Text by 廣田一馬
ドラマ&映画『【推しの子】』のドラマシリーズが11月28日(木)からPrime Videoにて世界独占配信、映画が12月20日(金)から全国で公開される。
同作は赤坂アカと横槍メンゴによる漫画「【推しの子】」の実写化作品。主人公のアクア役を櫻井海音、アイ役を齋藤飛鳥、ルビー役を齊藤なぎさ、かな役を原菜乃華、あかね役を茅島みずき、MEMちょ役をあの、アイの担当医・雨宮吾郎役を成田凌が演じる。
今回は、双子であるアクアとルビーを演じる櫻井海音と齊藤なぎさにインタビュー。二人が原作に対して感じている魅力や役づくり、二人にとっての「嘘」の存在などについて話を聞いた。
─【推しの子】の実写作品への出演が決まったときの気持ちを教えてください。
櫻井海音(以下、櫻井):オファーをいただく前から原作を読ませていただいていて大好きな作品でした。もし実写化することがあったら演じたいと思っていたので驚きと嬉しさがありましたが、同時に【推しの子】という作品を背負うことへのプレッシャーもありました。ただ、それ以上にこのチャンスをほかの人に渡したくないという気持ちが強かったです。
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2001年4月13日生まれ。東京都出身。NHK連続テレビ小説『エール』(2020年)や『逃げるは恥だが役に立つ』(2021年)、『VIVANT』(2023年)などに出演。映画『嘘喰い』で映画初出演。インナージャーニーのドラマーとして2023年まで活動。
齊藤なぎさ(以下、齊藤):私も【推しの子】はすごく好きな作品で、いつかルビーちゃんを演じてみたいけど夢のまた夢かなと思っていたので、お話しをいただいてすごくびっくりしました。私もプレッシャーはありましたが、この役をやりたいという気持ちが一番大きかったです。
齊藤なぎさ(さいとう なぎさ)
2003年7月6日生まれ。神奈川県出身。ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(2022年)や映画『恋を知らない僕たちは』、映画『あたしの!』(2024年) などに出演。アイドルグループ「=LOVE」のメンバーとして2023年まで活動。
─原作にはどんな魅力を感じていますか?
櫻井:ここまで芸能界について繊細に、丁寧に、残酷なくらいリアルに切り込んでいる作品はないと思っていて。実際に芸能の仕事をしている人たちが見てもリアリティーが感じられると思います。
そこにキャラクターの心情表現が加わることで、芸能界で働く人たちの本当の気持ちや葛藤みたいなものを代弁しているような説得力が生まれていますよね。さらにアイドルという存在が持つ魅力、個性的なキャラクターの魅力、ミステリーやサスペンスの要素も入ったストーリーが絡まりあって、いろんな人から愛される作品になっているのではないかと思います。
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─お二人は双子役を演じられます。お互いの第一印象と、実際に会ってみて感じたことを教えてください。
齊藤:櫻井さんはクールそうでとっつきにくいかなと思っていましたが、意外とそんなことなくて面白いし、変……変です。なんか変です。
櫻井:3回目も言わなくていいよ(笑)。
齊藤:人が喜ばないところで喜ぶし、「おじさんっぽい」とかいじるとと喜ぶんです。「嬉しいんでしょ」って聞くと「嬉しい」って答えてくれます(笑)。
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齊藤:めっちゃいじられキャラだよね。B小町のメンバー(原 菜乃華、あの)にいじられても対応できるし、大人の方ともちゃんとお話できていて、いろんな世代の人とちゃんと使い分けて話すことができる人だなと思いました。
櫻井:いじらせてあげてたんだよ。
櫻井:最初に会ったのは本読みのときで2人だけだったのですが、お互いにほぼ私語もなく、笑顔もなく、若干の緊張感で第一印象はあんまり覚えてないです。
でも現場が進むにつれて、齊藤さんは居るだけで現場を照らしてくれる天性の明るさで、まさにルビーのような存在だったのでありがたかったですし、いろいろいじってくれるので楽しかったですね。
─どのようなきっかけで打ち解けたのでしょうか?
齊藤:私が緊張してるのもあったと思うんですが、最初のほうからすごく話しかけてくださって。とくに覚えてるのが、「変だよね」って言われたことです。
「なんか変ですよね」って言われて、「なぎメロディ」っていう変なあだ名つけてきたんですよ。
櫻井:「なぎメロ」ね
齊藤:なぎメロって呼んできて、そのころから仲良くなったと思います。
櫻井:なぎメロは高校時代の先輩のあだ名なんです。
齊藤:意味わかんないですよね、2代目なぎメロ(笑)。
櫻井:でも、ここまで底抜けに明るい人ってこの業界であんまり見たことがないんです。裏表がない。
齊藤:確かに、裏表ないの(笑)。
櫻井:自分で言っちゃ駄目なんだよ(笑)。だから、最初に変だなと思ったんですが、撮影が進んでそういう裏表のない子なんだとわかりました。
─撮影に入るまでには、どんな準備をされましたか?
