映画『まる』出演、森崎ウィンさんにインタビュー!「堂本剛さんの丁寧なお芝居に刺激をもらいました」

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2024年10月18日 20:42  All About

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堂本剛さん主演映画『まる』に出演している森崎ウィンさんにインタビュー。堂本さんとの共演、荻上直子監督の撮影の裏側、スティーヴン・スピルバーグ監督との仕事や、キャリアについても語っていただきました! ※サムネイル写真:Kaori Saito(All About)
Photo:Kaori Saito(All About)

映画『まる』は、荻上直子監督の最新作。アートで身を立てられずにいた沢田(堂本剛)が描いた“まる”が、みるみるアート界に旋風を巻き起こし、沢田の人生が思わぬ形で転がり始めるという物語。

森崎さんの演じる沢田の同僚モーは、アーティストの沢田ではなく、コンビニ店員の沢田と接するミャンマーの青年です。まずはモー役についてお話を伺いました。

外国から日本に来た自分だからこそ分かるモーの気持ち

――荻上監督の最新作『まる』への出演の経緯とモーの役作りについて教えてください。

森崎ウィンさん(以下、森崎):プロデューサーの方から「森崎くんにお願いしたいので、ミャンマーの青年という設定にします」とおっしゃっていただいたんです。とてもうれしかったし、ミャンマー人の僕にしかできない表現があると思いました。

モーは日本に留学生として来て、外国人としての生きにくさや理不尽な思いも経験します。

ただ、マイナスなことが起こってもそれにいちいち反応していたらやっていけないよね、という彼のポジティブなマインドや彼が背負う悲しみなどは、僕も外国から来たのでよく理解できるんです。なので彼のバックボーンを自分の中で膨らませて演じました。
(C)2024 Asmik Ace, Inc.


――撮影では自分の中で膨らませたものを監督と相談しながら表現していったのですか?

森崎:そうですね。僕が考えたモー役に関するアイデアなどを荻上監督にお話しして、演じてみるという感じでした。モーという名前も僕がつけました。モーはミャンマーの言葉で「雨」という意味があるんです。

劇中のセリフで「雨の中を飛ぶ鳥」について話すシーンがあるので「そのセリフとモーという名前が実は関連していたら面白いんじゃないですか?」と僕が監督に提案させていただきました。

長回しのシーンは、役として生きることを考える

――素敵なエピソードですね! 森崎さんは荻上監督作への出演は初めてだと思いますが、荻上組の撮影はいかがでした?

森崎:荻上監督の演出はとても丁寧なんです。僕が一番好きだったのは、長回し(※)の撮影です。僕は長回しが大好きなんです。その長いワンシーンの中で役としていかに生きるか……ということを考えさせてくれるので。なので、荻上監督とお仕事をすることができて最高の気持ちでした。

※カットせずに長時間カメラを回し続けること
(C)2024 Asmik Ace, Inc.

――この作品はデジタルではなくフィルムで撮影されていますが、その点について撮影現場で演者として違いを感じることはありましたか?

森崎:先輩俳優の方から「昔はフィルム撮影だったから、撮り直しなんて何度もできなかった。NGなんか出せなかったんだぞ」と聞いたことがあったので、フィルム撮影は本番一発に懸ける思いが強いのかもしれないと思っていました。

フィルムだから芝居への向き合い方が変わるということはありませんが、先輩方が体験してきたフィルム撮影を実際に体験できたことはとてもうれしかったです。

堂本剛さんは心地よくて不思議な空気感の人

(C)2024 Asmik Ace, Inc.

――森崎さんが演じるモーは、コンビニ内で堂本剛さんとのシーンがほとんどでしたが、堂本さんとの共演について教えてください。

森崎:俳優としての堂本剛さんと対峙(たいじ)するのは初めてだったので、どんな感じなのか想像がつかず「緊張で話せなかったらどうしよう」など、少しネガティブになっていたのですが、撮影現場に行ったら、スッと静かにその場にいらっしゃって。

話しても話さなくても関係ないような心地良さがありました。すごく穏やかで不思議な空気をまとった方でしたね。

――堂本さんとの共演を経験して、刺激になったこと、学んだことはありますか?

