観光名所として知られる京都・嵐山の渡月橋近くで、鵜(う)飼い用の小屋が未完成のまま長期間放置された挙げ句、行政代執行により解体された。鵜飼い見物船などを手掛ける「嵐山通船」(京都市右京区)が8月、この小屋建設を巡る支出で会社に損害を与えたとして、前社長の男性を会社法違反(特別背任)容疑で京都府警に告訴し、受理された。
告訴状や現社長の小島義伸氏によると、小屋の建設は、前社長が大学教授らと共同で設立した一般社団法人「嵐山鵜飼観光文化振興協会」が主導。嵐山に小屋を建てるには、国や府、市からさまざまな許可を得る必要がある。例えば、建設場所は「国指定史跡・名勝」となっているため、「現状変更」は文化庁長官の許可が必要となる。同協会はいずれの許可も取得し、2019年12月に着工した。
前社長は18年1月の同社の株主総会で、小屋の建設について、協会が費用負担すると説明していたが、実際には同社を発注者として、市内の造園業者と約7700万円の工事契約を締結。同社所有の土地を担保に借り入れた資金を支払いに充てていたとされる。
前社長は20年4月、赤字経営などの責任を理由に社長職を追われ、協会も21年6月に解散。工事はストップし、小屋は所有者が判然としないまま放置されたため、24年に行政代執行で解体された。
小島社長は「代々守ってきた会社の土地を勝手に担保に入れられ、裏切られた気持ちだ」と憤り、捜査当局による真相解明を訴えている。