田中圭、映画『私にふさわしいホテル』“野心”がにじむ“昭和の男”を体現　堤幸彦監督も絶賛

　今年、映画とドラマ合わせて7本の作品に出演し、引っ張りだこの俳優・田中圭。そのうちの1本、柚木麻子氏の小説を、俳優・アーティストののん主演で映画化した『私にふさわしいホテル』（12月27日公開）より、堤幸彦監督の求める“昭和の男”を体現した田中の場面写真が解禁となった。

【画像】田中圭演じる遠藤のそのほかの場面写真

　新人賞を受賞したにもかかわらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島佳代子（演：のん）。その原因は、大御所作家・東十条宗典（演：滝藤賢一）の酷評だった。文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る加代子は、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄（演：田中）の力を借り、己の実力と奇想天外な作戦で、権威としがらみだらけの文学界をのし上がっていく――。

　本作で田中が演じる遠藤は、加代子と大御所作家・東十条の両方の担当編集者。裏で策略を練り、時には味方、時には敵にもなる、一筋縄ではいかないキャラクターで、憎らしいところもあるが、頼りたくなるようなキャラクターでもある。その憎たらしさと信頼感を持ち合わす役柄は、これまで多くの異なる役を演じてきた田中だからこそ演じることができたと、監督を務めた堤幸彦は太鼓判を押す。

　テレビ朝日系ドラマ『おっさんずラブ』（2016年、18年、19年、24年）では、女性にはモテないが人懐っこく、みんなに愛される子犬系男子・春田創一役で社会現象を巻き起こすほど人気となった。映画『記憶にございません！』（19年／三谷幸喜監督）ではどこか抜けたところのある職務熱心な警官。映画『Gメン』（23年／瑠東東一郎監督）ではお茶目なリーゼントヘアーのヤンキー役をコミカルに演じ、笑いを誘う演技もうまい。

　そんなコミカルな役柄にとどまらず、映画『そして、バトンは渡された』（21年／前田哲監督）での心優しい義理の父親役、映画『女子高生に殺されたい』（22年／城定秀夫監督）での女子高生に殺されたいという願望を持つ高校教師役、映画『あの人が消えた』（24年／水野格監督）では主人公の頼りになる先輩配達員役と、真面目な役やシリアスな役まで幅広く演じてきた。

　本作の遠藤は常にクールでひょうひょうとしている一方、カラオケで熱唱したり、時折見せる笑顔など人間味が垣間見えるキャラクター。彼の内に秘めた編集者としての野心がその表情からにじみ出る場面もあり、田中の多面的な演技が光っている。

　堤監督は田中について「付き合いも長く、ドラマも映画も一緒にやりましたが、昔からとにかくうまい方という印象です。遠藤には、『売れてなんぼ』という信念もあり、ヒットの力学と個人の究極の芸術である文学との狭間で生きている人。多分彼も大学の時は小説を書いていたけれども、早々に筆を折って編集者になったのかもしれない。その歪みみたいなものが、田中さん演じる遠藤の目線から見えるんです」と語っている。

　解禁となったシーン写真を見ても、オフィスで電話をする場面や山の上ホテルにいる遠藤の姿が、どこか昭和の雰囲気を漂わせ、役に一層の深みを与えている。