森崎:たくさんあります。剛さんがワンシーンごとに荻上監督とじっくり話し合って撮影に臨んでいる姿が印象に残っています。撮影するシーンの沢田の気持ちや在り方などを必ず監督と共有していました。

自分の中だけで解決せず、監督と話し合って、納得して演じることの大切さを改めて学びました。
(C)2024 Asmik Ace, Inc.

――完成した映画を見て、いかがでしたか?

森崎:本当に素晴らしかったです。脚本を読んだときには、映像が想像できなかったのですが、完成した映画を見て、荻上監督の描く世界に堂本剛さんの魅力が加わって、唯一無二の世界が作り上げられていると思いました。

今までに見たことのない作品ですし、荻上監督と堂本剛さんのケミストリーが素晴らしい作品だと思います。

スピルバーグ監督から贈られた言葉

Photo:Kaori Saito(All About)

――キャリアのことについてもお話を聞かせてください。森崎さんは芝居だけでなく、歌手の分野でも活躍されてきましたが、2018年、スティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビューをしたときは衝撃でした。

森崎さん自身、あの作品からキャリアの変化は感じますか?

森崎:そうですね。『レディ・プレイヤー1』に出演して、森崎ウィンという名前を広く知っていただけましたし、海外の映画業界に対しても、僕みたいな俳優が日本にたくさんいることを知っていただける機会だったと思います。

ハリウッド映画に出演するなんて機会は、人生で何度もあるわけではないので、本当に貴重な経験でした。

クランクアップのとき、スピルバーグ監督に「俳優の仕事を続けて。英語をもっと勉強して、また撮影現場で会おう」と言われたことが忘れられません。
「僕はこの世界に向いているんだ」という自信になりましたし、自分の頑張り次第なんだと。スピルバーグ監督が背中を押してくれたんだと思います。

映画制作にもっと関わっていきたい

――その後はより活動の幅を広げて、初めて監督&主演を務めた『せん(SEN)』(2024)が、ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2024でジョージ・ルーカス アワードを受賞するなど、制作サイドでも活躍されていますね。

森崎:自分はエンターテインメントが好きなので、それに関わること、歌、芝居、監督などエンタメに通じるものであれば、やりたいことをやっていこうと思っています。

どこに軸足を置くかも考えていない……というか、それを決めるのはまだ早すぎると思っているので。ジャンル問わず、心が動けばどんどん飛び込んでいきたいです。

――今後、監督に再びチャレンジしようという気持ちは?

森崎:やっていきたいとは思っているのですが、「この脚本を映画化してほしい」と依頼されて演出するのではなく、自分が撮りたいと思えるテーマが生まれたら、そのときは監督として作品を作りたいと思っています。

あと目標として、俳優として作品に参加しながら、プロデューサーとしても作品に関わっていくことを考えています。

スタッフの方が、0から1を作り出し、俳優はでき上がった脚本をもらって演じていますが、僕は俳優として出演しつつ、0から1が生まれる制作にも関わりたいんです。海外では俳優がプロデューサーとして作品に関わる例はたくさんありますし、制作会社を持っている俳優もいますから。

――確かに海外では俳優の制作会社による映画は結構あります。

森崎:日本でも賀来賢人さんが制作会社を立ち上げましたし、そういう流れが来ているんじゃないかと感じています。僕は、俳優として作品の象徴になるのではなく、映画制作の中の俳優部というスタンスでいたいんです。

だから俳優目線で、映画制作の現場に対して作品をより良くするために協力をしたい。俳優も一つの作品に関わるスタッフですから、そうやって深く関わっていきたいと思っています。
Photo:Kaori Saito(All About)

――俳優としてお芝居の面白さはどこにありますか?

