いわゆる「年収103万円の壁」の引き上げについて、衆院選で躍進した国民民主党の玉木代表は、この壁を178万円まで引き上げるよう求めています。与党側は政権運営の協力を得るため受け入れる方向で調整を進めています。ただ実は、この間に「もう1つの壁」が存在していることで、「手取りアップ」にはつながらないという声も上がっています。
【写真を見る】「103万円」だけではない“年収の壁” 保険料発生→手取りが減る「106万円」「130万円」の壁 石破内閣の不支持率57%も「辞任する必要ない」71%【news23】
石破内閣の不支持57%も「辞任する必要ない」7割超3連休半ばの11月3日、文化勲章の親授式に出席した石破総理。「あしたのジョー」で知られる漫画家・ちばてつやさん(85)ら7人と並んで笑顔を見せていました。
その石破内閣の支持率などについて、JNNの最新の世論調査が出ました。内閣支持率は▼支持:38.9%(10月調査からマイナス12.7ポイント)、▼不支持:57.3%(10月調査からプラス13.8ポイント)でした。
一方、与党が15年ぶりに過半数を割り込んだ衆議院選挙の結果を受け、石破総理が辞任すべきかどうか聞いたところ、▼「辞任すべき」が21%、▼「辞任する必要はない」が71%と続投を容認する声が多く聞かれました。
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その石破政権の行方を左右しそうなのが、“年収103万円の壁”の問題です。
国民民主党 玉木雄一郎代表(10月26日)
「103万円の壁の問題。これを今回絶対やりたいと思っている」
年収103万円を超えると所得税がかかる“103万円の壁”がパート従業員らの“働き控え”を招いているとして、国民民主党は「178万円に引き上げる」と訴えています。
“103万円の壁”についてアルバイトをしている学生は…
20代大学生(カフェ・スポーツジム)
「バイトの店長とかは『いっぱい入ってほしい』と思っているけど、自分たちは103万があるから『すみません、ちょっと働けないんですよね』と、仕方なく少なくしてもらってるって感じです」
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10代大学生(カフェ)
「103万円の壁を引き上げて、お金に関係なく稼いでその分自分の未来の投資できたりとか、いろいろいい方向に回っていくのでは」
そして、多くの学生が「親にお願いされている」と言います。
10代大学生(居酒屋)
「給与明細はファイリングして親に提出したりしています。『103万円だけは超えないでね』って話はしています」
というのも、103万円を超えると扶養控除の対象から外れることに。例えば、父親の年収が500万円で母親が専業主婦、子どもが学生のケース。その子どもがアルバイトなどで年収が103万円を超えた場合、扶養控除が受けられなくなり、約9万円分の減税がなくなることになるのです。
JNNの世論調査では、この“年収の壁”を引き上げることに▼「賛成」と答えた人は66%、▼「反対」は20%でした。
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期待が高まる“103万円の壁”の引き上げ。ただ、専門家は「178万円に引き上げるだけでは根本的な解決にならない」と指摘します。
みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフ日本経済エコノミスト 酒井才介氏
「106万円、あるいは130万円といった壁が社会保障制度の中にもある」
実は、103万円のほかに、従業員51人以上の企業で年収106万円以上、50人以下の企業で130万円以上になると、年金などの社会保険料の負担が発生する106万円、130万円の壁も存在します。
みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフ日本経済エコノミスト 酒井才介氏
「130万円の壁を超えて働く人に関しては、(保険料の負担が発生することで)大体、年間15万円以上手取りが減ってしまう。就業調整(働き控え)につながりやすい」
年収が106万円、130万円に達すると、社会保険料の負担によって「手取りが減る」可能性があるというのです。
政権幹部は…
政権幹部
「国民民主党の要求は、ある程度、受け入れざるを得ないけど、“社会保険料の壁”の見直しまではやらないだろう」
一方、石破総理は周囲に対し、改革に意欲を見せているといいます。
石破総理(周辺に対し)
「人手不足の中、働きたくても働き控えをしている人たちには労働市場に出てもらえるようにする」
与党と国民民主党は、今週中にも具体的な検討を始める見通しです。
“103万円の壁”引き上げへ事前検証を “手取りアップ”実現は?小川彩佳キャスター:
宮田さんは“103万円の壁”の引き上げの議論をどうみていますか?
データサイエンティスト 宮田裕章さん:
いろいろな要因が複合しているので、これだけで改善するとは必ずしも言えないですが、“103万円の壁”というものが、女性の働く機会を封じ込める一つの要因になってるという指摘もあります。
こういった問題に対してどう向き合っていくのか。その一歩を踏み出すということ自体は大事だと思います。
小川キャスター:
“103万円の壁”の引き上げだけでは根本的な解決にはならず、“様々な壁”が生じていることはどう捉えますか?
宮田さん:
今回の政策は額がかなり大きいんです。これを一つの仮説だけでやるには少しリスクが大きいので、下調査というものもした方がいいと思います。
つまり、該当する年収の人たちが「条件が変わったら“働き控え”をやめるかどうか」を社会保険料のことも含めてしっかり提示した上で、状況がどう変化するのか調査も必要です。
また、政策を実現して終わりという時代ではないので、実施して結果が出るまで数年ということではなく、その結果、早急にどう状況が変化したのかを確認するということです。
これからは、ただ単に提案しただけではなく、成果のある政策を実現できたかどうか。それで政党が競っていく時代になるのかなと思います。
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<プロフィール>
宮田裕章さん
データサイエンティスト 慶応大学医学部教授
科学を駆使して社会変革に挑む