予選総合2番手となった8号車ARTA MUGEN NSX-GT、前回の屈辱を果たせるか スーパーGT第8戦モビリティリゾートもてぎ、ウエットコンディションとなった予選でワン・ツーを飾ったホンダ・シビック陣営。この2台は優勝争いだけでなく、GT500のチャンピオン争いの鍵を握ることになりそうだ。ポールポジションの64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTに続いて、2番手グリッドを獲得した8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTのふたりに予選の手応え、そして決勝への抱負を聞いた。
まずは予選Q1を担当して3番手タイムをマークした野尻智紀に予選について聞く。
「レインでここ最近、走っていなかったのと、ひさびさのGTの予選だったので(第5戦延期、第6戦はフリー走行順位、第7戦はワンデーで松下信治が担当のため)楽しみなところもありましたけど、緊張もありました。幸い、今回持ち込んだクルマ(のセットアップ)が決まっていたので、久しぶりでもすごく自信を持ってドライブできた。これまでここに向けて進めてきたことが、ある程度、形になったのかなと思うので、チームにはすごくいいクルマを用意してくれてありがたいなと思っています」と、野尻。
アタックでは1周目に四輪脱輪(四脱)するシーンも見られたが、最後のアタックを見事に決めた。
「アタックは最後、2周連続で行っていたのですけど、1周目のアタックで3コーナーで軽くコースオフして四脱してしまったので、次の週はコースオフのないように、ちょっと置きにいきながらアタックをまとめた感じでした」
ということは、もっと攻めることもできたということか。
「そういう感覚はもちろんありますし、レインタイヤのテスト(限界走行)をしている身でもないので、そのあたりは相当、神経を使ってプッシュしていかないといけないので、ビハインドもあったかと思うのですけど、なんとか、乗り越えられたかなという感じです」
その野尻は、予選Q2を担当する松下信治にはどんなアドバイスを送ったのか。
「午前中のフィーリングとどのあたりが違うとか。いいフィーリングに変わっていて、特別に新しく見えてきたクルマの性格みたいなものはなかったのでm『午前中のクルマのままで、さらに曲がるようになったよ』と。あとは『こういうところは注意してね』と。コースの状況は雨量が少なくなってきているのでわかると思うので、クルマの情報をメインで伝えたという感じですね」
そのアドバイスを受けた松下は、見事予選Q2でトップタイムをマークする走りを見せたが、予選後は至ってクールだった。
「周連続でアタックしようと思っていて、1周目のターン1で飛び出してしまって『痛いなあ』と思っていたのですけど、幸いにももう1回アタックする時間が残っていた。クルマも朝の走行から予選Q1を含めて、徐々にステップを踏んでいっていて、本当に乗りやすい状態だったので、普通に走ったら(Q2)トップタイムが出たな、という感じでした。普通に頑張りました」
松下のQ2トップと、野尻のQ1の3番手を合算して、2番手で決勝を迎える8号車ARTA。前回の第7戦オートポリスでは、無線のトラブルもあってFCY(フルコースイエロー)中のピットインでペナルティを受けるという悔しい結果となっただけに、明日の決勝に向けても、鼻息が荒い。
「今回、勝てればまだチャンピオンの可能性もゼロではないと思いますし、そのつもりで今週のもてぎに入っているので、なんとかというより、なんとしてでも優勝をもぎ取って、最終戦を楽しみたいなと思います。シビックでの最初のもてぎ戦ですし、なんとか勝ちたいです」と野尻。
松下も「いいポジションですし、レースペースは前回のAP(オートポリス)でも悪くなかったので、とにかく自分たちのベストを出して優勝目指して、ミスなく行きたいなと思います。頑張ります」と、抱負を語る。
8号車の後の3番グリッドには、ランキングトップの36号車au TOM'S GR Supraが続いているだけに、ホンダ陣営としてもチャンピオン争いを考えると、8号車、そしてポールの64号車の2台は36号車を前に行かせるわけには行かない。
ホンダのスーパーGTプロジェクトリーダーを務める佐伯昌浩エンジニアも、「なんとか2台で大量得点を取って、ライバル陣営のポイント獲得を防いでくれれば」とチャンピオン争いに期待を込める。
ホンダ・シビック vs GRスープラという構図になったもてぎの予選、果たしてドライコンディションが濃厚な決勝は、どのような展開になるのだろうか。
⚫︎苦しいヨコハマタイヤ陣営、19号車WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資「厳しかった」
今回のウエットとなった予選で、予選Q1、そしてQ2ともに最下位の15番手となってしまった19号車WedsSport ADVAN GR Supra。予選Q1を担当した国本雄資に苦しい状況を聞いた。
「予選Q1のように雨量が多い状態だと、タイヤの温まりに時間がかかってしまって、ピークの(タイヤ)温度に上がるまでに予選が終わってしまうような状況でした。そのタイヤが、このコンディションの中で僕たちの中では一番グリップするだろうというタイヤだったので、ちょっと厳しかったですね。雨量としても、最終コーナーはBS(ブリヂストン)勢はまったく気にならない様子でしたけど、僕らはコントロールできなくなっちゃうような状況でした」
「温度レンジを下げてグリップするタイヤを作ろうと開発を進めているのですけど、まだちょっと上手く行っていないですね。Q2ではテストを兼ねて初めて使用する低温向けのウエットタイヤを投入したのですけど、温まりはするけどグリップ自体が低くて、どっち付かずの状況でしたね」
24号車リアライズコーポレーションADVAN Zとともに、予選で沈んでしまったGT500のヨコハマタイヤ勢。ドライコンディションが濃厚な決勝では、どこまで巻き返しを見せることができるだろうか。