「手作業と紙だらけ」 なぜ「経費精算」が全社DXのトップバッターだったのか?

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2024年11月14日 09:21  ITmedia ビジネスオンライン

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とにかく手作業と紙が多かったです!

 「とにかく手作業と紙が多かったです」──岡山県に本店を構える建設コンサルのエイト日本技術開発の藤田亮一氏は、DXに着手する前の自社の活動全体をそのように振り返る。


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 2021年から第5次中期経営計画(2021〜2024年)に基づき、DXプロジェクトを推進。デジタル化と、それにより変革した仕事の流れを実現するための新システムを作っていこうと立ち上がった。


 2024年6月にはさまざまなシステムを通じたデータの一元化と可視化により、迅速な経営判断ができるような形を作り上げた。


 もちろん、ここまでの道のりは決して平たんではなかった。システム全体の設計増を設計しつつ、まずは「経費精算」を含む間接費業務におけるDXに取り組んだという。なぜ、全社DXの先頭バッターとして、経費精算に白羽の矢がたったのか。


 バックオフィス部門向けの年次イベント「SAP Concur Fusion Exchange 2024 Virtual」に登壇した、エイト日本技術開発の藤田亮一氏の講演を紹介する。


●全社DXの先頭バッター なぜ「経費精算」から取り組んだのか?


 藤田氏は、経費精算を全社DXの先頭バッターにした理由について「経費精算は現場からバックオフィスまで多くの人と部署が関与する複雑なプロセスです。それをグローバルな知見に基づいた最良な方法で整流化することで、DXの成果を早期に関係者に見せることができる。それは全社DXを加速させるために有益なことだと考えました」と説明する。


 2021年、藤田氏はDX推進室の室長に就任後、まず現状の課題の把握に取り組んだ。バックオフィスの従業員一人一人と会話したり、匿名の意見箱を設置し多方面から意見を吸い上げたりした。


 その結果、「旧態依然とした現金の取り扱い」「システムと紙の二重運用による業務負荷」「業務の属人化」「オンプレシステムゆえの働く場所の制限」といった課題が見えてきた。


 「当社は技術の集団で、ボードメンバーも技術出身が多いです。裏方の仕事を分かる人が少ない状態でした。バックオフィスメンバーから話を聞けたことで、どんなことに困っているのかなどが分かったのは非常によかったです」


 システム選定にあたっては、数十社のベンダーと依頼書や提案書のやり取りを重ねた。重視した点として、藤田氏は以下の項目を挙げた。


 「SaaSとは“気付きのサブスク”です。どんどん気付かせてくれないと価値がない。極端な話、パートナーやベンダーが一体となってサービスを提供してくれればWebアプリがすばらしくなくてもいい。逆にWebアプリがどれだけすばらしくても売ったっきりの状態ですと、自分たちが使えるようにならないので価値が得られません」


 また、費用の観点も重要だが、それゆえに先述のシステム選定の軸を犠牲にすることは避けるようにしたという。


 さまざまなある経費精算システムの中で、SAP Concurを選定した理由については「連携の良さや成長スピード、サービスの方向性」などに加え、「経費精算のない世界」というビジョンに共感した点や、同サービスを1年前から導入している同業他社へのユーザー訪問ができたこと、導入後の活用支援の充実などを挙げた。


 当時を振り返り、藤田氏は導入フェーズでの重要なこととして「導入パートナーの選定と自分たちの覚悟」と話す。「『仕事を変えてアプリに合わせる」ということを強く発信してきました。もちろん変えた仕事と変えなかった仕事がありますが、その変化を自分たちで受けいれる覚悟を持つことは大事です。また、その点を理解し、価値を提供してくれる導入パートナーを選ぶことも重要です」


 自分たちだけでなんとかするのではなく、ベンダーやパートナー、コミュニティの意見を真摯(しんし)に受け止め、自らを変えていけるように、組織・体制面での工夫も施したという。


 使い慣れてきたシステムから離れ、Webアプリを「これが標準です」と導入したため、一定の反発はあった。いったん導入は完了し業務は回るようになったものの、課題は山積みだという。


 藤田氏は「今後は標準レポートの活用によって、言われた仕事を回すバックオフィスから会社に提案できるバックオフィスに変わっていく必要があります」と、今後の取り組みへの意欲を示した。


 最後に、SAP Concurの提案する「経費精算のない世界」に到達するために、藤田氏は「顧客の要望通りにレポートを作るのではなく、これを見れば会社が変わるので作りましょう! と提案がほしい。その他、他サービスとの連携機能の充実や、AI活用によるヒューマンエラーの削減、目視チェック削減などの実現も期待しています」と締めくくった。



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