11月1日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで、WEC世界耐久選手権第8戦『バーレーン8時間レース』の公式予選が行われ、トヨタGAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)がポールポジションを獲得した。
予選とハイパーポールを終えた金曜日のバーレーンのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■ブレーキ交換をしていた8号車トヨタ
ハートレーはバーレーンで3回連続のポールポジションを獲得した。トヨタにとっては7月のサンパウロラウンドに続いて今シーズン2回目のポールポジション、8号車にとっては今季初のポールポジションとなった。
ひとつのマニュファクチャラーがフロントロウを独占するのは、今シーズン4回目だ。トヨタはブラジルで、フェラーリは4月のイモラと8月下旬のサーキット・オブ・ジ・アメリカズでそれぞれグリッド最前列をロックアウトしていた。
ちなみに、ポールポジションを獲得したマシンが最後に優勝したのは、昨年のバーレーンまで遡る。このレースでは、ハートレー、ブエミ、平川が優勝を果たしている。
予選後の記者会見でハートレーは、8号車トヨタが一晩で4輪のブレーキをすべて交換し、複数のセットアップ変更と相まって、金曜日にパフォーマンスが大幅に向上したことを明らかにした。
「昨日のブレーキには満足できなかったが、特に問題は見つからなかったため、部品を交換しただけだ」とハートレー。
「(木曜日は)8号車にとってスムーズな一日ではなかったため、3人のドライバー全員のフィーリングの面で好転した。自信が大幅に増したんだ」
■バーレーンに強いユナイテッドAS
一方、マクラーレンは今シーズン、LMGT3メーカーとして初めて最前列を独占。ジョシュ・ケイギルがユナイテッド・オートスポーツのチームメイト、ジェームス・コッティンガムをわずか1000分の2秒差で破った。
マクラーレン720S GT3 Evoにとっては、ル・マン24時間レースでのインセプション・レーシングのブレンダン・イリベに続く、今シーズン2度目のポールポジションとなり、ランボルギーニに次いでLMGT3メーカーで複数回のポールポジションを獲得したふたつ目のマニュファクチャラーとなった。
一方ユナイテッド・オートスポーツは、バーレーンに7回出場して5度目のポールポジションを獲得している。これにはLMP2クラスにおける成功も含まれている。
コッティンガムは、ケイギルに僅差でポールポジションを許したことに、フラストレーションは感じていない。
「僕らのタイムは非常に接近しており、まったく同じだった」とコッティンガム。
「メダルを取れなかったのは残念だ! このサーキットは、このクルマに合っているようだ。とくに日が沈むとね。FP2ではマシンがとても良くチューニングされていて、本当に速いと感じた」
ユナイテッドの2024年の進歩について、コッティンガムは次のように付け加える。
「僕らは全体的に大きな改善を遂げた。シーズンの初めは確かに強いチームではなかったが、今は強いチームだ。 2台のクルマは、互角だ。今年の初めは、僕がジョシュよりアドバンテージを持ってと思うが、彼はシーズン後半に追い上げてきたね」
■ミディアムとハードをミックス使用?
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、フリープラクティスで参戦チームがあらゆる組み合わせを試したのを見て、ハイパーカーチームが明日のレースでミシュランのミディアムとハードのタイヤコンパウンドをミックスして使用すると予想していると、選ばれた記者たちに語った。
また、ポルシェ・モータースポーツの責任者、トーマス・ローデンバッハは、明日のタイトル決定戦を前に、ドライバーズとメーカーズの世界選手権の両方を「自分たちの手中にあるように感じている」と語った。
「ここでとても良い仕事をすれば、チャンピオンシップを獲得できる良い位置にいると100%確信している」
■四輪脱輪ではなく“二脱”と主張
プロトン・コンペティションのライアン・ハードウィックは、77号車フォード・マスタングGT3での最初の予選で走ったラップが削除されたことに落胆した。
「カウントされたのは、ウォームアップ・ラップだけだった」と彼は言った。
「ターン5のブレーキングゾーンで、トラックリミット違反の判定を何度か受けた。レースコントロールに写真か何かを要求しようとしている。ライブオンボードカメラがあるので、戻ってそれを見たけど、僕の2輪はトラック上に残っていたんだ」
■ハイパーポールの常連たち
これで今季すべての予選とハイパーポールが終了した。ル・マンを除く通常のWECラウンド7戦のみで数えると、ハイパーカークラスで全戦でハイパーポール進出を果たしたのは2台のみ。51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)と5号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)だった。
シーズン途中でエントリーを取りやめたイソッタ・フラスキーニを除けば、一度もハイパーポールに進出できなかったのは36号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)の1台のみだ。
一方LMGT3クラスでは、アイアン・デイムスの85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo2、ハート・オブ・レーシングチームの27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3、59号車マクラーレン、AFコルセの54号車フェラーリ296 GT3という4台が、ハイパーポール“皆勤賞”を記録している。
18台が争うこのクラスでは、87号車レクサスRC GT3(アコーディスASPチーム)の1台のみが、年間を通じて一度もハイパーポールに進出できなかった。
■ミック・シューマッハーの来季は?
アルピーヌのドライバー、ミック・シューマッハーは、チーム代表のフィリップ・シノーが来年もこのドイツ人元F1ドライバーをチームに残せると自信を示した後、2025年の計画についてはまだ何も知らせていないと語った。
ザウバーの2025年F1グリッドの最後の空席について、シューマッハーは次のように述べている。
「公式に何も伝えられない限り、僕は何も決定できない。それが終われば、もっと詳しく知ることができるが、今日の時点では分からない」
■口を閉ざすロッテラー「ポルシェに残るチャンスはある」
今大会前に、2024年をもってワークスチームであるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツを離れることが発表されたアンドレ・ロッテラーは、将来の選択肢については口を閉ざしている。しかし、ポルシェとの関係を延長する可能性は否定しなかった。
ル・マン24時間レースで3度の総合優勝を経験しているロッテラーは、Sportscar365に次のように語った。
「ポルシェに残るチャンスはある。でも、このレースに集中して、それに気を取られないようにしたい。そして、その後で決める。選択肢はいくつかある。それはいいことだ。でも、勝つことはどのドライバーにとっても目標だ。ただ参加するためだけにレースをしたいとは思わない」
ロッテラーは、ヒョンデ傘下のジェネシスが2026年にWECに参戦することが見込まれる中、最近発表されたジェネシスLMDhプログラムの開発ドライバーの候補になるのではないかという憶測について、コメントすることを拒否した。
■予想どおりの6名か
キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAの2025年シーズンに期待される6人のドライバーが、バーレーンで写真撮影を行っている場面を目撃された。
すでに報じられているとおり、キャデラックの現ドライバーであるアレックス・リンとアール・バンバーに、セバスチャン・ブルデーと、現JOTAドライバーのウィル・スティーブンス、ノルマン・ナト、ジェンソン・バトンが加わる予定だ。公式発表は11月中旬に予定されている。
一方、現在JOTAに所属するフィル・ハンソンはフェラーリ陣営のAFコルセへと移籍することが決まったが、オリバー・ラスムッセンはWECから完全に撤退する見込みだ。ただし、このデンマーク人ドライバーは、2025年のプログラムは間もなく明らかになると示唆している。
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バーレーン8時間レースは11月2日土曜日の現地時間14時(日本時間20時)にスタートが切られる予定だ。