WOWOW連続ドラマW-30『ハスリンボーイ』は、同名原作漫画の実写ドラマ化作品。「ハスリン」とは、非合法な商売で稼ぐという意味を持つヒップホップの俗語が発祥です。
主演の間宮祥太朗さんは真面目な大学生のタモツ役。人生の窮地を救ってくれた九条(玉山鉄二)に恩返しをするために裏社会に足を踏み入れてしまう……という物語です。まずは出演依頼が来たときのことや共演者についてお話を伺いました。
裏社会に入り込むタモツの役作り
――『ハスリンボーイ』の原作は漫画ですが、読まれましたか?間宮祥太朗さん(以下、間宮):出演が決まってから原作漫画も拝読しました。台本を読んだとき、映像化したときに面白くなりそうだと思いました。
――原作と脚色した台本を読んだ上で、どのように役作りをされたのでしょうか?
間宮:視聴者の方たちは、タモツの目線を通して裏社会を知っていくことになるので、普通の感覚を持った親しみやすい主人公を素直に演じようと思いました。ただタモツは時々裏社会に生きる人たちをハッとさせる行動を取ることもあるので、そこはキャラクターにフックをつける感じでギアを上げていこうと考えました。
闇バイト問題にもリンクしているタモツの物語
――タモツは奨学金を返済するために複数のバイトを掛け持ちして、やむを得ないきっかけとはいえ、闇社会にも入り込んでしまいます。今、闇バイトが社会問題化しており、タイムリーなテーマともいえますが、どのように考えましたか?間宮:インターネットを通じて犯罪につながるというニュースを耳にすることが増えたように感じます。以前は、怪しいサイトは入り口から怪しくてすぐに危険だと分かったのですが、最近はSNSなどで個人と個人のやりとりができたり、巧妙になっていると感じます。
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――このドラマに描かれている世界はフィクションですが、現実問題としても考えられますよね。
間宮:原作者の草下シンヤ先生が綿密に取材をされているので、原作漫画が持っているリアリティーがドラマの根底には流れていると思います。
――タモツが“ハスリンボーイ”の経験を経て、得たもの、失ったものはあると思いますか?
間宮:何を得たか、失ったかというより、誰もが人生において大きな経験をすることで一皮剥けるということはあると思うんです。タモツもそういう意味ではさまざまな経験を経て、主人公としての成長が感じられる物語になっていると思います。
芝居のすごさを知ったのは玉山鉄二さんの演技
――間宮さんのキャリアについてもお話を聞かせてください。もともと映画が大好きで、映画業界に入りたいという思いが強かったそうですが、映画好きになったきっかけ、俳優に興味を持ったきっかけは?
間宮:僕はもともと映画が好きだったのですが、俳優の芝居のすごさに気付いたきっかけは、このドラマで九条を演じている玉山鉄二さんの存在が大きいんです。子どもの頃は、両親の影響で洋画を見ることが多かったのですが、映画『手紙』を見たときに鉄二さんの芝居にグッと心をつかまれました。
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そのときから、洋画だけでなく、いろいろな映画作品を借りてたくさん見ました。エンタメとして楽しむだけでなく、俳優の芝居も見るようになり、見方が一歩、奥に入ったような感じがしました。
――その話は玉山さんにしたのでしょうか?
間宮:お伝えしました。「うれしい、そんなこと言ってくれて」とおっしゃってくださいました。
映画の世界に自分が存在する喜び
――映画『手紙』を見てから、俳優になりたい気持ちが強くなったのでしょうか?
間宮:すぐに俳優になろうと思ったわけではなく、学生時代は音楽にも興味があったので、映画と音楽の二つが僕の趣味でした。当時はまだ中学生ですから、将来の仕事を決めることなく、いろんな可能性があるなあと思っていたのですが、あるとき、この業界に入るチャンスが巡ってきて、俳優の仕事を始めることになったんです。
――お芝居の世界に入って、さまざまな経験をされたと思いますが「こんなに大変なんだ」と思ったり、逆の感情が生まれたりしたことはありませんか?
間宮:確かにこの世界に入っていなかったら、今とは違った感覚で映画を見ていたかもしれません。映画を見ながら「このセットで撮影するのは大変そうだな」とか、そんなことも考えたりするようになりましたから。でも、やはり作品作りに参加するのは楽しいですし、映画の中に自分が存在することの喜びというほうが大きいです。
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17歳で経験した舞台がターニングポイント
――俳優として順調にキャリアを重ねていらっしゃいますが、ターニングポイントになった作品はありますか?
