“負け顔”と“転び方”がピカイチな29歳女優。復讐ドラマなのに笑わせる、あざとさゼロの演技

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2024年10月22日 16:01  女子SPA!

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画像:奈緒のInstagramより
 インパクトのあるタイトルのアニメや漫画が多い昨今、10月から放送が始まったドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系、火曜よる10時〜)もなかなかなタイトルだ。

 結婚式当日に婚約者・寺山衛(宮崎秋人)に逃げられた主人公・佐藤ほこ美(奈緒)。失意のどん底にいる時、金髪の謎のイケメン・葛谷海里(玉森裕太)に出会い、そのことをキッカケに自分を変えるためにボクシングを始める、というスポコンあり恋愛ありのラブコメ作品になっている本作。暴力的なタイトルではあるものの、安心して楽しく見られるドラマになっているが、その要因として奈緒という役者の上手さが挙げられる。

◆可哀想だけど笑えてしまう“負け顔”

 本作は「ほこ美が心を弄ばれた相手・海里を殴る」ということが軸になっており、いわゆる“復讐モノ”だ。基本的に復讐モノは作中の空気感はダークになるが、本作はあくまでラブコメである。画面は明るくサスペンス要素はほぼほぼ見られない。とはいえ、ほこ美の境遇を想像すればついつい同情したくなる。加えて、クズムーブを見せた衛や海里に対する憎しみが生まれ、ラブコメとして素直に楽しく視聴できなくなりかねない。

 それでも従来の復讐モノのように「クズを許すな!」「地獄に落としてしまえ!」とは思わせず、ラブコメとして成立させらせている。それは奈緒という役者の魅力があってこそではないか。

 1話冒頭、衛から“結婚式当日に婚約破棄される”という大凶イベントに遭遇するほこ美。式場内で衛を見つけて詰め寄るも、衛は逃げようとする。ほこ美は追いかけるが、足が絡まってしまい派手に転倒。顔を上げると涙目になりながら、鼻から血を出す。衛に対する怒りは覚えたが、それ以上にその見事な転びっぷり、なおかつその“負け顔”についつい笑ってしまった。

◆もし演じるのが奈緒じゃなかったら……

 役者の誰しもが負け顔をできるわけではない。負け顔ができない役者がほこ美を演じていたのであれば、派手に転んで鼻血を出したほこ美を見て、笑うことはそっちのけで過剰に同情していたかもしれない。また、海里のクズさにキュンキュンするどころか、海里が不幸になる“スカッと展開”を切望していたかもしれない。

 ただ、それではラブコメとしての方向性がブレて、面白さを大きく損うリスクが高い。奈緒の“やられっぷり”が見事なだからこそ、ラブコメと復讐モノという嚙み合わせの悪い2つの要素をミックスできているように思う。

◆可愛らしいけどあざとくなく、共感させるコケっぷり

 ちなみに、ラブコメと復讐モノだけではなくスポコン要素も含まれている本作。スポコンの主人公と言えばやはり“鈍臭さ”が求められる。才能に溢れ、器用に立ち回れる主人公であれば応援する気は起きない。ただ、1話ラストに海里に殴りかかるも華麗にかわされて転んだり、2話で縄跳びの飛び方がたどたどしかったりなど、ほこ美の鈍臭さをしっかり表現できており、ほこ美をスポコンドラマの主人公にしていた。

 昨年話題を集めたドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)でもわかる通り、その転び方の上手さには定評があった奈緒。本作でも、その可愛らしいけどあざとくなく、それでいて共感してしまうコケっぷりを遺憾なく発揮しており、ほこ美の成長を期待したくなる。

◆奈緒だからこそ乗りこなせている主人公

 また、未来のほこ美の姿なのか、1話冒頭ではリングに上がってボクシングの試合に出場していた。目の上は切れ、対戦相手からなかなかの滅多打ちに合うが、それでも「可哀想」よりは「頑張れ」と思わせられた。

 奈緒だからこそ、ラブコメ、復讐モノ、スポコンという多種多様な要素を含んだ本作の主人公を乗りこなせているように思う。知らず知らずのうちに沼に引きずり込もうとする玉森の演技が注目されている本作ではあるが、奈緒の演技からも目が離せない。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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