櫻井:原作を徹底的に読みこんで、原作を見ずとも原作のイメージを表現できるよう、自分のなかに役を落とし込みました。
あと、役づくりとかじゃないんですが、撮影に入ってから機材トラブルなど不吉なことが立て続けに起こっていて、それを聞いて怖くなって1人で京都の車折神社にお祓いを受けに行ってきました。
齊藤:言ってよ!
櫻井:言っても行かないでしょ(笑)。
齊藤:行くよ!
齊藤:私も原作を読み込んだことに加えて、アイドルの映像をたくさん見ました。(=LOVEの)卒業から1年ぐらい経っていたので、アイドルの気持ちを思い出そう、もう1度アイドルになろうと思って、アイドルの映像や自分がアイドルだったときの映像をずっと見ていました。
─アイドルとしての活動経験があって、アイドル役を演じるのはなかなかないことですよね。
齊藤:自分がアイドルだった経験を強みとして活かせると思っていたので、アイドル役をやるのは夢だったんです。いつかやりたかったのですが、こんなに早くできるなんてと思いました。
─齊藤さんのアイドルとしての活動はもちろん、お二人とも恋愛リアリティーショーに出演されているなど、登場人物との共通点も多いかと思います。役づくりに生かされた部分や、共感したキャラクターを教えてください。
齊藤:アイドルをやっていた経験はダンスや歌っているときの表情だったり、ステージに立つことだったりにすごく活かされてます。
あと、MVのリップシーン(顔をアップで映し、歌詞に合わせて口を動かすシーン)ってめっちゃ難しいんです。曲に合わせて表情や身振り手振りを可愛くするのはすごく難しくて、私もアイドル初期の頃はめちゃくちゃ苦戦したんですよ。
でも、アイドルとして活動するなかで何回も何回もやってきたので、今回はリップシーンがすごく楽しかったです。リップシーンを楽しいと感じられるようになるには何回もやらないといけないと思うので、これまでたくさん経験できたこともありがたいなと思いました。
齊藤:共感したキャラクターはルビーちゃんとあかねちゃんです。ルビーちゃんは、アイドルが好きでアイドルになったという経歴が私とまったく一緒で、言葉の一つ一つで「私もこういうステージに立ちたかったな」とか「こういう気持ちでアイドルになったな」とか共感する部分が多いです。
あかねちゃんは誹謗中傷で追い込まれる様子が原作で描かれていますが、私も誹謗中傷でずっと悩んでいるので、共感するところは多いですね。
櫻井:アクアは原作を読んでいる段階から自分と通じる部分がありました。
キャリアの面で、アクアが本格的に仕事を始めたのは恋愛リアリティーショーで、そこから芝居があってという流れが自分と似ています。特にやっぱり恋愛リアリティーショーのところは自分が出ていたときのことをすごく思い出しました。それぐらいリアルに「わかる!」が詰め込まれていて、自分の経験も演技に活かせたと思います。
─【推しの子】では、「嘘」に関する描写が多く登場します。お二人にとって「嘘」はどのような役割をもつ存在ですか?
櫻井:俳優という仕事自体が「嘘」を「本当」に見せる仕事なので、つねに嘘と向き合っています。嘘の事象をどうやったらよりリアルに、本当にこの世に存在したかのように見せるかをつねに考えていますし、それがエンタメだと思います。僕は「嘘」に対して悪いイメージはまったくなくて、人を楽しませたりすることには絶対つきまとうものだと思います。
齊藤:私自身が本当に嘘をつけない人間なので、人生でこれといって嘘をついたことがないです。顔に全部出るので。嘘をつくとしても人狼ゲームとかか、人を傷つけないための嘘しかつかないなと思いますね。俳優のお仕事として嘘に向き合うことはありますが、プライベートでは嘘をつかないです。
─最後に、ドラマ&映画『【推しの子】』をこれから見る方へのメッセージをお願いします。
櫻井:原作のファンの方も違和感なく見ていただける内容になっていると思いますし、まだ見たことないよっていう方も楽しめる作品になっていると思います。
本当に原作に忠実にやっていて、内容はもちろん、ライブシーンなどものすごく力を入れてワンシーンワンシーン丁寧に、大切にやってきたので、そういうところも観ていただけたらと思います。
齊藤:原作にすごく忠実に、たくさんの個性豊かなキャストの人たちが全身全霊で演じているので、世界観にどっぷり浸かってハマっていただけたらいいなと思いますし、見終わったあとに、みんなで「ここ、こうだったよね」とか考察みたいに楽しんでもらえたらいいなと思います。