間宮:作品ごとに影響を受けていると思うのですが、2010年に出演させていただいた長塚圭史さん演出の舞台『ハーパー・リーガン』です。当時、17歳だったのですが、学園ドラマのレギュラーエキストラなどの役が多かった自分が、初めてプロの芝居の舞台に立たせていただいたんです。
主演の小林聡美さん、共演者の皆さんも生粋の俳優ばかりで、そんなすごい人たちに囲まれて芝居をしたとき、初めて生身の役者を感じたというか、芝居の仕事ってなんて面白いんだろうと思いました。
――17歳で素晴らしい経験をされたんですね。それからたくさんの作品に関わっていらっしゃいますが、演技の醍醐味(だいごみ)とはなんでしょう?
間宮:いつも自分でコントロールしながら演じているのですが、時々ふと、自分が演じている役と目の前の相手役と、もっというと見てくださっているお客さまともつながる瞬間を感じることがあるんです。バチバチッと全てがハマる瞬間。狙って起こせるものではないし、この仕事でしか感じられないのではないかと思います。
――ミラクルな瞬間なんですね。
間宮:そうですね。いろんな要因がベストな状態で積み重なって、化学反応みたいにピタッとハマらないと感じられない特別な瞬間なんだと思います。
見る作品と気分によってベスポジは変わる!
――All Aboutでは取材した皆さんに映画の思い出や劇場で見た映画、好きな映画館の座席についても聞いているのですが、間宮さんは映画館で映画をよく見ますか?
間宮:映画館で見るのは好きなんですが、昔に比べて行く回数は減りましたね。以前はいろいろな映画館に行って見ていました。ポレポレ東中野で青山真治監督作品3本立てなど、ぶっ通しで9時間くらい見ていました。
――青山監督作は長尺の映画がありますよね。
間宮:僕が見たときは『EUREKA』『サッド ヴァケイション』『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』の3本立てでした。
映画館で見るほうが、音響などの設備が整っているからいいのですが、内容によっては家で鑑賞しても集中できることもあります。あと、お客さんの反応が気になる作品もあるので、そういうときは映画館で見たくなりますね。
――映画館で映画を見るとき、座席にこだわりはありますか?
間宮:見る作品によって違いますね。真ん中の席で周りのお客さんの反応も含めて作品を楽しみたいこともありますし、「この映画は孤独と向き合いたい」と思ったら、一番後ろで見ますし。作品によっては空いている映画館で見たいと思ったりすることもあります。
――作品と気分で座席を変えていくのも楽しそうですね。最後にこのドラマを見た感想とおすすめポイントを教えてください。
間宮:とにかくテンポが良くて、1話を見たら「はい、次!」と続きに手が伸びる作りになっています。裏社会を描いているけれど、ポップなところもあるし、スピード感とエッジの効いた部分もありますから、すごく見やすいのではないかと思います。タモツを通して裏社会の闇をのぞき見るような感じで楽しんでいただければうれしいです。
間宮祥太朗(まみや・しょうたろう)さんのプロフィール
1993年6月11日生まれ。神奈川県出身。2008年に俳優デビュー。2016年『ニーチェ先生』(読売テレビ)でドラマ初主演。2017年『全員死刑』で映画初主演。主な作品は映画『ライチ☆光クラブ』(2016年)『帝一の國』(2017)『殺さない彼と死なない彼女』(2019)『東京リベンジャーズ』シリーズ(2021、2023)『破戒』(2022)。近作は『変な家』『劇場版ACMA:GAME 最後の鍵』(2024)。最新作は『アンダーニンジャ』(2025年1月24日公開予定)。
撮影・取材・文:斎藤香
ヘアメイク:三宅茜
スタイリスト:津野真吾(impiger)
衣装クレジット:LES SIX(MATT.)(ジャケット、パンツ)、Christian Louboutin(靴)
WOWOW連続ドラマW-30『ハスリンボーイ』
大学の奨学金510万円を卒業までに完済しようとバイトに励む大学生のタモツ(間宮祥太朗)は、仮想通貨の罠にハマり、200万円の借金を背負うことに。自分の窮地を救ってくれた道具屋(※)の九条(玉山鉄二)の代わりに、タモツは道具屋になり闇社会に入っていく……。
※非合法なツールを扱う闇社会の専門職
2024年11月1日(金)配信・放送スタート(全8話)
第1話無料【WOWOWプライム】【WOWOW4K】【WOWOWオンデマンド】
出演:間宮祥太朗、毎熊克哉、横田真悠、一ノ瀬颯、玉山鉄二ほか
原作:草下シンヤ・本田優貴『ハスリンボーイ』(小学館ビッグスピリッツコミックス刊)
監督:鈴木浩介
脚本:小寺和久、掛須夏美
音楽:堤裕介
プロデューサー:廣瀬眞子、笠置高弘、河相沙羅
製作:WOWOW トライストーン・エンタテイメント『ハスリンボーイ』
(C)草下シンヤ・本田優貴/小学館 (C)2024 WOWOW INC.
(文:斎藤 香(映画ガイド))