『Origami』kei kanamori デジタルハリウッド大学(DHU)の卒業生、金森慧の卒業制作であるフルCGアニメーション作品『Origami』が、現地時間10月14日にロンドンで開催された米国アカデミーが主催する「第51回学生アカデミー賞」(the 51st Student Academy Awards competition)アニメーション部門において、見事【銀賞】を受賞。来春に開催される第97回アカデミー賞の短編アニメーション部門ノミネート作品となった。
学生アカデミー賞は、米国アカデミー(映画芸術科学アカデミー)が主催する学生版のオスカー。1972年の設立以来、新進気鋭のグローバルな才能に活躍の場を提供することを目的としている。
過去の受賞者にはロバート・ゼメキス(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、ピート・ドクター(『モンスターズ・インク』『インサイド・ヘッド』)、スパイク・リー(『ブラック・クランズマン』)などの錚々たる監督たちが名を連ねる。
51回目となる今年は、世界738の学校から過去最多の2,683作品が応募され、ナラティブ、ドキュメンタリー、エクスペリメンタル、アニメーションの4部門で計12作品が受賞作品としてアカデミー会員の審査によって選ばれた。
金森監督はこの春、DHUを卒業。卒業制作で、折り紙と自然をテーマにしたショートフィルム『Origami』を制作。
デジタルハリウッドの卒業制作の最優秀賞に選ばれ、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)や20th Annual HollyShorts Film Festivalなどのアカデミー賞公認の国際短編映画祭で上映。世界最大のCGの祭典SIGGRAPH Electronic Theater 2024では日本の学生作品として16年ぶりに入選を果たしていた。
8月15日にアカデミーの公式サイトでファイナリストの各部門7作品が最終審査に進むことが発表され、9月17日に同サイト上で金・銀・銅、いずれかを受賞する各部門の3作品が発表。そして、10月14日ロンドンで開催された授賞式において、見事『Origami』が銀賞を獲得。51年間の歴史ある同アワードにおいて、日本の教育機関の学生による日本の作品が受賞するのは初とされる(※)。
金・銀・銅の受賞作品は、来たる第97回アカデミー賞の短編映画部門の選考対象となる。
金森 慧監督よりコメント到着
「折紙」という日本文化をテーマにした作品が、世界のアカデミーの舞台で評価いただけたことを大変嬉しく思います。折紙は私の創作活動の原点であり、この作品はこれまでの集大成のようなものでした。これまでの学生生活を支えてくださった家族や友人、自由学園の皆様、デジタルハリウッドの皆様、応援してくださったすべての方に心より御礼申し上げます。
この受賞が、日々作品制作に励む学生たちにとって少しでも勇気となれば嬉しいです。
受賞作『Origami』とは
まるで大地から生命が息吹くように、正方形の紙が様々な折紙の生き物に折られていく様子を描くフルCGアニメーション作品。折紙は「切る」という破壊的な工程がなく、「折る」という「変形」だけを使って表現する。正方形からあらゆる形状に変形し、広げれば元の正方形に戻るという折紙の特徴を、土から生まれ土に還る「生命」と重ねている。
金森監督は小学1年で折紙を始め、高校の時に折紙とCGの数学的な造形感覚の共通性に惹かれたことがきっかけで、CGと映像の道に進むことを決め、デジタルハリウッド大学に入学。この作品は大学の卒業制作で、自身の創作活動の原点とも言える折紙をテーマに選び、2023年5月から技術的な検証を始め、10月から本格的な制作に入った。
これまでのアニメーション作品における折紙の表現は技術的に困難とされ、実際に紙では作れない形状を使用したり、折る前と後の形状をすり替えて折っているかのように見せたり、誤魔化して描写されることがほとんど。本作品では、金森監督自身の折紙の知識を生かし、CGソフトで折紙をするためのワークフローを自ら考案。紙の厚みや内側の構造に至るまで忠実に再現することを実現した。
作品に映るもの全てが実際の正方形の紙から折ることができ、金森監督がオリジナルでデザインしたメインキャラクターに加え、鶴や蛙などの日本の伝承折紙が数多く登場する。
(※)日本の作品(日本の学校出身者)が受賞するのは今回が初。なお、過去の受賞者の中に日本人の名前は見当たらないが、日本国籍を持つ人がいたかどうかは設立初期の国籍のデータがなく、確認が取れていないとのこと。
(シネマカフェ編集部)