10月9日、プレミア12の代表メンバーが発表された。辞退者が相次いでいるものの、ポジティブにとらえれば若手が経験を積む絶好の機会となるはずだ。本記事では、野球著作家のゴジキが「選んでほしかった選手」を紹介したい。
◆フレッシュなメンバーで挑む形に
今回、チーム最年長は31歳の源田壮亮。つまり、選出されたメンバーは若手が多い。監督を務める井端弘和氏が「非常にバランスがとれたと思う。若い選手に期待をしたい。選んだのはこちらなので、失敗をおそれず思い切ってやってもらいたい」と話しており、若手に期待していることがうかがえる。
おそらく中長期的な視点で代表チームを育成する意図があるのではないか。
◆経験豊富な甲斐を招集してほしかった
捕手に関しては、レギュラー第一候補だった山本祐大が怪我で長期離脱中。当然ながら代表選出は見送られた。それにより、昨年開催された「アジアプロ野球チャンピオンシップ」に出場した古賀悠斗や坂倉将吾に加え、打力がある佐藤都志也が選出された。
しかし、バランスを考えるとWBCや五輪など、フル代表を経験した選手を選んでもよかっただろう。文字通り“守備の要”にあたるポジションだからこそ、直近の調子よりも実績ベースで選んでも良かったと思う。具体的に挙げるとすれば、ソフトバンクを優勝に導き、東京五輪でも活躍した甲斐拓也。経験豊富であり、仮にベンチメンバーだったとしても安心感を担保してくれる存在だ。
◆村上&岡本不在の野手陣。キープレイヤーは?
今シーズン二冠王に輝いた村上宗隆は、右足親指の骨折で今大会の招集は見送られた。また、WBCでベストナイン級の活躍を見せた岡本和真も左第五腰椎分離症のため辞退することになった。さらに、アジアプロ野球チャンピオンシップで活躍した万波中世も同じく辞退。
そのため、野手陣は牧秀悟が中心になると予想される。牧の課題は「日本シリーズまで戦い抜いた疲れ」と、「主軸としてのプレッシャーに打ち勝てるか」になりそうだ。余談だが、実績のある山川穂高やこの2年で殻を破った細川成也を選出してほしかった。
その他、メキシコ代表のパトリック・サンドバルがWBCで一番印象に残っていた打者として挙げた源田にも注目したい。サンドバルが「しつこかった」ともらした“嫌らしい打撃”を武器に、アテネ五輪や2006年WBCにおける宮本慎也のような立ち位置でチームを引っ張ってほしいところである。
一方で投手陣は、トップクラスと言っていいだろう。戸郷翔征や大勢、高橋宏斗と言ったWBCを経験した実績組を中心に、アジアプロ野球チャンピオンシップに選ばれた隅田知一郎や早川隆久、横山陸人、清水達也がいる。
強いていうならば、佐々木朗希や宮城大弥、今井達也あたりを選んでもよかったと思える。ただ、実績十分の若手から中堅の投手が不在でも他国と渡り合える実力は充分にあるだろう。
◆過去には大谷翔平も出場していた
ここからは過去に大会について軽く振り返ってみよう。
2015年大会は大谷も出場しており、大会を通して圧巻のピッチングを披露。先発した2試合では、この大会で優勝した韓国打線を完璧に抑えるなどの活躍を見せて最優秀防御率を獲得した。
大谷はこの年「投手のみ」の選出だったが、もし大会の開催が1年ずれていたら、野手としての姿も見ることができたはずだ。いちファンとしては国際大会での二刀流が見たかった。
2019年大会は、僅差や劣勢の場面における試合運びの巧さや、選手の応用力が素晴らしいものがあった。例えば、スーパーラウンドの初戦のオーストラリア戦では、7回裏までリードを許す展開だった。だが、周東佑京が代走で出場し、二盗と三盗を難なく決め、源田のセーフティスクイズで同点に追いつく場面に痺れたファンは多かっただろう。
また、鈴木誠也が日本の4番として実力を見せつけてチームを優勝に導き、自身も文句なしのMVPを獲得。チームが逆境のなかでホームランを放つなどの活躍で、打率.444、3本塁打、13打点、OPS1.566と圧倒的な成績を残し、他の打者と比較しても頭ひとつ抜けていた印象だ。
<TEXT/ゴジキ>
【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55