こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。
我が子のため、より良い教育環境を求め家族で海外に移り住む「教育移住」という選択が近年注目されています。
お話を聞いたねこ田さんは、マレーシアペナン島に2023年12月から渡り、現在9歳5歳の兄弟を育てながら、自身のInstagram(@necolife_penang)で移住の経緯やマレーシアでの生活のようすを漫画で紹介しています。
複数に渡ってお話を聞いてきましたが、5回目となる本記事では、移住から1年たって感じることや、2年という期限付きでの移住の先に見据える未来について聞きました。
◆改めて渡航1年で気付いた「やっておけばよかったこと」
移住に限らず、知らないことのほとんどは、どんなに時間をかけて調べたところで、やってみないと分からないことがあります。ねこ田家は半年で準備をし渡航しましたが、約1年のマレーシア生活を振り返り、「これやっとけばよかった」と感じることはあるのでしょうか。
「兄弟ともに、日本にいる時からもう少しそれぞれのペースで英語学習をやっておけばよかったなと思います。9歳の上の子は、英会話は多少やってから渡航しました。でもそれと並行し、手軽なオンライン英会話など毎日できる学習を取り入れられると良いと感じました。週1などだとどうしても間が開いてしまうので、定着しづらく思います。点学習よりも線学習。毎日継続できる学習でもっと英語を定着させられたら良かったと思います。
5歳の下の子は一切学習せずに渡航しました。こちらも問題なく現地生活は始められたものの、英語というもの自体に慣れる時間は、日本で作ってあげても良かったかもしれません」
◆「スポーツをやればいい」というわけでもない
ちなみに以前とある媒体で、教育移住前にやったほうがいいことの1つに、「世界共通のスポーツ」を挙げている記事を読んだことがあります。
理由は、そのスポーツをきっかけに、現地のコミュニティに所属でき、交友関係が一気に広がるからだそう。これをねこ田さんに聞いてみると「確かに友達がそこからできるケースはありますが、所属するだけではダメだと思う」と言います。
「サッカーチームはペナンにもたくさんあり、そこから友達ができるケースも見聞きします。ただその場に行ったら友達がすぐできるかは、子どもによるかなと思います。
もちろん、そこで親御さんが頑張って他の方達に繋がりにいくことで、交友関係が広がったりはします。ただ、お子さんきっかけでは社交的な子でないとないかも。そもそも、スポーツの最中はそんなに会話もしませんから、英語習得にプラスかという部分も、微妙なところだと思います、ただ子どもたちが現地の生活を楽しむきっかけにはなると思います。スポーツチームに所属し、なおかつ親同士で積極的にコミュニケーションを取ることでコミュニティに入っていく、というスタイルです。
また、こちらのプレイデート(遊ぶ約束)は子どもを1人で出歩かせない習慣があるため基本親同士のやり取りとなります」
筆者はなんとなく、趣味は1つは持っておくと人間関係作りのきっかけに良い。という話を鵜呑みにしていましたが、それは国や土地によって違うようです。
◆海外移住の先はどうしていくのか?
ねこ田さんの旦那さんは、現在デジタルノマドビザ(フリーランサーやリモートワーカーに向けた長期滞在ビザ)を取得し、リモート勤務で日本の企業に務めています。このビザは最長2年というルールのため、ねこ田家もこの移住生活は2年で帰国というゴールを決めています。
現在移住から約1年たち、半分ほどが経過したわけですが、移住の先の計画については、ご自身やお子さんはどう考えているのでしょう。
「今のところは、2年で一旦帰国することを決めています。その後また渡航するかは、その時になってから考えます。夫は渡航前はいろいろ夢を抱いていたみたいですが、根っこは日本が好きな人なので『また行こう』といった発想にはならないかもしれません。
母子で行くにしても、夫が子ども大好きだから難しいかも。私個人としてはいろいろな場所へ行きたいですが、こればかりは家族の同意がなかったら実現は難しいですね。帰ってきて『また行きたい』となったら、そこから手段を考えていきます。
私自身は8歳から3年間アメリカに渡航し、その後日本で暮らしています。当時の知識や経験、そこでの価値観はずっと残っています。2年であれば英語をマスターしきるのは難しくても、経験や価値観が残っているのであれば、それはそれでOKだと思っています」
◆子どもが「帰国したくない」と言い出したら?
では、子ども自身が帰国時にやっぱりマレーシアに居たいと主張した場合は、どうするのでしょう。
「子どもがマレーシアに居たいと言った場合も、ひとまず帰国はするつもりです。『日本を見てからもう一度考えましょう』って、そこは向き合って話し合いますね。帰国して日本の生活を見てからでないと、比較する対象がないから良いも悪いもわからないと思うのです。もしかしたら、今の環境を変えたくないだけで言っていることもありますし。
本人たちが中高生くらいになり、自分で考えて答えを出せるような年齢になったときに、『やっぱり日本は合わない』ってなったら、その時もう一度考えて、選択すると思います」
◆これから渡航を考える親へのアドバイス
これまで、マレーシア教育移住のさまざまな話を、複数にわたって教えてもらいました。最後にこれから教育移住を考える人へ、アドバイスを聞きました。
「まず言いたいのは、『親の英語力は気にしなくても大丈夫』ということです。できるに越したことはないですが必須ではありません。これは以前もお話しましたがエージェントなどに外注したりなどすれば何とかなりますし、マレーシアは日本からの移住者も多く、コミュニティが完成されています。
渡航をいつかの夢にせず、期日を決めて、興味があれば来たら良いと思います。お子さんの世界は確実に変わりますし、親の世界も変わります。
また『子どもが親に付き合ってくれる時期』は限られています。そうした時期の体験として、海外教育移住は最高だということもお伝えしておきます。ぜひ一度情報を集め概算してみてください。ものの数時間で金額が出せますのでお金を握りしめてきてください(笑)」
◆教育移住は今後も増えていきそう
5回に渡ってお送りした海外教育移住のリアル。いかがだったでしょうか。
筆者は「意外とハードルは高くないんだな」という感想と、とはいえ握りしめるお金を貯めるところから始めないといけないなと、夢の解像度が高まったように思います。
日本の教育制度や国際的な立ち位置を考え、海外に目を向ける人は増えています。その正解が海外への教育移住かは家庭によりますが、留学を含め、多様な選択肢の中から、海を渡ることを考える家庭は、今後も増えていくのではないでしょうか。
そうなってくると、海外経験で身につく力として言われる語学力の価値も、また変わっていくのかなと思います。親として、この時代の流れの中で子どもにできることは何か。改めて考えてみたいと思ったのでした。
【ねこ田】
2023年末よりマレーシアはペナン島に教育移住中。9歳5歳の子どもたちは現在現地のインターナショナルスクールに通っています。教育移住のあれこれをInstagram(@necolife_penang)にて配信中。
<取材・文/おおしまりえ>
【おおしまりえ】
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518