東京五輪、パリ五輪のボクシング・スーパーヘビー級金メダリストであるバホディル・ジャロロフ選手。彼の半生を物語にした日本・ウズベキスタン合作映画『草原の英雄ジャロロフ 東京への道』が公開を迎える。プロモーションのために来日したジャロロフ選手が、ウズベキスタンという国で金メダリストになることや、プロボクサーとしての今後の目標などを語った。
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五輪連覇のボクサーの過酷な半生!
ウズベキスタンの貧しい農村で育ったジャロロフは、金メダル最右翼と言われてリオ五輪に挑んだ。ライトフライ級、フライ級、ライトウェルター級で3つの金メダルを獲得するなどウズベキスタンのボクシング界はその実力を世界に轟かせたものの、ジャロロフ自身は、まさかの準々決勝敗退。代表の座を追いやられてしまう。
それでも父親の教えを胸に再起を図り代表に返り咲き。東京五輪で悲願の金メダルを目指すものの、対戦国からまさかの妨害工作が行われ、ウズベキスタンチームは惨敗。そのなかでリオとは逆にジャロロフだけが金メダルを獲るという結果となった。こうした一連の出来事を映画化したのが映画『草原の英雄ジャロロフ 東京への道』だ。
メガホンをとったアククロム・イサコフ監督は映画製作の経緯について「リオでウズベキスタンのボクシングは世界で一番強いということが証明された。当然東京五輪でも同じことが繰り返されると期待していたのですが、実際は不正などがあり、期待する結果が出なかった。劇中でも、ウズベキスタンのスポーツ相が『ウズベキスタンのすべての試合を見たのですが、今までこれほどの不正を見たことがない』というセリフがあります。それもきっかけになって、この映画を作ろうと思ったんです」と語る。
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ジャロロフ自身は「東京五輪はいろいろな失敗がありました。不運なことも重なり、メダル候補の選手も結果を残すことができなかったのですが、私自身は金メダルを獲得することができました」と語ると「でもウズベキスタンのボクシングの強さというのは、すでに世界に知れ渡っていると思います」と自国の強さを強調する。
金メダルを獲ると賞金、高級車、マンションのプレゼントも!
映画ではさまざまな困難が描かれているが、結果を残したことですべてが報われたというジャロロフ。金メダリストの待遇は世界各国でさまざまだが、ウズベキスタンではどんな未来が待っているのだろうか――。
「大きく人生が変わります。ウズベキスタンでは、五輪に出るまではただのスポーツ選手でしたが、金メダルを獲得すると、有名なスポーツ選手、英雄と呼ばれるようになります。金メダルを獲得すると栄誉はもちろんですが、高級自動車をプレゼントされます。また首都であるタシケント中心街にマンションをプレゼントされます。また金メダル獲得者には、20万ドルという報酬ももらえます。地方出身者にはその地域に一軒家をプレゼントしてもらえる人もいます」。
金メダルを獲ると知名度を含め、大きく環境が変わるという。だからこそ「ウズベキスタンではいまとてもスポーツが注目されているんです」とジャロロフは語る。
井上尚弥とムロジョン・アフマダリエフの対戦を望む!
ジャロロフは、東京五輪で金メダルを獲得し、確固たる地位や名誉を得たが、さらにパリ五輪では連覇を達成する。そのモチベーションについて「パンデミックの影響で東京五輪が1年延期になりました。もしそのまま2020年に行われていたら、パリへの挑戦はなかったかもしれません」と語ると「パリまで期間が3年になったことで、もう一度五輪でメダルを目指そうと思ったんです」と述べる。またウズベキスタン大統領から「連覇を」というエールが送られたことも「やろうと思った理由の一つです」と語っていた。
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東京五輪が行われた2021年は、まだコロナ禍で無観客試合が行われるなど、通常とは違う五輪だった。そんななか来日したジャロロフだったが「日本の方は、とても相手を敬い尊敬し、親切です。私はいろいろな国に行きますが、世界中でこれほど親切な人々を見たことがない。街中がきれいなことも日本の美しい特徴です」と称賛する。
プロボクサーとしても活躍しているジャロロフ。今後について「アマチュアで成功したことをプロでも繰り返したい」と語ると「いままで4つのボクシングベルトを持っているのですが、その獲得数をもっと増やしていきたい。井上尚弥選手のように、世界チャンピオンになることは今後の目標です」と抱負を述べる。
現スーパーバンタム級統一王者である井上尚弥。ジャロロフは「井上選手は素晴らしいチャンピオン」と賛辞を送ると「ウズベキスタンにも、ムロジョン・アフマダリエフというスーパーバンタム級の選手がいます。ぜひ井上選手と戦って欲しいです」と思いを語っていた。
(まいどなニュース特約・磯部 正和)
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