お客様の心を掴み、継続して応援していただく。これがホステスの基本的なお仕事です。人間関係は第一印象が左右するもの。第一印象さえ良ければ、その後の関係づくりもスムーズです。
しかし、ほんのささいなことで相手に良くない印象を与え、損をしている方を多く見かけます。
そこで今回は、銀座ホステスの会話術について解説したいと思います。最後に、お金持ちとの会話から学んだ「初対面の人から好かれるコツ」についてもご紹介します。
○相手の話題を奪ってはいけない
皆さんがよほどの有名人でない限り、初対面の相手が皆さんに興味関心を持つことはありません。ご自身のお話をするよりも、聞き役に徹し、相手に気持ちよくおしゃべりをさせましょう。
気持ちよくおしゃべりをさせ、「あの子といると楽しいな」という印象を与えることができたらこっちのもんです。
とはいえ、初対面の相手との会話はなかなか弾まないものです。そんなときは11個のキーワード「木戸に立ちかけし衣食住」が役立つよ、というのがこの業界でのセオリーです。
「木戸に立ちかけし衣食住」とは、キ=気候、ド=道楽(趣味)、ニ=ニュース、タ=旅(旅行)、チ=知人、カ=家族、ケ=健康、シ=仕事、衣=ファッション、食=グルメ、住=住まい、この11個のキーワードを指します。
気候の話は1番ハードルが低く、話題にもあげやすい鉄板ネタです。ただ、無難な分、ユニークさには欠けるかな、と思います。銀座にいらっしゃるお客様だと、1日に何べんもお天気の話を聞かされているかもしれません。
私の場合ですが、お客様の出身地をまずお伺いすることが多いです。例えば、相手の出身地が長崎県だったら「茶碗蒸しがどんぶりサイズって聞きました。本当ですか?」と、話題を膨らませることができますよね。日頃から都道府県のご当地あるあるなどを仕入れておくと、初対面の相手との会話に困りません。
一番よくないのは、相手の話題を奪ってしまうこと。皆さんのまわりにもいませんか?「私も九州出身ぽいってよく言われるんですけど、そんな風に見えますか?」「私は長崎って行ったことないです……飛行機に乗るのが苦手で旅行とかあまりしないんですよね」と、主語を“私”にすり替えてしまう残念な方が。
もう一度申し上げますが、皆さんがよほどの有名人でない限り、初対面の相手が皆さんに興味関心を持つことはありません。ご自身に関するお話は、相手から聞かれるまでしてはいけません。
○質問攻めにしてはいけない
初対面の相手との会話の突破口が見つからないからと、相手を質問攻めにする方もいらっしゃいますが、これもあまり良い手ではありません。質問攻めにされた相手は、記者会見でもさせられているかのような居心地の悪さを感じていることでしょう。
私の大好きなバラエティ番組の1つ「愛のハイエナ」で、俳優・山本裕典さんがホストになったらいくら稼げるのかを検証する企画がありました。こちらの企画で山本さんの指南役を務めるカリスマホスト「軍神」こと、心湊一希さんによるアドバイスが素晴らしかったので引用させていただきます。
来店客を質問攻めにしてしまう山本さんに対し、軍神は「質問せずに決めつけて褒めなさい」と、アドバイスしました。
例えば「ホストクラブにはよく来るの?」ではなく、「ホストクラブに行ったらめっちゃみんなにガッツかれそうだよね」と、決めつけた上で相手を褒める方が効果的である、ということです。これには目からうろこでした。
「趣味はなんですか?」と、聞かれるより「すごくガッシリされていますね!週末はジムでトレーニングって感じ」とヨイショされる方が、おじさまは喜びます。このテクニックはぜひ皆さんにも活用していただきたいです。ただし、ルックスに関する言及はハラスメントととらえられかねないので注意が必要です。
○否定に対して否定で返してはいけない
まだ人間関係が構築されておらず、お互いに対して警戒心のある間は、相手の話を無条件に肯定するようにしましょう。「いや」「でも」「しかし」を伝えるのは、関係がしっかり構築されてから。
否定的な言葉は、関係を構築していく上で大きな障害になります。例えば「ブルゴーニュのワインは酸っぱくて美味しくない」という言葉に対して、あなたが「いや、それはモノによるでしょ!あなたは何もわかっていない」と返したとします。馬鹿にされたと感じた相手は、あなたを嫌な奴と認定し、仲良くしないリストに入れてしまうことでしょう。何の得にもなりません。
「ブルゴーニュのワインは酸っぱくて美味しくない」と相手が言うなら「そうですね」と答えておけば良いのです。
加えて、「否定に対して否定で返さない」こと。これも初対面の相手との関係を構築する上では大切なポイントです。例えば「ボルドーのワインは濃厚な風味と複雑な渋みがあって美味しい」とあなたが言ったとして、それに対して「いや、ボルドーのワインは美味しくない」と相手が答えたとします。これに対して「いや、そんなことはない!」と、わざわざ否定を否定する必要はありません。
繰り返しになりますが、「いや」「でも」「しかし」を伝えるのは、関係がしっかり構築されてから。それまでは猫をかぶっておくのが正解です。
○お金持ちに学ぶ正しい「自己開示」
さて、いよいよ会話のターンがあなたに回ってきました。そんなときにやってはいけないことが1つあります。ネガティブな自己開示です。
ネガティブな自己開示とは家庭に関する複雑な事情、病気、容姿に関するコンプレックス、金銭的な問題などを、頼まれてもいないのにオープンにすることです。そんなことを聞かされても困りますし、「聞いたからには私に配慮してよね?」という圧を感じてしまいます。そんな図々しい人間と誰が良好な関係を築きたいと思うのでしょうか。
一方、お金持ちの自己開示は実にポジティブです。こちらが「わー!お金持ちー!」と、ヨイショしたことに対しても、いちいち謙遜したりしません。「そうそう!お金が余って余って困っているんだよね!ワッハッハー」くらいの明るい言葉が返ってきます。
褒められた際に謙遜しすぎる人がいますが、これはかなりの悪手です。社交辞令、お世辞に対していちいち謙遜する必要なんてありません。「ありがとう。よく言われます」くらいの方がかえって嫌味がなくて良いもんですよ。
○初デートの際にも役立つテクニック
今回は「銀座ホステスの会話術」と、お金持ちとの会話から学んだ「初対面の人から好かれるコツ」について解説しました。
まずは聞き役に徹し、イエスマンを演じましょう。相手が心を開き、皆さんのファンになったときはいよいよこっちのもんです。骨抜きにしてやってください。それまでは猫をかぶっておきましょう。これはビジネスではもちろんのこと、初デートの相手に対しても活用できるテクニックです。
そして自己開示は常にポジティブに。どうしてもネガティブなお話をしたい方は、キャバ嬢か占い師にでも聞いてもらってください。
みずえちゃん みずえちゃん 1989年生まれ。新潟県長岡市出身。関西外国語大学卒業後、大阪市内の広告代理店に勤務しながら、大阪北新地でキャバ嬢デビュー。現在は銀座のクラブに勤めるかたわら、フリーランスのライターとして活動している。 この著者の記事一覧はこちら(みずえちゃん)