森崎:疑似体験のような感じで、いろいろな経験させてもらえるところです。役を通して、その役の呼吸を感じられたり、自分の知らなかった社会問題に向き合えたり、自分ならどうするだろうと考えたり……。僕の人生観を広げてくれるのが俳優の仕事だと思っています。

ジャッキー・チェンが大好きだった少年時代

――森崎さんは劇場で映画を見ますか? ミャンマー時代の映画体験などはありますか?

森崎:ミャンマーは映画産業が盛んな国だったんです。金曜、土曜、日曜日はみんな映画を見に行っていました。ミャンマーの芸能界が盛り上がっていた時代は、俳優はCMに出演するより、映画に出演するほうがギャラが良かったくらいです。

僕も子どもの頃、よくおばあちゃんと行っていましたね。Thamada Cinemaという映画館がお気に入りでした。ミャンマーはコメディー映画が人気なので、よく見ていました。ラブストーリーはあまり見せてもらえませんでしたね(笑)。

――好きなスターはいましたか?

森崎:ジャッキー・チェンですね。アクションと笑いがあり、子どもが見ても分かりやすい映画なので、ジャッキーの映画はよく見ました。ジェット・リーも好きだったな。カッコよかったですね。
Photo:Kaori Saito(All About)

――今でも劇場で映画を見ますか?

森崎:時間があるときは劇場で見たいのですが、最近は時間がなくてサブスク配信で見ることが増えました。シリアスな内容の映画は気力がないと精神的に疲れてしまうので、やっぱりアクションなど、スカッとして、カメラワークなども楽しめる作品を選ぶことが多いです。

――劇場で映画を見るとき、好きな座席はありますか?

森崎:僕は劇場の少し後方です。スクリーンで俳優さんがアップになったとき、その目線と同じ高さの位置にある座席が好きですね。
(C)2024 Asmik Ace, Inc.

――では最後に、映画『まる』について、森崎さんから映画ファンにメッセージをお願いします。

森崎:人生でちょっと迷いを感じたり、生きづらいと思ったりしたときに映画『まる』を見たら、もしかしたら答えが見つかるかもしれません。登場人物もみんな生き方に悩んでいるので感じるものがあるのではないかと思います。

あと荻上監督の言葉をお借りすると「あえて16mmフィルムで撮影しているので、劇場のスクリーンで見ないともったいないです!」。とにかく映像が美しい映画でもあるので、ビジュアルにも期待して見てください。

森崎ウィン(もりさき・うぃん)さんのプロフィール

1990年8月20日生まれ。ミャンマー出身。小学4年生の時に来日して、中学2年生でスカウトされて芸能界へ。2018年にスティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』で主要キャストに抜てきされてハリウッド映画デビュー。2020年『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近作は『嘘喰い』(2022)『おしょりん』(2023)『身代わり忠臣蔵』(2024)など。2024年、監督・出演をした短編映画『せん(SEN)』がショートショート フィルムフェスティバル&アジア2024のグランプリに値するジョージ・ルーカス アワードを受賞。

『まる』2024年10月18日公開

(C)2024 Asmik Ace, Inc.

美大卒だけれど芸術で身を立てられず、人気の現代美術家のアシスタントをしている沢田(堂本剛)は、事故でけがをして職を失ってしまう。そんなとき、自室の床にアリが1匹いるのを見て、導かれるように「まる」を描いてみたら、いつの間にかその「まる」がSNSで拡散され、正体不明のアーティストとして沢田は時の人になるのだが……。

監督・脚本:荻上直子
出演:堂本剛、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、おいでやす小田、濱田マリ、柄本明、早乙女太一、片桐はいり、吉田鋼太郎、小林聡美

(C)2024 Asmik Ace, Inc.

撮影・取材・文:斎藤香
ヘアメイク:KEIKO(Sublimation)
スタイリスト:森田晃嘉
(文:斎藤 香(映画ガイド))
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