第71回マカオグランプリのメインレース、FIAフォーミュラ・リージョナル・ワールドカップには日本からTOM’SとTGM Grand Prixの2チームがそれぞれ日本人ドライバーを起用して戦った。
ただ、もうひとり日本人ドライバーがこのレースには参戦していた。彼の名前は“りー海夏澄(かなと)”。フランスのARTグランプリから今大会のFRワールドカップに参戦した。
現在17歳の海夏澄は日本生まれ。12歳からヨーロッパに活動の拠点を移し、レーシングカートに参戦。2022年に四輪デビューを飾ると、2023年はイギリスF4で2勝しシリーズ7位、今季はフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)でシリーズ18位という成績を残している。
「母が日本人で、父がベトナム人です。12歳でヨーロッパに行くまでは日本に住んでいました。メインの言語は日本語なのですが、ヨーロッパにずっといると日本語を使う機会がなくなるので、だんだんとずっと英語の方が話しやすくはなったりもします(笑)」と海夏澄は話した。
ヨーロッパに活動、そして生活の拠点を移したのは「F1を目指して」と語った海夏澄。4輪デビュー後は今回のマカオも含め、居住地のあるイギリスのライセンスでのレース参戦が続いている。
「ヨーロッパでレーシングカートをやっていた際は日本のライセンスで走っていましたが、コロナ禍になってJAF(日本自動車連盟)との国際四輪ライセンスのやり取りが難しくなり、そこから住んでいるイギリスのライセンスに切り替えて、今回のレースも参戦しました」
ただ、そんな海夏澄は落ち着いた口調ながら、今後に向けた熱い想いを口にした。
「僕の小さい頃からの目標は、日本人初のF1ワールドチャンピオンになることです。今もそれを目指して頑張っています。おそらく、(運転免許取得年齢の)18歳になったら日本のライセンスに戻れるかなと思います。やはり日本人なので、日本のライセンスで勝ちたいと思っています」
なお、同じくマカオグランプリのFRワールドカップに参戦した佐藤凛太郎(TGM Grand Prix)とは幼い頃に同じチームで日本のレーシングカートを戦った関係だ。今回のマカオでは久々の再会を果たしている。
そんな海夏澄はFRECAのレギュラー参戦者であり、さらに今回はARTグランプリという恵まれた環境での参戦だった。ただ、予選Q1は17番手。そしてドライコンディションの予選Q2ではマシンを止めてしまい27番手に終わってしまう。
続く予選レースを19番手で終えて迎えた決勝。セーフティカースタートからグリーンに変わった2周目、チームメイトのジェームズ・ウォートン(ARTグランプリ)がターン3(リスボア・ベンド)でクラッシュ。それを避けきれず海夏澄もクラッシュとなり、そこでレースを終えることになった。
「初めてのストリートサーキットだったので、いい経験ができたと思います。ただ正直、決勝の事実上のオープニングラップでクラッシュしたことは悔しいです。もし来年もチャンスがあったら、今回の経験を活かして、優勝を目指します」と、海夏澄。
なお、来季も継続してFRECAへの参戦を予定しているとのことで、引き続きヨーロッパでの活躍に期待したいところだ。また、名前の表記(英表記:Kanato Le)について本人に確認したところ、『Le』はひらがな表記の『りー』がいいとのことだったため、今後オートスポーツwebでは『りー海夏澄』と表記する。