【F1】角田裕毅にセナの不思議な力が舞い降りれば...レッドブル昇格に向けて勝負のサンパウロGP

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2024年11月01日 17:01  webスポルティーバ

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 サンパウロの空に、アイルトン・セナが駆ったマクラーレン・ホンダMP4/5Bの甲高いエンジンサウンドが響いた。

 あの悲劇からもう30年。今も変わらずこの国の英雄であり続けるセナを追悼すべく、ホンダとマクラーレンが手を携えて、1990年のチャンピオンマシンをインテルラゴスへと送り込んだ。車体はマクラーレンのスタッフが、そしてエンジンはHRC Sakuraのスタッフが現地まで帯同して、サンパウロGPの週末にその雄姿を蘇らせたのだ。

 RBPT(レッドブル・パワートレインズ)にパワーユニットを供給するホンダの現場オペレーションを統括する折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、ホンダとセナ、そしてブラジルの絆を確かめるようにこう語った。

「HRC Sakuraからヒストリックカーをメンテナンスする専門のメンバーが現地に来て、マクラーレンのメンバーと一緒に準備をしています。昨日サーキットに来た時にちょうどパドック裏の駐車場に設けられたガレージで暖機運転をしていたんですが、やっぱりこのブラジルで我々のマクラーレン・ホンダのマシンが走るのを見るというのは感慨深いものがありますし、ホンダとしてこうしたイベントの実現に協力できたのは非常にうれしいことです」

 セナの没後25年だった2019年には、1988年に16戦15勝を達成したマクラーレン・ホンダMP4/4がこのサーキットを走った。その週末、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがレースを制し、そして2位には最終コーナーからの加速競争という劇的なフィニッシュでトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーが入り、自身初の表彰台を獲得するとともに、ホンダ勢が1-2フィニッシュを飾った。どこか、セナの不思議な力を感じるような週末だった。

 今年も、そんな週末になるのだろうか。

【チャンスを逃したのは僕のせい】

 1週間前のメキシコシティGPで失望の結果に終わった角田裕毅(RB)は、すっかり気分をリフレッシュしてこのサンパウロにやってきた。

 たしかにメキシコではチームとしてもノーポイントに終わってしまったが、マシンに速さがあったのはポジティブな要素だった。オースティン(アメリカGP)に続いて改良を加えたフロアが期待どおりの効果を発揮してくれたのは、今後に向けても大きなポイントだった。

「メキシコでポジティブだったのは、マシンに加えた変更(フロアのアップデート)がパフォーマンスを前進させてくれたということです。間違いなくメキシコではほかのサーキットよりもパフォーマンスはよかったですし、予選でも速さがあって、勝てていたかどうかはわかりませんがハース勢と同等レベルで戦えていたと思います」

 決勝のスタート直後のクラッシュはレーシングインシデントで仕方がなかったとはいえ、悔やまれるのは予選Q2のクラッシュだった。

「だからこそ予選でそのチャンスを逃すべきではなかったと思いますし、チャンスを最大限に生かすべきだったと思います。それができるマシンがあったのにできなかったのは、僕のせいです」

 角田自身は特段プッシュした意識はなかったが、無意識のうちに遅らせたブレーキングでロックアップし、Q3に進むことができなかった。

 インテルラゴスは長いストレートとインフィールドセクションのバランスが問われるサーキットで、空力効率に苦しんでいるRBにとって決して得意なサーキットとは言えない。しかし、昨年は苦戦が予想されるなかでスプリント6位という驚異の挽回を見せており、今年も一連のフロアアップデートでそれが改善されていれば、なんとかハース勢と戦えるかもしれない。

「インテルラゴスはツイスティでアップダウンもあって、1〜2コーナーのエス・ド・セナ(セナのS字)の下り坂がまさにそうですけど、走っていてとても楽しいサーキットです。今年はコース全体が再舗装されていて、スプリント週末でその新舗装を試すフリー走行が1回しかないので、オースティンがそうだったように土曜日のスプリントレースが決勝に向けたロングランペースを見るのにベストなセッションになると思います。今週はハース勢を打ち負かすことだけを考えています。天気予報的には雨の可能性もあるので、さらに面白い展開になるかもしれないですね」

【ペレスのシート喪失へカウントダウン】

 予選が行なわれる土曜午後の降水確率は40%、そして決勝の降水確率は60〜70%。そして、降るとしたら雷雨になる可能性が高いという予報になっている。

"湖の間"という意味のインテルラゴスは、まさに湖に囲まれていて天候が変わりやすく、雨が降る時はあっという間に空が暗くなって激しい土砂降りになる。

 セナがなかなか勝てなかった母国ブラジルで初めて勝った1991年も、ギアボックスが壊れ6速ホールドで走らなければならない苦境を救ったのは、最終盤の雨だった。2度目にして最後の勝利となった1993年も、豪雨のなかを快走しての優勝だった。

 そんな不思議な力が、今年は誰の背中を押すのか。

 セルジオ・ペレスの不振が続き、前戦メキシコシティではQ1敗退からの無得点。そのペレスと接触し不適切なジェスチャーで批判を浴びたリアム・ローソンも無得点に終わった。

 ペレスのシート喪失の噂も日に日に色濃くなるなか、そうなった場合には角田とローソンのどちらがレッドブルに昇格することになるのか、そういった雑音も角田の耳にはどうしても入ってくる。

 ここ一発で速さと強さを見せればレッドブル昇格に大きく近づくことも事実であるだけに、オースティンやメキシコシティで見せたような失態は絶対に繰り返すことはできない。そのうえで、攻めて走り結果を掴み獲らなければならない。それは決して簡単なタスクではない。

「間違いなくマックス(・フェルスタッペン)は今のベストドライバーですし、レーシングドライバーというのは誰だってそういうドライバーと戦いたいと思うものです。彼はたくさんのスキルを備えているので、一緒に走れば彼から学べることもたくさんあるでしょうし。でも、どうなるかはわかりませんし、今は自分がやるべきことに集中しています。(RBで)自分のやるべきことがまだ果たせていませんから」

 何が起きるかわからないこのブラジルの週末を、角田裕毅はキャリアの大きな一歩にすることができるだろうか。

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