のん主演で柚木麻子原作の小説を映画化する『私にふさわしいホテル』。のん演じる主人公の新人作家・加代子の担当編集者を演じるのが、今年「わたしの宝物」をはじめ映画とドラマで計7本の作品に出演する田中圭である。彼の本作での見どころや、その魅力に迫った。
本作で田中が演じるのは、新人賞を受賞したにもかかわらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)と大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の担当編集者の遠藤道雄。
遠藤は裏で策略を練り、ときには加代子の味方、ときには敵にもなる、ひと筋縄ではいかないキャラクターで、憎たらしいところもあるが、思わず頼りたくなるような人物。その憎たらしさと信頼感を持ち合わせる役柄は、これまで多くの役を演じてきた田中だからこそできると言っても過言ではない。
テレビ朝日系ドラマ「おっさんずラブ」(2016〜2024)では人懐っこく、みんなに愛される春田創一役で社会現象を巻き起こすほど人気となった田中。
また、映画『記憶にございません!』(2019/三谷幸喜監督)ではどこか抜けたところのある職務熱心な警官、『Gメン』(2023/瑠東東一郎監督)ではお茶目なリーゼントヘアのヤンキー役をコミカルに演じ、笑いを誘う演技も印象的である。
だが、田中の魅力はコミカルな役柄にとどまらず、『そして、バトンは渡された』(2021/前田哲監督)では愛情深く心優しい義理の父親役、『女子高生に殺されたい』(2022/城定秀夫監督)では女子高生に殺されたいという願望を持つ高校教師役、『あの人が消えた』(2024/水野格監督)では配達員で主人公の頼りになる先輩役など、シリアスな役まで幅広い役柄をこれまでに演じてきた。
本作での遠藤役も、田中の多面的な演技が光る役柄だ。遠藤は常にクールで飄々としている一方、カラオケで熱唱したり、時折見せる笑顔など人間味が垣間見えるキャラクターを演じている。彼の内に秘めた編集者としての野心が、田中の表情などから滲み出るところが見どころとなっている。
堤幸彦監督は田中について「付き合いも長く、ドラマも映画も一緒にやりましたが、昔からとにかくうまい方という印象です。遠藤には、『売れてなんぼ』という信念もあり、ヒットの力学と個人の究極の芸術である文学との狭間で生きている人。多分彼も大学の時は小説を書いていたけれども、早々に筆を折って編集者になったのかもしれない。その歪みみたいなものが、田中さん演じる遠藤の目線から見えるんです」と太鼓判を押す。
この度、遠藤を中心とした場面写真が解禁。オフィスで電話をする場面や山の上ホテルにいる遠藤の姿が、どこか昭和の雰囲気を漂わせ、役に一層の深みを与えている。
本作で田中が演じる遠藤は、これまでの作品で培われたものの集大成ともいえるだろう。
『私にふさわしいホテル』は12月27日(金)より全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)