Tak Matsumotoこと、B’z松本孝弘のHR/HMバンド「TMG (Tak Matsumoto Group)」。今年20年ぶりに再始動を果たし、9月18日に2枚目のフルアルバム『TMG II』をリリース後、翌19日から全国ツアー「TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-」をスタート。そのファイナル公演が10月12日、東京ガーデンシアターで開催された。
すると突然、爆音でGuns N' Roses「Welcome To The jungle」がフルで流され、観客は総立ちに。すでにライブが始まったかのような大歓声の中、間髪をいれずに小和太鼓のような音色でリズムが刻まれ、琴風のサウンドで「THE STORY OF LOVE」のリフが奏でられると、オープニング映像が映し出され、ハードなギターリフからバトンイン。ファイアーボールが松明のように燃え上がり、遂にTMGのライブが幕を開けた。パワフルながらもメロディアスな旋律は、まさに松本節。ライブ冒頭から、あっという間にTMGロックの世界観に観客を誘ってくれる。続いてトリッキーなリズムから始まった「ENDLESS SKY」は、アルバムではドラムだけのフレーズで終わるが、この日はバンドのキメで終わるライブ仕様だ。
「TOKYO! GENKIですか? WE ARE TMG! WE ARE BACK!」
エリックのMCと重なるように松本のギターがうなりを上げると「THE GREAT DIVIDE」へ。ラウドながらも軽快さも持ち合わせたギターサウンドがロックなテンションを心地よくヒートアップさせていき、さらに「DARK ISLAND WOMAN」「JUPITER AND MARS」とたたみかける。続いてドラム台に腰かけたエリックが歌い始めたのは、ミッド・テンポの「FAITHFUL NOW」だ。ここまで上がりっぱなしだったロックの熱量に代わり、この曲では感情を高めていくようなボーカルを披露。その歌声は感動的で、その背景を松本のギターが彩っていく。なかでも、ギターソロの前半は甘く柔らかいサウンドを聴かせ、途中でギターのピックアップを切り替えると、後半は強めの音色で、まるで感情豊かに歌い上げるかのようなギターのニュアンスは圧巻のひと言だった。
その余韻を静かに噛みしめるかのような拍手が会場を包むなか、そこに女性のSEボイスが響き渡ると、ざわめきが起こる。観客の驚きがイントロで確信に変わると、大きな手拍子が自然発生的に起こり、ハードロック色の強い「Everything Passes Away」へ。エリックとジャックのツイン・ボーカル曲で、7拍子という変則的なリズムでありながらも、アウトロで大合唱となるというTMGならではの一曲だ。1stアルバム『TMG I』の収録曲だが、この曲に続いたのが、同じく1stアルバムのオープニングを飾った、盛り上がり必至の「OH JAPAN 〜OUR TIME IS NOW〜」というという意表を突くニクいセットリストに、客席からは歓喜と驚きの声が上がった。
そんな松本の真骨頂と言えるプレイが、立ち位置をステージのセンターに変えて披露されたソロ曲「Waltz in Blue」だった。この曲は2020年にリリースされたソロ・アルバム『Bluesman』に収録された3拍子のインストゥルメンタル曲だが、1曲を通して、細かくギターのピックアップを切り替え、ボリュームのコントロール、あるいは右手、左手の繊細なタッチによって音色を自在にあやつり、まるでボーカリストがその瞬間の感情を声色で表現するかのように、実に多彩なニュアンスをギターで表現していた。ロック・ギタリストと言うと、どうしてもハードな側面ばかりが注目されがちだが、こうした心の機微をギターという楽器で表現しうる力量こそが、松本が世界で評価されるひとつの大きな要因なのだろう。そんな松本のプレイを阿吽の呼吸で支えるYukihide "YT" Takiyamaのテクニックと音楽力も見逃せない。
そんなことが頭に浮かぶなかで、ステージではアコースティック調にアレンジされた MR.BIGの名曲「To Be With You」がカバーされたかと思うと、松本のソロ・インストゥルメンタル曲「Arby Garden」を再構築して新たに歌詞を乗せたメロディアスな「COLOR IN THE WORLD」、カウベルの軽快な4分音符のリズムと重量感のあるベース、そこに加わるギターリフが絶妙のマッチングを醸し出す「MY LIFE」、ハードロックの王道を行く「CRASH DOWN LOVE」と立て続けに新曲を聴かせ、それらとシームレスに、20年前に作られた「KINGS FOR A DAY」と「NEVER GOOD-BYE」が続く。
ここでスペシャル・ゲストとしてBABYMETALが登場し、松本が彼女たちとコラボレーションした「DA DA DANCE」を披露。この曲は、90年代のユーロビートをメタルサウンドで破壊しながらも調和させるというダンス・チューンだが、こうした曲でも自身のスタイルを崩すことなく、かつ、現代的なサウンドに彩りを加えていくところに、ロックに凝り固まらない松本の音楽的ボキャブラリーの広さを感じた。もちろん、百戦錬磨のバンドを従えて歌い、踊るBABYMETALのキュートさも、これまた圧倒的だった。
そしてBABYMETALのSU-METALがそのままステージに残り、ラストに「ETERNAL FLAMES(feat. BABYMETAL)」が歌われて本編が終了。アンコールでは、ステージ後方に巨大な日本国旗と星条旗が掲げられて、Night Rangerの「(You Can Still)Rock in America」が歌われると、このバンド、そして今回のTMG再始動を象徴する曲と言っても過言ではない「GUITAR HERO」を最後に演奏し、ファイナル公演は大団円を迎えた。
■TMG『TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-』セットリスト 2024年10月12日(土)東京ガーデンシアター 01. THE STORY OF LOVE 02. ENDLESS SKY 03. THE GREAT DIVIDE 04. DARK ISLAND WOMAN 05. JUPITER AND MARS 06. FAITHFUL NOW 07. Everything Passes Away 08. OH JAPAN 〜OUR TIME IS NOW〜 09. Waltz in Blue(Tak Solo) 10. To be With You 11. COLOR IN THE WORLD 12. MY LIFE 13. CRASH DOWN LOVE 14. KINGS FOR A DAY 15. NEVER GOOD-BYE 16. DA DA DANCE 17. ETERNAL FLAMES Encore 18. (You Can Still) Rock in America 19. GUITAR HERO