コストキャップ規則における手続き上の違反と、HRC UKの現況/渡辺康治HRC社長インタビュー(1)

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2024年10月24日 14:20  AUTOSPORT web

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2024年F1第19戦アメリカGPを訪れたHRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長(右)
 現地時間10月18〜20日にオースティンで行われた2024年F1第19戦アメリカGPに、HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長の姿があった。

 渡辺社長はFIA国際自動車連盟が9月11日に発表したHRCの2023年F1財務規則における手続き上の違反、そして2026年に向けて進められているホンダ・レーシング・コーポレーション・ユーケイ・リミテッド(HRC UK)の準備について語った。

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──まず9月11日にFIAから、2023年のF1財務規則の順守状況の審査した結果、ホンダ・レーシング(HRC)に手続き上の違反があったことが発表されました。何があったのでしょうか。

渡辺康治HRC社長(以下、渡辺社長):あれは2026年以降の話です。2026年からのコストキャップについては2023年1月1日から管理がスタートしていて1年間に使っていい金額の使い方について、記載に不備がふたつあったということです。ひとつは2026年のパワーユニット(PU)の開発に使う設備のメンテナンス代の費用の一部が漏れていたということです。

──なぜ漏れたのでしょうか。

渡辺社長:その設備はもともと2026年に使うつもりはなかったので、使わないという登録をFIAにしていたのですが、途中から使うことになったのです。もちろん、使うことが決まってからは、その分の償却費は入れたのですが、その設備のメンテナンス費だけ漏れていた。

 もうひとつは、2023年にコストキャップを始めるときに、2022年に買った部品で2023年に使うものは初年度だけ申請するようになっているのですが、その2022年に買った部品の一部が漏れていました。このふたつです。

──自己申告ですか。

渡辺社長:はい。なのでFIAもホンダが非常に真摯な態度だったので、大ごとにはしませんでした。

──PUマニュファクチャラーがコストキャップを行うのは初めてだと思います。大変ですか。

渡辺社長:本田技術研究所の一部を切り取ってHRCにしているので、そういう意味でいうと研究所のルールが残ったまま、別会社になっていて、非常に複雑です。たとえば、日本の会社は決算が4月1日に始まって3月31日に締めますが、F1は1〜12月で決算しなきゃいけない。1年に2回決算しなければならないのは、それだけでも大変です。

──さて、2026年に向けた話が出ましたが、HRC UKのスタッフの採用については、現在どうなっていますか。

渡辺社長:今年の2月にHRC UKという法人を設立しました。この組織はF1活動の前線基地で、以前までのHRD UKと基本的に同じ機能を持った組織となります。その中にはERSを含めたPUに関するエンジニアとメカニックが必要となるので、その採用を今年の春から開始しているところです。

 われわれとレッドブルとの契約には、一本釣りする(企業側が相手のスタッフに直接コンタクトしてスカウトする)行為は禁止しています。ただし、一般に採用の募集を行って相手企業のスタッフを採用することは契約違反になっていません。

 われわれはすでにその採用の募集を開始しており、さまざまなチームのスタッフから応募があります。その中には、ホンダが撤退する前にHRD UKに所属し、その後レッドブル・パワートレインズ(RBPT)へ移籍したスタッフもいます。

 まだ選考段階で、正式に採用とはなっていませんが、今後彼らを採用する上で、現在レッドブル側とガーデング・ピリオド(レッドブルを辞めた後、HRCで仕事を開始するまでの間に情報漏洩を防ぐ意味で一定期間の休暇をとらせること)が必要かどうかの協議を開始しています。

 というのも、彼に現在現場で仕事しているRBPTのエンジニアがHRCに移籍することになったとして、そのスタッフにガーデング・ピリオドを与えてしまうと、単純にRBPTの現場スタッフに欠員が生じるからです。

 われわれとレッドブルとのパートナーシップ関係は2025年も続くので、欠員が生じることはRBPTにとってもホンダにとってもメリットとはなりません。そもそも、レッドブルとRBのPU関連の現場スタッフはRBPTのスタッフもいれば、HRCのスタッフもいます。

 ならば、RBPTに籍を置いていたスタッフがHRCに移籍したのなら、HRCのスタッフとして現場で仕事してもらうほうが双方にとってメリットがあるのではないか。そういう話し合いを今後、クリスチャン・ホーナー代表と行う方向で話を進めています。

──HRC UKの場所は決定したのですか。

渡辺社長:組織として登記したばかりで、建屋はこれから決定しますが、かつてHRD UKがあったミルトン・キーンズかシルバーストンのどこかになると思います。かつてHRD UKだった建屋は現在レッドブル・パワートレインズの一部になっていますが、こちらの建屋も選択肢のひとつになっています。

 ただ、第5期のF1活動はバッテリーの開発や製造、そして輸送もHRC Sakuraが中心になりますので、第4期のHRD UKのときよりも建屋もスタッフの規模も小さくなると思います。したがって、HRD UKの建屋だと少し大きすぎるかもしれないので、そういったことも含めて検討して、年内には場所を決定したいと思います。

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