に同席した開発を担当する斎藤晶夫氏は、「ガソリン車と電動車のいいところと悪いところがあるというのがわかってきて、できるだけ両方のいいとこ取りをできるような形で今、開発を進めてるような状況です。出力に関しては、マッピングがかなり大きな要素を占めているというのは間違いないで」とコメント。

 13日の全日本選手権を前に藤波もしっかりと準備を行ってきたようで、モビリティリゾートもてぎで行われた世界選手権時より身体はかなり締まっている。

「僕は世界一負けず嫌いなんで、出るからには優勝しか狙ってないです。もてぎの世界選手権前より10キロぐらいは落ちています。(マシンが)最初は重かったので、僕も痩せるからマシン自体も軽くしてくださいと言って、僕の方が先に軽くなりました(笑)。どんどんマシンも軽くなったので、意気込みをお互いに乗せていい感じです」

「別の乗り物っていう感覚は少しあります。ただやっぱりそのライダーも慣れていかないといけないし、開発もまだまだ上に行ける余地がいっぱいあります。バイクが4ストロークエンジンに変わったときも一番最初はノウハウもなかったですし、ベースがなかったんです」

「ベースが固まってきてから、どんどん開発って進んでいきますが、今まだまだベースの段階。だからもっと上にいける余地があると思いますね」と意気込む。

 開発の目標についてどのくらいまで来ているのか聞かれた藤波は、「ワークスを100として、80%ぐらいです」と答える。

「あるところでは多分100を超えてるところもあります。ゼロ発進のスピードの速さは今のエンジン車より勝っているところというか、ポジティブなところだと思います」

「(追いついていないところは)バッテリー残量を気にしないといけないというところも当然気にはなりますね。バッテリーが減ってくるとパワーは、ずっと一定ではないんです。エンジン車でガソリンが尽きるまでまったく同じ性能じゃないですか。そういうところがやっぱりモーターでは難しいですね」とコメント。

 監督業をやりながら選手として復帰するのも難しいと語る藤波。

「先週まで監督として支える立場で挑んでいて、今週日本に帰ってきてライダーとして挑むのに切り替えるのは大変ですね。昨日の夜もずっとビデオミーティングをしたりだとか電話したりとか監督業もしています。まったくもってライダーに専念というわけではないです」

「テスト契約もさせていただいてるので、テストの時だけマシンに乗ってという感じだったので、普段から練習だとか選手時代のルーティン的なものはなくなっていました。今年の5月に決まってから、普段のルーティンに練習をするというのを、またその中に入れたんです。トレーニングもして、(引退した)2年前くらいには戻れたと思います」

「ボウには今週末チェックするぞと言われています(笑)」

 その藤波が今回つけるナンバーは、27だ。

「27番を自分で決めたわけではないのですが、国際A級、今でいうスーパーAに上がったときの1年目のゼッケンが27番。あと世界選手権挑戦1年目も27番でした」

「たまたまなんですが、今回も21年ぶりに参戦する全日本選手権なので、新たな気持ちで初心に返って、空いていた27番をつけます」と語っている。

 今後の予定について斎藤氏は、「今年は少なくとも残り3戦出るつもりで進めています。その先はちょっと決まってない」とコメント

 。和歌山からの残り3ラウンドに参戦する予定だが、最終戦には上位10位以内に入っていないと出場できないため、和歌山と次のSUGO戦で藤波は上位フィニッシュが必要だ。

 ホンダが満を持して挑む電動トライアル『RTL ELECTRIC』での全日本トライアル参戦。世界で活躍した“フジガス”が、どこまでそのポテンシャルを発揮できるのか注目だ。

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